フィリピン国籍の方が逮捕されたとき|日本人の配偶者等・永住者の刑事事件と在留資格を弁護士が解説
2026/10/03
フィリピン国籍の方が逮捕されたときは、日本人の配偶者等・永住者・定住者などの別表第二の在留資格であれば、窃盗や傷害などで執行猶予付きの拘禁刑を受けても直ちには退去強制事由に当たらず、1年を超える実刑や薬物事件の有罪判決などで退去強制事由に当たるという違いを踏まえて、見通しを立てることが重要です。(入管法24条4号の2、4号リ、4号チ、22条の4第1項7号)
- 別表第二の在留資格は、24条4号の2(執行猶予付きでも該当)の対象外です
- 1年を超える実刑を受けたときは、別表第二でも退去強制事由(24条4号リ)に当たります
- 薬物事件は、別表を問わず、有罪判決を受ければ執行猶予でも退去強制事由(24条4号チ)に当たります
- 日本人の配偶者等は婚姻の実体が前提で、別居や離婚が在留に影響します
- 日本人の子を養育していることは、在留特別許可でも考慮される事情です
フィリピン国籍の方が逮捕されたら、最初に何をすればよいのか?
最初にすべきことは、逮捕された警察署と罪名を確かめ、通訳を介して本人と話せる弁護人を選任し、取調べで内容を確かめないまま署名しないよう本人に伝えることです。
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。裁判官が勾留を認めると、原則10日、延長されると最長20日、身体拘束が続き、この間に起訴か不起訴かが決まります(刑事訴訟法203条・205条・208条)。通常は逮捕から最長23日であり、この期間が不起訴を目指せる時間のすべてです。
日本語が不自由な方の取調べでは、捜査機関が通訳人を手配するのが通常です。ただし供述調書は日本語で作られ、読み聞かせを受けたうえで署名押印を求められます。実際の話と違うときは訂正を求めることができ、納得できなければ署名押印を拒むことができます(刑事訴訟法198条4項・5項)。弁護人が早く接見して、これらの権利を本人に伝えておくことが大切です。
日本人の配偶者等・永住者・定住者の方は、刑事処分でどう扱われるのか?
別表第二の在留資格の方は、別表第一の方と違って、執行猶予付きの拘禁刑を受けただけでは退去強制事由に当たらず、退去強制事由に当たるのは、1年を超える実刑を受けたときと、薬物事件で有罪になったときなどに限られます。
フィリピン国籍の方には、日本人の配偶者等、永住者、永住者の配偶者等、定住者などの別表第二の在留資格で在留している方が多くいます。別表第二は、日本人や永住者との身分関係や日本での定着を理由に在留を認められる在留資格で、活動に制限がなく、刑事処分の影響も別表第一より小さくなっています。
| 刑の種類 | 別表第二(日本人の配偶者等・永住者・永住者の配偶者等・定住者) | 参考:別表第一(技能実習・特定技能・留学など) |
|---|---|---|
| 罰金 | 退去強制事由には当たらない。永住者は更新が不要 | 退去強制事由には当たらないが、更新で素行が不利に考慮される |
| 執行猶予付き拘禁刑(窃盗・傷害・詐欺など) | 退去強制事由には当たらない(24条4号の2は別表第一の者に限る) | 該当する(24条4号の2) |
| 1年を超える実刑 | 該当する(24条4号リ)。ただし在留特別許可の余地が大きい | 該当する(24条4号リ) |
| 薬物事件で有罪(罰金・執行猶予を含む) | 該当する(24条4号チ) | 該当する(24条4号チ) |
退去強制事由に該当しても、直ちに送還されるわけではありません。退去強制の手続の中で、在留特別許可を求める道があります(入管法50条)。もっとも許可されるとは限らず、事由に該当しないようにすること、すなわち起訴前に不起訴を得ることが最も確実な在留の守り方です。手続は在留特別許可の条件と手続、退去強制とはで解説しています。
婚姻や離婚は、刑事事件と在留にどう関係するのか?
