令和6年前半・覚醒剤取締法違反で1年4月の実刑、在日約22年1月でも在留特別許可されず|子の監護養育を挙げても不許可となった事例(D類型不許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
長く日本で暮らし、子どもの世話もしている。それでも許可に至らない場合があります。出入国在留管理庁が公表した令和6年前半(令和6年1月1日から同年6月9日まで)の事例集のうち、D類型(その他)不許可第1事例です。違反態様は薬物法令違反、端緒は警察逮捕、在日期間は約22年1月、違反期間は約3年9月。刑事処分は覚醒剤取締法違反により懲役1年4月の実刑判決で、ほかに前科1件があります(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。在留希望の理由は「本邦に生活基盤がある」「子の監護・養育」でした。子の国籍や年齢は事例集からは判明しません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
枠組みは令和6年3月改定のガイドラインです。
- 積極:約22年1月の在留による生活基盤、子の監護養育(子が日本人等の実子なら第2の2(1)(イ)に当たり得ますが、子の国籍の記載はありません)、子の利益。
- 消極・第2の6:退去強制理由となった事実の反社会性。薬物法令違反は重く評価されます。
- 消極・第2の5:不法在留期間の長期化(約3年9月)。
- 消極:前科1件。第2の9の出頭申告に当たる事情もありません。
現行法では、1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者は入管法50条1項ただし書の対象で、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠ける特別の事情がある場合に限り許可されます。本事例は改正法施行前の判断で、当時は申請手続がなく職権による措置でした。
結論を分けた一線はどこか
消極要素が明らかに勝ったと読めます。覚醒剤取締法違反による1年4月の実刑と前科1件は、約22年の在留や子の監護養育をもってしても釣り合わなかったと考えられます。同じD類型の許可第1事例は、同じく「子の監護・養育」を理由としながら、自ら出頭して刑事処分もなく、定住者(1年)の許可を得ています。子の存在それ自体ではなく、それと釣り合う消極要素の重さが結論を分けていると読めます。
弁護士のコメント
薬物事件では、入管法24条4号チが薬物関係法令違反による有罪を退去強制事由としており、全部執行猶予でも該当します。1年を超える実刑であれば4号リにも当たります。「執行猶予なら日本に残れる」という理解は、この類型では当てはまりません。
他方、起訴前に不起訴処分を得ていれば、有罪を前提とする4号チの該当性そのものを生じさせずに済んだ余地があります。所持や使用の認識、採尿手続の適法性、共犯者供述の信用性など、争える点は少なくありません。もっとも事例集からは証拠関係は分かりませんし、不起訴であれば許可されたと言えるものでもありません。逮捕直後72時間の対応と通訳の確保が、入管手続の前提を作ります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
不許可事例が並ぶと、同じ事情では望みがないように見えます。もっとも事例集は各年20件前後の抜粋で、許可された事案の多くは公表されていません。当事務所は、公表事例では不許可が続く不法就労助長の類型で在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者の事案では、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得しました。特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、取調べへの徹底した対応と不当な取調べへの抗議により全件不起訴処分を得ています。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップでご対応できます。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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