令和5年・出頭申告し日本人配偶者がいても不許可|婚姻約1年8月・同居の実態が認められなかった事例(A類型不許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
婚姻届を出して自ら出頭したのに許可されない、ということが実際にあります。出入国在留管理庁が令和6年11月に公表した令和5年分の事例集のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第1事例は、その理由を考えるうえで欠かせない1件です。
違反態様は不法残留、発覚の端緒は出頭申告。在日期間は約4年4月、うち違反期間は約1年9月です。日本人配偶者との婚姻期間は約1年8月で、夫婦間に子はありません。刑事処分もありません。それにもかかわらず不許可となり、事例集には、婚姻・同居の実態が認められなかったと記載されています。
この判断は令和5年改正入管法の施行前、かつ現行ガイドラインの改定前のものです。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 第2の2(1)(ウ):日本人と法的に婚姻していることに加え、「相当期間共同生活をして相互に扶助し」「婚姻が安定かつ成熟している」ことを求めています。婚姻届の存在だけではこの要素を満たしません。本件では同居の実態が認められず、積極要素の中核が欠けたことになります。
- 第2の9(積極):自ら出頭したことは積極要素として働きます。ただし単独で結論を決める力はありません。
- 第2の5(消極):約1年9月の不法在留期間。
- 素行不良(第2の3)に当たる事情や刑事処分の記載はなく、消極要素はそれほど厚くありません。
結論を分けた一線はどこか
ガイドライン第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本件では消極要素が特に重いわけではないものの、積極要素の側が空洞化したため、上回るという判断に至らなかったと読めます。
同じA類型の許可第1事例と並べると分かりやすくなります。そちらは婚姻期間約11月、違反期間約2年3月で、婚姻期間は本件より短く違反期間は長いのですが、夫婦間に未成年の子がおり、許可されました。分かれ目は期間の数字ではなく、夫婦としての生活が現に営まれているかどうかであったと読めます。
弁護士のコメント
第1に、違反審査の段階で何を出すかです。「同居の実態が認められなかった」という記載は、入国警備官の違反調査や入国審査官の違反審査の過程で、同居を裏付ける資料が足りなかったことを示唆します。この段階では、住民票の履歴、賃貸借契約書、公共料金や家賃の支払記録、双方の収入と支出の流れ、日常のやり取りの記録、双方の親族による陳述書といった資料を、時系列に沿って組み立てて提出しておく必要があります。
第2に、手続の順序を意識することです。在留特別許可の判断は、違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、法務大臣への異議申出と進む手続の最後の局面にあります。ガイドライン注4は退去強制令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしているため、後から同居を始めても間に合わない場面があります。認定や判定に不服を留保せずに従うと、争点が事実上封じられてしまう点にも注意が必要です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
不許可事例を読むと気持ちが沈むかもしれませんが、掲載されているのは各年20件前後の抜粋です。似た事情で許可された例が載っていないからといって、可能性がないわけではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っています。理論構成と立証の工夫で傾向を超えられる場面はあります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。
観光目的で来日された方が日本人女性との間にお子さんを授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、一旦は不受理とされた婚姻と認知を憲法的な観点から当局と交渉して成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析した上で、1度の申請で在留特別許可を獲得しました。婚姻関係の実体をどう立証するかが要になる類型です。
多くの罪名では執行猶予でも結果として退去強制となるため、起訴前からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。接見の初動から公判の結審まで松村弁護士自身が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐して、依頼者ご本人のために動く立場から通訳します。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応できます。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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