令和6年後半・婚姻からわずか4月でも在留特別許可|永住者の配偶者と未成年の子がいた不法残留5年8月の事例(B類型許可第4事例)
2026/08/06
事例の概要
結婚してまだ数か月しか経っていない。この状態で申請すれば偽装を疑われるのではないか。そう心配される方は多くいます。出入国在留管理庁が令和7年7月に公表した令和6年後半(改正入管法施行の令和6年6月10日以降)の事例集のうち、配偶者が正規在留外国人である類型(B類型)の許可第4事例は、婚姻期間が約4月の段階で許可された事案です。違反態様は不法残留で、自ら出頭して申告し発覚しました。在日期間は約6年6月、うち不法残留は約5年8月。配偶者は「永住者」の在留資格を有し、未成年の子が1人います。刑事処分はなく、許可は「永住者の配偶者等」(1年)でした。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
- 積極要素として、配偶者の「永住者」は入管法別表第二の在留資格であり、ガイドライン第2の2(2)の特に考慮する積極要素に関わります。もっとも婚姻期間は約4月であり、同(1)(ウ)がいう「相当期間共同生活」の点は数字の上では薄いといえます。
- 積極要素として、未成年の子があること。同(1)(ウ)の「夫婦間に子があるなど」に対応する事情として働き、令和6年改定で明示された、本邦で家族とともに生活する子の利益にもつながります。
- 積極要素として、第2の9の自ら出頭したこと。他方、消極要素として第2の5の不法在留期間の長期化(約5年8月)。
- 第2の7の人道上の配慮、第2の3の本邦への貢献に当たる事情は、記載からは判明しません。
結論を分けた一線はどこか
婚姻期間の短さは、通常は婚姻の成熟性への疑いを招きます。それでも許可されたのは、永住者との家族関係に未成年の子が加わり、さらに自ら出頭したという経緯が重なったためと読めます。対照的に、同じB類型の不許可第3事例は、婚姻期間が約7年7月、未成年の子3人、同じく出頭申告で刑事処分もありませんでしたが、不法入国であり在留諸申請で虚偽の内容を申告していたため不許可となりました。婚姻期間の長短や子の数ではなく、家族関係の中身と手続における申告の正確さが天秤を決めていると考えられます。
弁護士のコメント
第1に、出頭という初動の意味です。摘発や逮捕で発覚した場合、第2の9の積極要素は使えず、加えて発覚の経緯そのものが不利に働きます。出頭を決める前に、家族関係の資料を整えたうえで臨むかどうかで、違反審査の入り口の景色が変わります。
第2に、争う段階です。退去強制手続は違反調査、違反審査(認定)、口頭審理(判定)、異議申出という三審構造であり、ガイドライン注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしています。婚姻期間が短い事案では、交際の経緯、同居を始めた時期、子の出生に関する届出、家計の一体性、双方の親族の関わりを、認定の段階までに時系列で示しておくことが要になります。もっとも、必要な資料は事案ごとに異なります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
婚姻期間が短い、不法在留が長い、子がいないといった不利な事情の組合せは、公表事例の中に完全に一致する例が見つからないことが普通です。事例集は各年20件前後の抜粋にとどまるためで、一致例がないことは可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っています。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻と認知が未了であるとして当局から一旦受理されなかったところ、憲法的な観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、過去の許可事例の分析を踏まえて1度の申請で在留特別許可を獲得しました。婚姻や親子関係の成立自体を作り上げる作業から関与した事案です。
また、不法就労助長罪に問われた女性の事案では、退去強制事由に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を問う訴訟を進めながら、在留特別許可を獲得しています。
多くの罪名では執行猶予判決を得ても結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えます。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を確保します。刑事手続後の在留資格の更新・変更も、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
婚姻の年数が足りないと感じられる段階でも、示すべき事実は少なくありません。出頭の前に何を整えるかが結論に響きます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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