日本人の配偶者等の在留資格は、日本人との婚姻関係が続いていることを前提としているため、刑事事件をきっかけに別居や離婚になると、在留資格そのものが問題になります。
日本人の配偶者等の在留資格の方が、配偶者としての活動を正当な理由なく継続して6か月以上行わないでいると、在留資格を取り消されることがあります(入管法22条の4第1項7号)。配偶者間の傷害などで逮捕され、別居が続いているときは、別居の事情を事実どおりに説明できるようにしておく必要があります。
離婚になった場合でも、日本人との婚姻期間や子の養育などの事情によって、定住者への在留資格の変更を求めることができることがあります。刑事事件の見通しと並行して、在留の見通しを立てることが大切です。
日本人の子がいる場合、在留特別許可ではどう考慮されるのか?
日本人の子を養育していることは、退去強制の手続の中で在留特別許可を求めるとき、許可する方向で考慮される重要な事情です。
在留特別許可は、法務大臣の裁量で認められるもので、入管庁はガイドラインで、許可する方向で考慮する事情に、日本人の子を扶養・監護していることなどを挙げています。子の年齢、日本での生活の状況、親としての監護の実態を、資料で具体的に示すことが大切です。事案に近い公表事例の調べ方は、在留特別許可の条件と手続で説明しています。
家族や友人は何をすればよいのか?
家族や友人が最も役に立つのは、弁護人の選任を依頼し、本人の在留資格・在留期限・勤務先などの情報を弁護人に伝えることです。
警察署での面会(一般面会)は、勾留決定後に接見等禁止の決定が付くと家族でもできなくなることがあります。弁護人は接見等禁止の決定があっても、立会人なしで本人と会うことができます(刑事訴訟法39条1項)。差入れや連絡の取り次ぎも、弁護人を通すと確実です。
逮捕された外国人は、本人が希望すれば、フィリピン大使館・領事機関への通報を求めることができます(領事関係に関するウィーン条約36条)。国によっては二国間の取決めがあり、本人の希望にかかわらず通報される場合もあるため、取扱いは弁護人に確認してください。
当事務所はフィリピン国籍の方の事件にどう対応するのか?
松村大介弁護士が刑事事件と入管事件の両方を担当し、起訴前の不起訴を目指す活動から、判決後の在留資格・退去強制の手続まで続けて対応します。
ご相談のときは、通訳が必要な言語をお知らせください。当事務所は中国語の専属通訳が常駐しており、タガログ語・英語など中国語以外の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。全国からのご相談に対応しています。電話は050-7587-4639です。これまでの解決事例は外国人・中国人の刑事事件 解決事例の罪名別一覧にまとめています。
ご相談の際は、次の情報があると話が早く進みます。
- 逮捕された警察署の名前と、逮捕された日時
- 本人の氏名・生年月日・国籍
- 在留資格の種類と在留期限(在留カードの写し)
- 勤務先・学校の名前
- 罪名(分かっている範囲で)
- 通訳が必要な言語
よくある質問
永住者のフィリピン人の夫が窃盗で逮捕されました。執行猶予がついても強制送還されますか?
永住者は別表第二の在留資格で、窃盗による執行猶予付きの拘禁刑は、入管法24条4号の2の対象外です。そのため、執行猶予が付けば、直ちに退去強制事由に当たることはありません。ただし、1年を超える実刑を受けると退去強制事由に当たるため、量刑の見通しは慎重に見極める必要があります。
日本人の夫とのけんかで傷害罪の疑いで逮捕されました。在留資格に影響しますか?
罰金や執行猶予付きの拘禁刑であれば、直ちに退去強制事由に当たることはありません。ただし、別居や離婚になって、配偶者としての活動を6か月以上行わないと、在留資格の取消しが問題になることがあります。夫との関係や別居の事情を事実どおりに整理しておくことが大切です。
薬物の事件で執行猶予になった場合も、永住者は強制送還されますか?
薬物事件は、有罪判決を受ければ、執行猶予付きでも、永住者を含む別表第二の在留資格でも退去強制事由(入管法24条4号チ)に当たります。そのため、起訴前に不起訴を目指すことや、有罪を避けられる事情がないかを検討することが決定的に重要です。
子どもが日本で生まれ育っています。退去強制になる場合、子どもはどうなりますか?
子どもが日本人であれば、日本で生活を続けることができ、親の在留特別許可を求めるときに、子の養育の実態が重要な事情になります。子どもが外国籍の場合は、子の在留資格も別に検討する必要があります。いずれの場合も、家族全体の在留を守る方法を早めに検討します。
関連ページ
- 外国人の刑事事件 総合ガイド
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- ベトナム国籍の方の刑事事件
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新日:2026年10月3日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119 電話:050-7587-4639