令和5年・覚醒剤取締法違反で執行猶予、永住者から「定住者」へ在留特別許可|未成年の子3人・在日約28年11月の事例(B類型許可第5事例)
2026/08/06
事例の概要
永住者でも薬物事件で在留を失いかけますが、資格を変えて認められる例があります。出入国在留管理庁が令和6年11月公表の令和5年分事例集のB類型(配偶者が正規在留外国人)許可第5事例です。
違反態様は刑罰法令違反、端緒は警察逮捕。本人は「永住者」、配偶者は「永住者の配偶者等」でした。在日約28年11月、婚姻期間約11年11月、未成年の子が3人います。刑事処分は、覚醒剤取締法違反により懲役1年6月、執行猶予3年の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。「定住者(1年)」が許可されました。
この判断は令和5年改正入管法の施行前、かつ現行ガイドラインの改定前のものです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(2)(積極):別表第二の在留資格を有する者との家族関係。配偶者の「永住者の配偶者等」は別表第二に位置します。
- 子の利益(積極):未成年の子が3人おり、家族とともに本邦で生活するという子の利益の保護の必要性が正面から働きます。
- その他の事情(積極):在日約28年11月にわたる生活基盤と地域社会との関係。
- 第2の6(消極):退去強制理由となった事実の反社会性。薬物法令違反はこの評価が重く働く類型です。
- 第2の9:警察逮捕による発覚のため、自ら出頭したことによる積極要素はありません。
違反期間の欄は原文で斜線となっており、第2の5は問題となりません。
結論を分けた一線はどこか
許可内容が従前の「永住者」ではなく「定住者(1年)」であった点が示唆的です。在留は認めつつ、資格の安定性を一段引き下げる扱いと読めます。
同じB類型の不許可第4事例と比べると、分水嶺が見えます。そちらも覚醒剤取締法違反で懲役1年6月・執行猶予3年、未成年の子は5人、配偶者は定住者でした。子の人数は本件より多いのですが、ほかに前科1件があり、過去に在留特別許可を受けた経緯もあって、不許可となっています。分かれ目は子の人数ではなく、前科の有無と過去の在留特別許可歴であったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、薬物事件では執行猶予でも退去強制事由が生じます。入管法24条4号チは、麻薬・大麻・覚醒剤等の法令違反により有罪の判決を受けた者を対象とし、執行猶予の場合を除いていません。他方、同号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、全部執行猶予の場合を除きます。
第2に、だからこそ起訴前が勝負になります。不起訴処分を得ていれば、有罪判決を要件とする4号チの該当性そのものを生じさせずに済んだ余地があります。薬物事件では、所持や使用の認識、押収手続の適法性といった点を逮捕直後から検討する必要があり、依頼者本人のために動く通訳を確保しておくことが、供述の訳出をめぐる後日の争いを避けるうえでも重要です。なお現行法の下でも、執行猶予付きの薬物事件は入管法50条1項ただし書が定める類型には含まれないと解されるため、通常の判断枠組みで検討されることになります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表されるのは各年20件前後の抜粋です。薬物事件は消極要素が重い類型ですが、この事例のように、家族関係と長年の生活基盤によって在留が認められる場合があります。当事務所が担当した不法就労助長の事案も、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠を徹底的に分析し、被告人質問と反対尋問を尽くして無罪判決を得ました。裁判員裁判の対象となる事件や報道された重大事件にも多数対応しています。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性については、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、起訴前の段階で不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となるため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。接見の初動から公判の結審まで松村弁護士自身が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐して、依頼者ご本人のために動く立場から通訳します。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応できます。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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