令和5年・売春の周旋で執行猶予、日本人の恋人がいても不許可|刑事処分の有無を問わない退去強制事由(D類型不許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
風俗営業に関わる事件では、刑の重さだけを見ると入管手続の見通しを誤ります。令和5年分の事例集(出入国在留管理庁公表)のうち、D類型(その他)の不許可第3事例を取り上げます。本人は在留資格「技術・人文知識・国際業務」で、在日期間は約9年5月。違反態様は売春周旋、発覚の端緒は警察逮捕です。刑事処分は、売春防止法違反、風営法違反により懲役1年、執行猶予3年、罰金30万円の判決でした(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。在留希望の理由は、日本人の恋人がいる日本で生活したいです。被退去強制歴の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は、改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の3(エ):自ら売春を行い、又は他人に売春を行わせる等、社会秩序を著しく乱す行為や人権を著しく侵害する行為。周旋はこの要素に正面から当たります。
- 消極要素・第2の6:入管法24条は、売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接に関係がある業務に従事する者を、刑に処せられたことを要件とせずに退去強制事由と定めています(具体的にどの号に当たるかは、事案ごとに条文に当たって確認する必要があります)。
- 刑は全部執行猶予であるため、入管法24条4号リには当たらないと読めます。出頭申告(第2の9)にも当たりません。恋人がいることは第2の2の家族関係に当たりません。
区別すべき点があります。第2の3(エ)が消極要素とするのは、他人の人権を著しく侵害する側の行為です。人身取引の被害者として保護された立場にある方は、まったく異なる評価を受け、被害者性が認められる場合には人道上の配慮が正面から働きます。売春に関わる事案という外形だけで一括りにはできません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例では、第2の3(エ)という重い消極要素がある一方、天秤の他方に置ける積極要素がほとんど見当たりません。同じ令和5年のD類型許可第6事例は、大麻取締法違反で執行猶予判決を受けた永住者でしたが、家庭内で暴力を受けていた事情が考慮され許可されています。刑の軽重ではなく、他人の人権を侵害する側か、本人が被害を受けた側かという位置づけの違いが結論を分けたと読めます。
弁護士のコメント
2点を申し上げます。
第1に、この類型では不起訴処分の獲得だけでは足りない場面があります。上記の売春関係の退去強制事由は刑に処せられたことを要件とせず、業務に従事した事実そのものが退去強制事由となる構造です。刑事段階では不起訴を目標としつつ、入管手続では従事の事実の有無や関与の態様を正面から争う必要があります。
第2に、関与の態様の切り分けです。店舗の運営に主体的に関わっていたのか、雇用された立場で指示に従っていたのか、自らも不利益な立場に置かれていたのか。この違いが第2の3(エ)の当てはめの重さを左右します。被害を受けた事情がある場合は、公的機関や支援団体への相談記録が重要な資料です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋であり、その年の許可の全部ではありません。近い類型の許可例がないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。傾向は出発点であって結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在などを総合的に主張し、不起訴処分を獲得しました。指示を受けて動いていた立場にある方の事案では、関与の態様をどう立証するかが結論を左右します。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
この類型では、刑の重さよりも関与の態様と立場の違いを示すが要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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