令和6年後半・親子関係不存在審判の確定で日本国籍を失った人に在留特別許可|日本生まれ・在日約20年9月で定住者(1年)が認められた事例(D類型許可事例)
2026/08/06
事例の概要
日本で生まれ育った方が、家庭裁判所の審判によって出生に遡って日本国籍を失うことがあります。出入国在留管理庁が令和7年7月に公表した令和6年後半(改正入管法の施行後)分の事例集のうち、D類型(その他)で在留特別許可がされた事例です。違反態様は出生資格未取得、発覚の端緒は職員探知で、在日期間は約20年9月、違反期間は約1年8月でした。刑事処分はありません。在留希望の理由は、日本で生まれたこと、家族と同居を継続することです。特記事項には、親子関係不存在審判の確定により日本国籍を喪失したものと記されています。許可内容は定住者(1年)でした。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
現行ガイドライン(令和6年3月改定)の当てはめは次のとおりです。
- 第2の6(消極):退去強制理由となった事実は在留資格の未取得であり、その原因は身分関係の審判の確定という本人の意思によらない事情であり、反社会性は乏しいと評価されます。
- 第2の5(消極):不法在留期間約1年8月。
- 第2の9(積極):発覚の端緒は職員探知であり、自ら出頭したという積極要素は認められません。
- 第2の2(積極):家族と同居を継続することが在留希望の理由ですが、家族の国籍と在留資格は事例集の記載からは判明しません。
- その他の事情(積極):日本で出生し在日約20年9月に及ぶ生活の基盤と地域社会との関係。
結論を分けた一線はどこか
職員探知による発覚で、出頭申告という積極要素を欠くにもかかわらず許可されています。天秤を傾けたのは、日本で生まれ約20年9月にわたり生活してきた基盤の厚さと、在留資格を失った原因が本人の帰責性によらないことの組合せと読めます。同じD類型の不許可第4事例は、在日約27年11月と本件より長期ながら、窃盗、詐欺、電子計算機使用詐欺の罪により懲役4年の実刑判決を受けて不許可でした(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。在日期間の長短ではなく、退去強制理由となった事実の性質が結論を分けたと考えられます。
弁護士のコメント
刑事処分のない事例ですので、手続の期限と初動に絞って申し上げます。
まず、日本国籍を失った場合の期限に注意が必要です。日本国籍を離脱した者等は、その日から60日を超えて在留するには在留資格の取得を申請する必要があります(入管法22条の2)。本件の違反期間約1年8月は、この空白と読めます。審判の確定後に速やかに申請していれば、退去強制手続に至らずに済んだ可能性があります。
次に、本件は職員探知による発覚ですが、自ら出頭していれば第2の9の積極要素が加わりました。国籍に疑義が生じた段階で、審判の謄本、戸籍の記載の経緯、居住歴、納税の記録等を整えて出頭することが考えられます。令書の発付後の事情変更は原則として考慮されません(ガイドライン注4)。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集はごく一部の抜粋で、令和6年後半分のD類型は通常の許可4件・不許可4件とただし書該当1件のみです。近い許可例が見当たらないとしても、それは可能性がないことを意味しません。当事務所は、公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。もっとも結果をお約束できるものではありません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を注力分野としています。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったが在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、当局と交渉して婚姻と認知を成立させ、過去の許可事例を分析して1回の申請で許可を獲得しました。身分関係の整理が在留の可否を左右した事案です。
多くの罪名では執行猶予判決を得ても結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標としています。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士と対応いたします。
結語
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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