令和6年前半・売春の周旋で執行猶予判決、在留特別許可歴があっても不許可|在日約25年10月でも許可されなかった事例(D類型不許可第3事例)
2026/08/06
事例の概要
執行猶予がつけば日本に残れる、という理解が当てはまらない類型です。出入国在留管理庁が公表した令和6年前半(令和6年1月1日から同年6月9日まで)の事例集のうち、D類型(その他)不許可第3事例です。違反態様は売春周旋、端緒は関係機関からの通報、在日期間は約25年10月、違反期間は約1年2月。刑事処分は売春防止法違反と入管法違反により懲役2年、執行猶予3年、罰金100万円の判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。事例集には在留特別許可歴があるとの記載もあり、前科の記載はありません。希望理由は「本邦に生活基盤がある」で、家族関係の記載はありません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
枠組みは令和6年3月改定のガイドラインです。
- 積極:約25年10月の在留による生活基盤。
- 消極・第2の3(エ):自ら売春を行い又は他人に売春を行わせる等、社会秩序を著しく乱す行為。周旋はこの列挙に当たります。
- 消極・第2の5:不法在留期間(約1年2月)の長期化。
- 消極・第2の6:退去強制理由となった事実の反社会性。
- 消極:過去に在留特別許可を受けながら再び違反に至った経緯。列挙にはありませんが、諸事情として不利に働くと読めます。
- 発覚は関係機関からの通報で、第2の9の出頭申告には当たりません。
本事例は改正入管法(令和6年6月10日施行)前の判断で、当時は申請手続がなく法務大臣の職権による措置でした。
結論を分けた一線はどこか
天秤は消極側に大きく傾いたと読めます。刑は全部執行猶予であり、入管法24条4号リ(1年を超える拘禁刑。全部執行猶予は除かれます)には当たりません。それでも入管法24条4号は、売春に直接に関係がある業務に従事する者を別に退去強制事由と定めており、素行の消極要素としても重く評価されます。約25年10月の在留と生活基盤は、これを上回るとは見られなかったと考えられます。同じD類型の許可第3事例は在日約29年8月で同じく生活基盤を理由としますが、素行面の消極要素がなく許可されています。
弁護士のコメント
刑の軽重よりも罪名と行為の性質が結論を左右します。仮に起訴前に不起訴処分を得ていれば、有罪を前提とする評価は生じませんでした。もっとも、売春に関係する業務への従事それ自体が退去強制事由とされるため、不起訴だけで結論が変わったとは言えません。関与の有無や程度に争いがある事案では、刑事段階で徹底して争うことが後の手続の前提になります。
在留特別許可歴がある場合は、前回述べた事情と今回の説明が食い違わないよう整理する必要があります。違反審査の段階から、生活基盤の内容と再度の違反に至った経緯を具体的に示すべきです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例に不許可が並ぶ類型でも、許可の可能性が否定されるわけではありません。事例集は各年20件前後の抜粋にすぎません。当事務所が扱った不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が続く類型でしたが在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分そのものの取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、取調べへの徹底した対応と不当な取調べへの抗議により全件不起訴処分を得ました。在留資格を失い不法滞在で起訴された相談者の事案では、当局との交渉により婚姻・認知を成立させ、過去の許可事例の分析を通じて1回の申請で在留特別許可を獲得しています。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップでご対応できます。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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