ベトナム国籍の方が逮捕されたとき|刑事事件と在留資格・強制送還を弁護士が解説
2026/10/03
ベトナム国籍の方が逮捕されたときは、通訳の確保と並んで在留資格の種類と罪名を最初に確かめることが重要で、技能実習・特定技能・留学などの別表第一の在留資格では、窃盗や傷害などで執行猶予付きの拘禁刑を受けただけでも退去強制事由に当たるため、起訴前に不起訴を目指す弁護活動が在留の帰趨を左右します。(入管法24条4号の2、4号チ、4号リ)
- 逮捕から起訴・不起訴の判断までは通常最長23日と短く、この間の弁護活動が在留に直結します
- 別表第一の在留資格(技能実習・特定技能・留学など)は、窃盗・傷害・詐欺などで執行猶予付きの拘禁刑でも退去強制事由に当たります
- 罰金は退去強制事由には当たりませんが、在留期間の更新で不利になることがあります
- 薬物事件は、有罪判決を受ければ執行猶予でも退去強制事由に当たります
- 逮捕・勾留で働けない期間が長引くと、在留資格の取消しが問題になることがあります
ベトナム国籍の方が逮捕されたら、最初に何をすればよいのか?
最初にすべきことは、逮捕された警察署と罪名を確かめ、通訳を介して本人と話せる弁護人を選任し、取調べで内容を確かめないまま署名しないよう本人に伝えることです。
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。裁判官が勾留を認めると、原則10日、延長されると最長20日、身体拘束が続き、この間に起訴か不起訴かが決まります(刑事訴訟法203条・205条・208条)。通常は逮捕から最長23日であり、この期間が不起訴を目指せる時間のすべてです。
日本語が不自由な方の取調べでは、捜査機関が通訳人を手配するのが通常です。ただし供述調書は日本語で作られ、読み聞かせを受けたうえで署名押印を求められます。実際の話と違うときは訂正を求めることができ、納得できなければ署名押印を拒むことができます(刑事訴訟法198条4項・5項)。弁護人が早く接見して、これらの権利を本人に伝えておくことが大切です。
在留資格によって、刑事処分の影響はどう変わるのか?
在留資格が別表第一(技能実習・特定技能・留学・技術・人文知識・国際業務など)か、別表第二(永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者)かで、同じ刑でも退去強制事由に当たるかどうかが分かれます。
ベトナム国籍の方には、技能実習、特定技能、留学、技術・人文知識・国際業務などの別表第一の在留資格で在留している方が少なくありません。別表第一の方は、別表第二の方に比べて、刑事処分の影響を強く受けます。
| 刑の種類 | 別表第一(技能実習・特定技能・留学など) | 別表第二(永住者・日本人の配偶者等・定住者) |
|---|---|---|
| 罰金 | 退去強制事由には当たらない。ただし更新・変更の審査で素行が不利に考慮される | 退去強制事由には当たらない。永住者は更新が不要 |
| 執行猶予付き拘禁刑(窃盗・傷害・詐欺・住居侵入・文書偽造など) | 該当する(入管法24条4号の2) | 該当しない(4号の2は別表第一の在留資格の者に限る) |
| 執行猶予付き拘禁刑(過失運転致死傷・不同意性交等など、4号の2に挙がっていない罪) | 直ちには該当しないが、更新・変更で不許可となるおそれが大きい | 直ちには該当しない。更新では素行が考慮される |
| 1年を超える実刑 | 該当する(24条4号リ) | 該当する(24条4号リ)。ただし定着性などを理由に在留特別許可を求める余地が大きい |
| 薬物事件で有罪(罰金・執行猶予を含む) | 該当する(24条4号チ) | 該当する(24条4号チ) |
退去強制事由に該当しても、直ちに送還されるわけではありません。退去強制の手続の中で、在留特別許可を求める道があります(入管法50条)。もっとも許可されるとは限らず、事由に該当しないようにすること、すなわち起訴前に不起訴を得ることが最も確実な在留の守り方です。手続は在留特別許可の条件と手続、退去強制とはで解説しています。
ベトナム国籍の方の事件で、特に気をつけるべき点は何か?
