令和6年前半・出頭申告しても在留特別許可されず|不法入国約17年3月・婚姻約2年6月・退去強制歴ありの事例(A類型不許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
自ら入管に出頭すれば認められるのではないか。出頭申告は有利な事情の一つにすぎないことを示すのが、出入国在留管理庁が令和7年7月に公表した令和6年1月1日から6月9日までの事例集のA類型(配偶者が日本人)不許可第4事例です。
違反態様は不法入国、端緒は出頭申告です。在日期間は約17年3月、違反期間も約17年3月で、全期間が不法在留でした。婚姻期間は約2年6月、夫婦間に子はありません。刑事処分はありません。事例集の特記事項欄には「退去強制歴あり」と記載されています。結論は不許可です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
本事例は令和5年改正入管法の施行(令和6年6月10日)前、在留特別許可が職権による恩恵的措置であった時期の判断です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。
- 第2の9:自ら出頭して不法滞在を申告したことは積極要素です。
- 第2の2(1)(ウ):日本人と法的に婚姻し約2年6月にわたり生活していることも積極要素ですが、夫婦間に子はありません。
- 第2の5:不法在留期間の長期化は令和6年改定で明示的な消極要素とされ、約17年3月は極めて長期です。
- 第2の6:不法入国は入国自体が違法で不法残留より重く評価される傾向があり、退去強制を受けた後に再び不法な形で入国した経緯も強い消極要素です。
結論を分けた一線はどこか
天秤を戻せなかったのは、退去強制歴と約17年3月という不法在留期間の長さだと読めます。出頭申告と婚姻という積極要素は、この2つを「明らかに上回る」には至らなかったと読めます。
同じA類型の許可第2事例も不法入国・出頭申告で子もいません。婚姻期間は約1年9月と本事例より短いものの、在日・違反期間は約12年2月で、退去強制歴の記載もありませんでした。婚姻期間の長短ではなく、過去に退去強制を受けた経緯と不法在留期間の差が結論を分けたと読めます。
弁護士のコメント
刑事処分がないため、初動の設計と違反審査段階での主張が中心になります。
第1に、出頭申告の位置づけです。これは積極要素ですが、一つ得たからといって他の消極要素が消えるものではありません。過去に退去強制を受けた経歴がある場合は、その経緯とその後に築いた生活の内容を示す準備を、出頭の前に整えておくことが望まれます。
第2に、長期在留の両面性です。第2の5は不法在留期間の長期化を消極要素としつつ、その期間に日本人や地域社会との関係を構築している場合は別途積極要素として考慮する留保を置いています。勤務先や近隣との関係、支援者の存在、公的負担の納付状況を資料で示すことが要点で、注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しないため、発付前に出し切っておく必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋にすぎません。近い事情の事例が不許可として掲載されていても、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型ながら在留特別許可を獲得し、なお違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主な注力分野としています。
観光目的で来日した相談者が在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案では、当局から一旦不受理とされた婚姻・認知を憲法的観点からの交渉により成立させ、過去の許可事例の分析を踏まえて1度の手続で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続後の在留資格の更新・変更は提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
出頭申告は有利な事情ですが、それだけに頼らず、生活の実体を示す準備を整えてから臨むことが大切です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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