令和5年・電磁的公正証書原本不実記録で執行猶予、退去強制歴ありで不許可|永住者夫婦・未成年の子2人でも許可されなかった事例(B類型不許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
夫婦がともに永住者で、未成年のお子さんが2人いる事案です。出入国在留管理庁が令和6年11月公表の令和5年分事例集のB類型(配偶者が正規在留外国人)不許可第1事例です。
違反態様は虚偽文書行使幇助、発覚の端緒は警察逮捕。本人と配偶者はいずれも在留資格「永住者」でした。在日約7年5月、婚姻期間約8年6月、夫婦間に未成年の子が2人います。刑事処分は、電磁的公正証書原本不実記録・同供用により懲役1年6月、執行猶予3年の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。加えて退去強制歴があります。
この判断は令和5年改正入管法の施行前、かつ現行ガイドラインの改定前のものです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(2)(積極):配偶者は別表第二の「永住者」ですので、この積極要素に乗ります。未成年の子2人という点も、家族関係の厚みを示します。
- 子の利益(積極):家族とともに本邦で生活するという子の利益の保護の必要性。
- 第2の3(消極):他の外国人の在留資格の偽装に関わる行為や公的書類の不正に関わる行為は、素行不良として重く評価されます。虚偽文書の行使を幇助したという違反態様は、この評価に関わります。
- 退去強制歴(消極):過去に退去強制を受けた経緯は、素行と退去強制理由の評価の双方で重く働きます。
- 第2の9:警察逮捕による発覚のため、自ら出頭したことによる積極要素はありません。
結論を分けた一線はどこか
積極要素の側は厚い事例でした。それでも許可に至らなかったのは、退去強制歴と、公的な記録の正確性を害する行為への関与という2つの消極要素が重なったためと読めます。ガイドライン注4は、特に考慮する積極要素があることが当然に許可を意味するものではないとしています。
同じB類型の許可第5事例は、薬物法令違反で執行猶予、未成年の子3人という組合せで、前科や在留特別許可歴の記載がなく、許可されました。両者を比べると、過去に退去強制を受けた経緯があるかどうかが、天秤を大きく動かしていると読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑が執行猶予であっても手続が進んでいる点です。入管法24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、全部執行猶予の場合を除きますので、本件の判決はこの号には当たりません。また、別表第一の在留資格者を対象として入管法上の一定の罪による有罪判決を実刑・執行猶予を問わず退去強制事由とする規定もありますが、これは別表第一の在留資格者に限られており、永住者には及びません。事例集は適用された号を記載していないため、どの号によったかは記載からは判明しません。
第2に、そうであれば起訴前の段階が要になります。不起訴処分を得ていれば、有罪判決を前提とする評価そのものを避けられた余地があります。文書の内容が虚偽であることの認識や関与の程度は、刑事段階で徹底して争うべき事項であり、その検討結果が後の入管手続における主張の基礎になります。あわせて、退去強制歴がある方の事案では、当時の経緯と現在の生活の違いを具体的に示す準備が必要です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集の掲載は各年20件前後にとどまります。不許可の記載が続く類型でも、それは抜粋の中の傾向にすぎません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可を得た後もなお、違反認定処分そのものの取消しを争っています。傾向は出発点であって、結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。
特殊詐欺の受け子として複数回の再逮捕を受けた事案では、取調べへの対応を徹底し、不当な取調べへの抗議を重ねて、全件について不起訴処分を獲得しました。
観光目的で来日された方が在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案では、過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となるため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。接見の初動から公判の結審まで松村弁護士自身が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐して、依頼者ご本人のために動く立場から通訳します。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応できます。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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