令和6年前半・不法入国から約12年2月でも在留特別許可|子がなく婚姻約1年9月の日本人配偶者との事例(A類型許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
夫婦の間に子がいないと在留特別許可は難しいのではないか。出入国在留管理庁が令和7年7月に公表した令和6年1月1日から同年6月9日までの事例集のA類型(配偶者が日本人)許可第2事例は、子がない夫婦でも許可された例です。
違反態様は不法入国で、端緒は出頭申告です。在日期間は約12年2月、違反期間も約12年2月で、全期間が不法在留でした。日本人配偶者との婚姻期間は約1年9月、夫婦間に子はありません。刑事処分はありません。結論は許可で、「日本人の配偶者等」(在留期間1年)が認められました。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
積極要素と消極要素が正面からぶつかる事例です。本事例は令和5年改正入管法の施行(令和6年6月10日)前、在留特別許可が職権による恩恵的措置とされた時期の判断です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。
- 第2の2(1)(ウ):日本人と法的に婚姻していることは積極要素です。ただし同号は婚姻が安定かつ成熟していることを求めており、子がない本事例では共同生活の継続と相互扶助の実体で安定性を示すほかありません。
- 第2の9:自ら出頭して申告したことも積極要素です。
- 第2の5・第2の6:約12年2月の不法在留は令和6年改定で明示された重い消極要素であり、不法入国は入国自体が違法で不法残留より重く評価される傾向があります。
結論を分けた一線はどこか
天秤を傾けたのは、出頭申告と約1年9月にわたる婚姻の実体だと読めます。ガイドライン第3は積極要素が消極要素を「明らかに上回る」場合に許可の方向で検討する。約12年2月の不法在留と不法入国という重い消極要素を、この2つが上回ったと読めます。
同じA類型の不許可第4事例も不法入国・出頭申告で、婚姻期間は約2年6月と本事例より長いのに不許可でした。違いは在日期間・違反期間が約17年3月と長いことと、退去強制歴があることです。婚姻期間の長短より、過去に退去強制を受けた経緯の有無が重く働いたと読めます。
弁護士のコメント
刑事処分がなく、初動と立証の設計が結論を左右します。
第1に、子がないことは決定的な不利ではありません。ガイドライン第2の2(1)(ウ)は子の存在を婚姻の安定・成熟を示す一例として挙げるにとどまります。子がない場合は、同居の期間と実体、家計の一体性、相互扶助の内容を資料と陳述で積み上げる必要があります。
第2に、違反審査の段階からの活動です。退去強制手続は違反調査、違反審査、口頭審理、異議申出と進み、在留特別許可は最後の判断です。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しないため、婚姻の実体を示す資料は違反審査の段階から出しておくべきです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表事例は各年20件前後の抜粋であり、実際の許可件数のごく一部です。同じ事情の許可例が見当たらないことは、許可の余地がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、その後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主な注力分野としています。
不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性の事案では、「退去強制事由には故意・過失が不要」とする従来の実務の当否を問う訴訟を係争中です。この事案では、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しています。
多くの罪名では執行猶予判決を得ても結果として退去強制となりますので、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標として方針を立てます。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、刑事手続後の在留資格の更新・変更は提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
子がない夫婦であっても、共同生活の実体を積み上げることで結論が変わる余地があります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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