令和5年・虚偽の出生証明書で子に在留資格認定証明書を取得させ不許可|永住者で在日16年9月でも許可されなかった事例(C類型不許可事例)
2026/08/06
事例の概要
令和5年分の事例集(出入国在留管理庁公表)のうち、C類型(子と共に不法に滞在している外国人の場合)で不許可となった事例です。本人(父)は在留資格「永住者」で、在日期間は約16年9月。違反態様は虚偽文書行使で、子2人に不正に在留資格の認定証明書の交付を受けさせる目的で、子に係る内容虚偽の出生証明書を提出したと記載されています。子2人はいずれも不法入国で、24歳(在日約6年8月)と19歳(在日約3年1月)です。本人及び子に退去強制歴があります。発覚の端緒は職員探知で、刑事処分は記載からは判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は、改正入管法施行(令和6年6月10日)前・改定前ガイドラインの下での判断です。
- 消極要素・第2の3(ウ):公的書類の不正受交付・行使。内容虚偽の出生証明書の提出が当たります。
- 消極要素・第2の3(イ):他の外国人の在留資格の偽装に関わる行為。子2人の資格取得のためでした。
- 消極要素・第2の6:子2人については不法入国(入管法24条1号)。
- 消極要素:本人及び子の退去強制歴。
- 出頭申告(第2の9)には当たりません(端緒は職員探知)。
- 積極要素として在日約16年9月の生活基盤は考慮され得ます。子はいずれも成年で、第2の2(3)の当てはめはできません。
本人は永住者であり違反期間の欄は該当なしとされ、第2の5は問題になりません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例では、在日16年9月という生活の長さや家族が日本にいることが、公的書類の内容を偽って子に在留資格を取得させた点と退去強制歴を上回るとは評価されなかったと読めます。同じ令和5年のC類型許可事例は、父と11歳の子がともに不法残留でしたが、出頭申告であり、永住者である内妻との間に実子3人があり、書類の偽りもなく、許可されています。家族の存在よりも、手続の誠実さと発覚の端緒が結論を分けたと読めます。
弁護士のコメント
2点を申し上げます。
第1に、虚偽文書の類型では、書類の内容が虚偽であることの認識、すなわち故意の有無が本来の争点になり得ます。入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失を要件としない運用が踏襲されてきましたが、その当否は責任主義の射程に関わる問題であり、松村大介弁護士が現に訴訟で問うている論点です。認識の内容を早い段階から記録に残す意味は大きいと読めます。
第2に、違反審査の段階からの対応です。手続は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、異議申出と進み、注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しません。誰がどの資料を用意し、本人がどこまで確認できたのかを示す資料が評価を左右します。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋にすぎません。同じ組合せの許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っています。傾向は出発点であって結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べへの対応を徹底し、不当な取調べには抗議を重ねることで、全件について不起訴処分を獲得しました。捜査段階での供述の残り方が、その後の入管手続まで影響することを踏まえた対応です。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
書類に関わる違反が疑われた段階から、認識の内容と作成経緯を丁寧に記録が要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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