在留への影響が大きいのは、窃盗(万引きを含む)・傷害・詐欺などの4号の2に挙がる罪、薬物事件、そして働けなくなったことによる在留資格取消しの問題です。
- 窃盗・傷害・詐欺:別表第一の方は、執行猶予付きでも退去強制事由に当たります。被害者との示談や被害弁償を急ぎ、起訴猶予(犯罪の嫌疑はあるが諸事情を考慮して起訴しない処分で、前科が付きません)を目指します。
- 薬物(大麻・覚醒剤など):有罪判決を受けること自体が退去強制事由です。まず、故意がなかった、嫌疑が足りないなど、有罪を避けられる事情がないかを検討します。
- 勾留が長引き働けないとき:別表第一の在留資格の方が、その資格に応じた活動を正当な理由なく継続して3か月以上行わないでいると、在留資格が取り消されることがあります(入管法22条の4第1項6号)。勾留や裁判のために働けない事情を具体的に説明できるよう、弁護人が経過を記録しておきます。
技能実習生や特定技能の方が逮捕されたとき、勤務先との関係はどうなるのか?
逮捕や勾留だけでは在留資格は直ちに失われませんが、勤務先との関係が切れると在留の前提となる活動を続けられなくなるため、早い段階で状況を把握しておく必要があります。
技能実習や特定技能は、特定の受入れ機関での活動を前提とした在留資格です。勤務先との契約が終わると、そのままでは在留を続けられず、受入れ機関の変更には手続が必要で、制限もあります。勤務先から解雇を告げられた場合でも、本人が勾留中であれば、弁護人が窓口になって契約の扱いを確認し、不起訴や釈放の見込みを踏まえて対応を決めます。
寮に住んでいる方は、釈放後の住居の確保も問題になります。住居や生活の基盤は、勾留の判断で逃亡のおそれがあるかどうかを考えるときにも見られるため、勤務先・寮・家族の協力を得られるかどうかを、弁護人が早めに確かめます。
家族や友人は何をすればよいのか?
家族や友人が最も役に立つのは、弁護人の選任を依頼し、本人の在留資格・在留期限・勤務先などの情報を弁護人に伝えることです。
警察署での面会(一般面会)は、勾留決定後に接見等禁止の決定が付くと家族でもできなくなることがあります。弁護人は接見等禁止の決定があっても、立会人なしで本人と会うことができます(刑事訴訟法39条1項)。差入れや連絡の取り次ぎも、弁護人を通すと確実です。
逮捕された外国人は、本人が希望すれば、ベトナム大使館・領事館への通報を求めることができます(領事関係に関するウィーン条約36条)。国によっては二国間の取決めがあり、本人の希望にかかわらず通報される場合もあるため、取扱いは弁護人に確認してください。
当事務所はベトナム国籍の方の事件にどう対応するのか?
松村大介弁護士が刑事事件と入管事件の両方を担当し、起訴前の不起訴を目指す活動から、判決後の在留資格・退去強制の手続まで続けて対応します。
ご相談のときは、通訳が必要な言語をお知らせください。当事務所は中国語の専属通訳が常駐しており、ベトナム語など中国語以外の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。全国からのご相談に対応しています。電話は050-7587-4639です。これまでの解決事例は外国人・中国人の刑事事件 解決事例の罪名別一覧にまとめています。
ご相談の際は、次の情報があると話が早く進みます。
- 逮捕された警察署の名前と、逮捕された日時
- 本人の氏名・生年月日・国籍
- 在留資格の種類と在留期限(在留カードの写し)
- 勤務先・学校の名前
- 罪名(分かっている範囲で)
- 通訳が必要な言語
よくある質問
ベトナム人の友人が逮捕されました。日本語が話せない場合、通訳は付きますか?
取調べでは捜査機関が通訳人を手配するのが通常です。ただし供述調書は日本語で作られ、内容が実際の話と違っても署名を求められることがあります。違うときは訂正を求め、納得できなければ署名押印を拒むことができます。弁護人との接見にも通訳が必要なので、弁護人の側でも通訳人を手配します。
万引きで罰金になった場合、強制送還されますか?
罰金だけでは退去強制事由に当たらず、直ちに強制送還されることはありません。ただし、在留期間の更新や在留資格の変更の審査では素行が善良かどうかが見られ、罰金の前科が不利に考慮されることがあります。繰り返している場合は、更新が認められないおそれが高まります。
技能実習生が執行猶予判決を受けた場合、日本に残れますか?
窃盗・傷害など入管法24条4号の2に挙がる罪で執行猶予付きの拘禁刑を受けると、技能実習などの別表第一の在留資格では退去強制事由に当たります。在留特別許可を求める道はありますが、許可されるとは限りません。そのため、起訴される前に不起訴を目指すことが重要です。
逮捕された本人は、ベトナムの大使館・領事館に連絡してもらえますか?
本人が希望すれば、本国の領事機関への通報を求めることができます(領事関係に関するウィーン条約36条)。国によっては二国間の取決めがあり、本人の希望にかかわらず通報される場合もあるため、取扱いは弁護人に確認してください。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新日:2026年10月3日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119 電話:050-7587-4639