令和5年・不法入国で不法在留約16年、婚姻約1年5月でも在留特別許可|定住者の配偶者と未成年の子1人・出頭申告の事例(B類型許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
16年もの不法在留と、1年5月という短い婚姻期間。一見すると不利な組合せですが、許可された例があります。出入国在留管理庁が令和6年11月に公表した令和5年分の事例集のB類型(配偶者が正規在留外国人の場合)許可第4事例です。
違反態様は不法入国、発覚の端緒は出頭申告。在日期間は約16年で、違反期間も同じく約16年です。配偶者との婚姻期間は約1年5月で、夫婦間に未成年の子が1人います。配偶者の在留資格は「定住者」でした。刑事処分はなく、「定住者(1年)」が許可されました。
この判断は令和5年改正入管法の施行前、かつ現行ガイドラインの改定前のものです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(2)(積極):別表第二の在留資格を有する者との家族関係。配偶者の「定住者」は別表第二に位置しますので、この積極要素に乗ります。
- 子の利益(積極):家族とともに本邦で生活するという子の利益の保護の必要性。夫婦間に未成年の子がいます。
- 第2の9(積極):不法滞在の事実を申告するため自ら出頭したこと。
- 第2の5(消極):約16年という不法在留期間の長期化。明示的に消極要素とされたのは令和6年改定であり、現在同じ事情で申請すれば、この点の評価は変わりえます。素行不良(第2の3)に当たる事情や刑事処分の記載はありません。
- 第2の6(消極):不法入国は入国そのものが違法であるため、不法残留よりも重く評価されやすい類型です。
結論を分けた一線はどこか
同じB類型の不許可第3事例と並べると、この事例の意味がはっきりします。そちらも不法入国・出頭申告で、在日約17年10月と本件に近く、婚姻期間は約1年10月で本件より長いのですが、夫婦間に子がなく、退去強制歴があり、不許可でした。
本件との違いは、未成年の子がいること、そして退去強制歴の記載がないことです。不法在留の長さと不法入国という消極要素は両事例で共通しますから、分かれ目はこの2点にあったと読めます。
なお、不法在留期間の長期化が明示的に消極要素と位置づけられたのは令和6年改定であり、従前は積極にも消極にもなり得るものとされていました。
弁護士のコメント
第1に、出頭申告という入り方の重みです。摘発や警察逮捕で発覚した場合、第2の9の積極要素を欠くうえ、身柄を拘束された状態で16年分の生活実態を立証する作業に入ることになり、資料収集に大きな制約が生じます。長期の不法在留がある方こそ、出頭の是非とその準備を先に検討する意味があります。
第2に、争う段階の問題です。在留特別許可の判断は手続の最後の局面にあり、注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しません。したがって、違反調査・違反審査の段階で、婚姻の実体、子の生活、地域社会とのつながりを示す資料を出し切っておく必要があります。長期在留の事案では、勤務先や近隣の方、学校関係者などの第三者による陳述が効く場面もあります。一般的な例示としてお読みください。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集の掲載は各年20件前後の抜粋であり、その年の判断のすべてではありません。長期の不法在留があるからといって、道が閉ざされているわけではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っています。掲載の傾向は出発点にすぎません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。
観光目的で来日された方が在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案では、公的書類が乏しい状況下で有利な証拠を集め、過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しました。
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結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
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