令和6年後半・盗品等有償譲受けで実刑でも在留特別許可|改正入管法50条1項ただし書の「特別の事情」が認められ定住者(1年)となった事例(D類型ただし書該当許可事例)
2026/08/06
事例の概要
1年を超える実刑でも、在留特別許可の道が閉ざされるとは限りません。出入国在留管理庁が令和7年7月に公表した令和6年後半分の事例集のうち、D類型(その他)で改正入管法50条1項ただし書に該当しながら許可された事例です。違反態様は刑罰法令違反、発覚は警察逮捕で、在日期間は約21年でした。刑事処分は、盗品等有償譲受け、盗品等運搬により懲役1年6月、罰金20万円の実刑判決です(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。在留希望の理由は日本で生まれた実子の監護養育で、子(未成年者)は永住者でした。許可内容は定住者(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
本件の中心は令和5年改正入管法50条1項ただし書です。1年を超える拘禁刑の実刑(全部執行猶予等を除く)に処せられた者は、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限り許可されます。1年6月の実刑の本件がこれです。
- 第2の2(2)(積極):日本で生まれ在留資格が永住者である未成年実子の監護養育であり、別表第二の家族関係です。
- 子の利益(積極):令和6年3月改定で明示された「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」。
- その他の事情(積極):在日約21年の基盤。
- 第2の6(消極):盗品等に関する罪による実刑。
- 第2の9(積極):発覚は警察逮捕で、自ら出頭した事情なし。
結論を分けた一線はどこか
同じD類型の不許可第4事例との対比で輪郭がはっきりします。その事例は在日約27年11月と本件より長期ながら、窃盗、詐欺、電子計算機使用詐欺の罪により懲役4年の実刑で、在留希望の理由は生活基盤のみです。いずれも財産犯の実刑でただし書の適用を受ける立場でしたが、本件には日本で生まれた永住者である未成年実子を現に監護養育しているという具体的な事情があり、刑も1年6月でした。ただし書の特別の事情は、在留の長さではなく、送還によって失われる保護の必要性で判断されていると読めます。
弁護士のコメント
まず、量刑がただし書の分岐点です。入管法24条4号リは1年を超える拘禁刑の実刑を対象とし、全部執行猶予は除かれます。本件の1年6月は、その境界をわずかに超えています。不起訴処分を得るか、量刑が1年以下にとどまれば、ただし書の枠組みで判断される立場を避けられた可能性があります。量刑論と入管論が表裏一体であることを示す事案です。
次に、盗品等有償譲受けと盗品等運搬は、その物が盗品であることの認識(知情)が争点となり得る類型です。認識の有無を刑事段階から争うことは、量刑を左右し、後の入管手続の主張の基礎にもなります。あわせて子の在留資格と親子関係を示す公的書類、同居と養育の実体を示す資料を判決の確定前から整える必要があります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
ただし書該当の許可事例は令和6年後半分で3件のみです。数の少なさは判断の厳しさを示す一方、この枠組みでも許可され得ることを行政自身が示しています。当事務所が担当した不法就労助長の事案も、公表事例では不許可が並ぶ類型で在留特別許可を得ています。許可事例との差異をどう論じるかが要点です。もっとも結果をお約束できるものではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、当局と交渉して婚姻と認知を成立させ、過去の許可事例を分析して1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
当事務所は、多くの罪名では執行猶予判決を得ても結果として退去強制となることを踏まえ、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標としています。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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