令和5年・売春従事で不許可|永住者・日本人配偶者と離婚協議中・職員探知で発覚した事例(A類型不許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
刑事事件になっていないのに在留を失う類型があります。出入国在留管理庁が令和6年11月に公表した令和5年分の事例集のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第2事例は、その一つです。
違反態様は売春従事、発覚の端緒は職員探知です。本人の在留資格は「永住者」で、在日期間は約13年。日本人配偶者との婚姻期間は約1年で、夫婦間に子はありません。刑事処分はありません。事例集には、配偶者と離婚協議中である旨が記載されています。違反期間の欄は原文で斜線となっています。
この判断は令和5年改正入管法の施行前、かつ現行ガイドラインの改定前のものです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の3(エ)(消極):自ら売春を行い、又は他人に売春を行わせる等、社会秩序を著しく乱す行為。「特に考慮する消極要素」に正面から当たります。
- 第2の2(1)(ウ):日本人との婚姻は本来積極要素ですが、同号は婚姻が安定かつ成熟していることを求めます。離婚協議中という記載は、この要素の中核が失われつつあることを示します。
- 第2の9:職員探知による発覚のため、自ら出頭したことによる積極要素はありません。
- その他の事情(積極):在日約13年の生活基盤は積極方向に働きますが、それだけでは足りませんでした。
- 第2の5:違反期間の記載がなく、不法在留期間の長期化は問題となりません。
結論を分けた一線はどこか
永住者として約13年の生活基盤があり、日本人配偶者もいるという出発点でしたが、家族関係という最大の積極要素が離婚協議によって崩れ、他方で「特に考慮する消極要素」が残りました。ガイドライン第3にいう、積極要素が消極要素を明らかに上回るという状態から遠ざかった構図と読めます。
同じA類型の許可第1事例や第2事例では、いずれも婚姻が現に機能していました。分かれ目は在留資格の種別や在日期間ではなく、家族関係が判断の時点で生きているかどうかであったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、刑事処分がなくても退去強制事由が生じる構造を押さえる必要があります。入管法24条は、売春に直接関係のある業務に従事する者を退去強制事由としており、有罪判決を要件としていません(具体的にどの号に当たるかは、事案ごとに条文に当たって確認する必要があります)。したがって、不起訴処分を得たとしても、この規定の該当性が当然に消えるわけではありません。刑事の結論だけを見て安心できない類型です。
第2に、その裏返しとして、違反調査・違反審査の段階で該当性そのものを争う余地があります。この規定のいう業務に従事する者に当たるかという事実関係と、その評価は、争点になり得ます。また、背景に強制や借金による束縛、人身取引の被害といった事情がある場合、それはこの規定の適用の在り方にも、ガイドラインの人道上の配慮の判断にも関わります。こうした事情は、本人が自ら語りにくいものですから、依頼者本人のために動く通訳を確保し、早い段階で丁寧に聴き取っておくことが重要です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集の掲載は各年20件前後にとどまり、その年の判断のすべてではありません。したがって、公表事例の並びから「この類型は無理だ」と結論づけるのは早計です。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っています。傾向は出発点であって、結論ではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。
特殊詐欺の出し子とされた20代の女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、起訴前の段階で不起訴処分を獲得しました。
観光目的で来日された方が在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案では、過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となるため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。接見の初動から公判の結審まで松村弁護士自身が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐して、依頼者ご本人のために動く立場から通訳します。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応できます。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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