令和5年・親子関係不存在審判の確定で出生に遡って日本国籍を失った子に在留特別許可|定住者1年が認められた事例(D類型許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
自分の意思とは関わりのないところで日本国籍を失った場合の見通しを示す事例です。令和5年分の事例集(出入国在留管理庁公表)のうち、D類型(その他)の許可第1事例です。本人は日本で生まれ、在日期間は約2年、違反期間は約1年10月。違反態様は不法残留です。親子関係不存在審判の確定により、出生に遡って日本国籍を喪失したものとされています。在留希望の理由は、日本で生まれ、外国人であった母親も帰化しているため、このまま日本で生活したいというものでした。端緒は関係機関からの通報で、刑事処分はありません。結果として定住者(1年)が認められました。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は、改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・第2の2(1):母が帰化して日本国籍を有するのであれば、本人は日本人の実子としてこの要素に当たり得ます。
- 積極要素:家族とともに生活する子の利益の保護の必要性。明示されたのは令和6年3月改定(参議院附帯決議14項)です。
- 積極要素・その他:日本で出生し、生活の基盤が日本にしかないこと。国籍喪失の経緯に本人の帰責性がない点も実質的に評価されたと読めます。
- 消極要素・第2の5:不法在留期間、約1年10月。
- 消極要素・第2の6:不法残留(入管法24条4号ロ)。
- 出頭申告(第2の9)には当たりません(端緒は関係機関からの通報)。第2の3の素行不良に当たる事情の記載もありません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例で天秤を傾けたのは、日本国籍を失った経緯が審判の確定という本人の行為とは無関係な事情であったこと、そして日本で生まれた本人に日本以外の生活基盤がないことであったと読めます。同じ令和5年のD類型不許可第1事例は、在日約3年9月・違反約1年9月と数字は近いものの、偽造在留カードの行使という素行の問題があり不許可でした。不法な状態が生じた原因に本人の関与があるかどうかが分かれ目と読めます。
弁護士のコメント
2点を挙げます。
第1に、端緒が出頭申告でなくても許可されている点です。第2の9の出頭申告は有力な積極要素ですが、それがなければ許可されないというものではありません。本事例では国籍喪失の経緯と本人の帰責性のなさが正面から評価されたと読めます。
第2に、用意すべき資料です。審判の裁判書と確定に関する資料、戸籍の記載の変動、母の帰化に関する資料、出生から現在までの居住と養育の状況を示す資料が中心です。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しませんから、提出は早い段階が望ましいところです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集に載る事例は各年20件前後にとどまります。似た事情の許可例が見つからないとしても、それは許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。傾向は出発点であって結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
国籍や身分関係の変動が原因で在留資格を失った場合、経緯に本人の関与がないことを資料で示せるかが要点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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