令和6年前半・配偶者が「定住者」で在留特別許可|婚姻約6月・子なし・不法残留約4年10月の事例(B類型許可第1事例)
2026/08/06
事例の概要
配偶者が日本人ではなく外国人の場合、見通しはどう変わるのか。手がかりになるのが、出入国在留管理庁が令和7年7月に公表した令和6年1月1日から6月9日までの事例集B類型(配偶者が正規在留外国人)許可第1事例です。
違反態様は不法残留、端緒は出頭申告です。在日期間は約5年4月、違反期間は約4年10月です。配偶者は「定住者」で、婚姻期間は約6月、夫婦間に子はありません。刑事処分はありません。結論は許可、「定住者」(1年)が認められました。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
本事例は令和5年改正入管法の施行(令和6年6月10日)前、在留特別許可が職権による恩恵的措置であった時期の判断です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。
- 第2の2(2):配偶者の「定住者」は入管法別表第二の在留資格です。同号は永住者・特別永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者との家族関係を「特に考慮する積極要素」としており、本事例は正面から当たります。
- 第2の9:自ら出頭したことも積極要素です。
- 第2の5・第2の6:約4年10月の不法在留は明示的な消極要素ですが、態様は不法残留です。婚姻期間は約6月で子もなく、婚姻の安定性を示す事情は厚くありません。
結論を分けた一線はどこか
天秤を傾けたのは、配偶者が別表第二の「定住者」であることと、自ら出頭したことだと読めます。婚姻期間の短さと約4年10月の不法在留という弱みを、この2つが上回ったと読めます。
同じB類型の不許可第1事例と対比すると、配偶者の在留資格の重みが見えます。そちらは出頭申告で刑事処分もなく、婚姻期間は約1年、未成年の子も1人いましたが、配偶者は別表第一の「技術・人文知識・国際業務」で、結論は不許可でした。家族関係の内容が本事例より厚いのに結論が逆であることから、配偶者の在留資格が別表第二か別表第一かという区別が判断に影響していると読めます。
弁護士のコメント
初動と立証の設計が中心になります。
第1に、配偶者の在留資格の確認です。第2の2(2)が「特に考慮する積極要素」とするのは別表第二の在留資格者との家族関係であり、配偶者が就労系の在留資格(別表第一)の場合はこの積極要素に直接当たりません。配偶者自身の在留資格の変更や永住許可の見通しを含め、家族全体の在留の安定性をどう示すかを検討します。
第2に、違反審査の段階からの主張です。退去強制手続は違反調査、違反審査、口頭審理、異議申出と進み、在留特別許可は最後の判断です。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しないため、婚姻期間が短い事案では、届出前からの同居や交際の経過を早い段階で示しておくことが要点です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋にすぎません。配偶者の在留資格や婚姻期間が自分と同じ許可例が見当たらないとしても、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型ながら在留特別許可を獲得し、なお違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主な注力分野としています。
不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性の事案では、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得し、あわせて「退去強制事由には故意・過失が不要」とする従来の実務の当否を問う訴訟を係争中です。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続後の在留資格の更新・変更は提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
配偶者の在留資格がどの表に属するかは、初回のご相談の段階で確認しておきたい点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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