令和6年後半・過失運転致死で禁固3年・執行猶予4年でも不許可|配偶者が「技術・人文知識・国際業務」、未成年の子2人がいても許可されなかった事例(B類型不許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
交通事故で人を死亡させてしまった。わざとではないのだから、在留への影響も小さいのではないか。事例集は、そう単純でないと示します。出入国在留管理庁が令和7年7月に公表した令和6年後半(改正入管法施行の令和6年6月10日以降)の事例集のうち、配偶者が正規在留外国人である類型(B類型)の不許可第2事例です。不法残留で、自ら出頭して申告し発覚しました。在日期間は約12年1月、違反期間は斜線で不明です。配偶者は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有し、婚姻期間は約12年4月、未成年の子が2人います。刑事処分は過失運転致死により禁固3年、執行猶予4年(禁固は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 配偶者の「技術・人文知識・国際業務」は入管法別表第一の二の表の在留資格です。ガイドライン第2の2(2)が特に考慮する積極要素とするのは別表第二(永住者・定住者等)との家族関係であり、本件はこれに直接は当たりません。弱点の中心はここです。
- 積極要素として、第2の9の自ら出頭したこと。未成年の子2人には、令和6年改定で明示された子の利益が関わります。
- 消極要素として、第2の6の退去強制理由となった事実と、人の死亡を伴う刑事処分。
- 消極要素として、第2の5の不法在留期間の長期化。他方、第2の3が列挙する素行不良の類型には当たりません。
結論を分けた一線はどこか
本件は、実は入管法24条4号リに該当しません。同号は無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、全部執行猶予を除き、本件は執行猶予付きです。過失犯であるため、改正法50条1項ただし書が掲げる各号にも当たりません。本人の退去強制事由は不法残留です。それでも不許可となったのは、刑事処分が第2の6の消極要素として重く働き、配偶者が別表第一であるため第2の2(2)の強い積極要素を欠いたことの組合せと読めます。同じB類型の許可第2事例は、配偶者が同じ在留資格でしたが、刑事処分がなく在日約9月で許可されました。
弁護士のコメント
第1に、執行猶予なら大丈夫という理解の危うさです。4号リに該当しないことは、退去強制手続に乗らないことを意味しません。本件のように別に不法残留がある場合、退去強制事由はそちらで成立し、刑事処分は在留特別許可の判断で消極要素として作用します。過失運転致死の事案でも、不起訴処分を得ていれば消極要素の一つが生じなかった余地があります。
第2に、故意と過失の位置づけです。刑事事件では故意・過失の検討が出発点ですが、入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失は要件でないとする運用が長く踏襲されてきました。この運用が責任主義の射程との関係でどこまで許されるかは、松村大介弁護士が現在係争中の論点です。過失犯の事案では、刑事段階から過失の内容を精密に争うことが要になります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
過失犯で不許可となった例が公表されていることから、同じ類型は望みがないと受け取られがちです。事例集は各年20件前後の抜粋であり、許可の全体像ではありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ました。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っています。
不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に直面した女性の事案では、退去強制事由に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を正面から問う訴訟を進めています。この事件では、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得し、許可を得た後もなお違反認定処分そのものの取消しを争っています。故意・過失が争点となる事案に、実際に取り組んできた事務所です。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、犯意の不存在等を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決を得ても結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えます。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を確保します。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
過失の事件だから在留は心配ない、という説明には注意が必要です。刑事と入管を一体で見通す必要があります。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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