ネパール国籍の方が逮捕されたとき|資格外活動・不法就労助長・在留資格への影響を弁護士が解説
2026/10/03
ネパール国籍の方が刑事事件になったときは、留学・技能・経営・管理・家族滞在といった在留資格ごとに、資格外活動の違反や不法就労助長罪が退去強制に結びつくかどうかを確かめることが重要で、特に別表第一の在留資格では、窃盗や傷害などで執行猶予付きの拘禁刑を受けただけでも退去強制事由に当たります。(入管法24条3号の4、4号イ、4号の2、73条の2)
- 留学・家族滞在の方が資格外活動の許可の範囲(原則として週28時間以内)を超えて働くと、資格外活動の違反が問題になります
- 飲食店などを経営する方が、在留資格のない人を働かせると、不法就労助長罪に問われ、退去強制事由にも当たります
- 別表第一の在留資格は、窃盗・傷害・詐欺などで執行猶予付きの拘禁刑でも退去強制事由に当たります
- 薬物事件は、有罪判決を受ければ執行猶予でも退去強制事由に当たります
- 家族滞在は扶養者の在留に連動するため、扶養者側の事件も影響します
ネパール国籍の方が逮捕されたら、最初に何をすればよいのか?
最初にすべきことは、逮捕された警察署と罪名を確かめ、通訳を介して本人と話せる弁護人を選任し、取調べで内容を確かめないまま署名しないよう本人に伝えることです。
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。裁判官が勾留を認めると、原則10日、延長されると最長20日、身体拘束が続き、この間に起訴か不起訴かが決まります(刑事訴訟法203条・205条・208条)。通常は逮捕から最長23日であり、この期間が不起訴を目指せる時間のすべてです。
日本語が不自由な方の取調べでは、捜査機関が通訳人を手配するのが通常です。ただし供述調書は日本語で作られ、読み聞かせを受けたうえで署名押印を求められます。実際の話と違うときは訂正を求めることができ、納得できなければ署名押印を拒むことができます(刑事訴訟法198条4項・5項)。弁護人が早く接見して、これらの権利を本人に伝えておくことが大切です。
在留資格によって、刑事処分の影響はどう変わるのか?
在留資格が別表第一(留学・技能・経営・管理・家族滞在など)か、別表第二(永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者)かで、同じ刑でも退去強制事由に当たるかどうかが分かれます。
ネパール国籍の方には、留学、技能(調理など)、経営・管理、家族滞在などの別表第一の在留資格で在留している方がいます。これらは、刑事処分の影響を強く受ける在留資格です。
| 刑の種類 | 別表第一(留学・技能・経営・管理・家族滞在など) | 別表第二(永住者・日本人の配偶者等・定住者) |
|---|---|---|
| 罰金 | 退去強制事由には当たらない。ただし更新・変更の審査で素行が不利に考慮される | 退去強制事由には当たらない。永住者は更新が不要 |
| 執行猶予付き拘禁刑(窃盗・傷害・詐欺・住居侵入・文書偽造など) | 該当する(入管法24条4号の2) | 該当しない(4号の2は別表第一の在留資格の者に限る) |
| 執行猶予付き拘禁刑(過失運転致死傷・不同意性交等など、4号の2に挙がっていない罪) | 直ちには該当しないが、更新・変更で不許可となるおそれが大きい | 直ちには該当しない。更新では素行が考慮される |
| 1年を超える実刑 | 該当する(24条4号リ) | 該当する(24条4号リ)。ただし定着性などを理由に在留特別許可を求める余地が大きい |
| 薬物事件で有罪(罰金・執行猶予を含む) | 該当する(24条4号チ) | 該当する(24条4号チ) |
退去強制事由に該当しても、直ちに送還されるわけではありません。退去強制の手続の中で、在留特別許可を求める道があります(入管法50条)。もっとも許可されるとは限らず、事由に該当しないようにすること、すなわち起訴前に不起訴を得ることが最も確実な在留の守り方です。手続は在留特別許可の条件と手続、退去強制とはで解説しています。
資格外活動と不法就労助長は、刑事事件になるとどうなるのか?
留学や家族滞在の方が許可の範囲を超えて働いたときは資格外活動の違反が、経営者として在留資格のない人を働かせたときは不法就労助長罪が問題になり、いずれも退去強制の手続に進むことがあります。
- 資格外活動:留学・家族滞在の方は、資格外活動の許可を受ければ、原則として週28時間以内で働くことができます。許可がないまま、または許可の範囲を超えて働くと、資格外活動の違反になります(入管法19条1項)。専ら働いていると明らかに認められる場合や、この違反で刑罰を受けた場合は、退去強制事由にも当たり得ます(24条4号イ・ヘ)。
- 不法就労助長罪:在留資格のない人や、働く資格のない人を働かせた事業主は、不法就労助長罪に問われます(入管法73条の2)。在留カードを確認しなかったなど過失があれば、知らなかったという理由だけでは処罰を免れません(同条2項)。また、この罪は、刑罰を受けなくても行為をしただけで退去強制事由に当たります(24条3号の4)。
- 経営・管理の在留資格:令和7年10月16日施行の基準改正で要件が加重されており(経過措置は令和10年10月16日まで)、更新の審査も慎重になっています。刑事事件で罰金以上の処分を受けると、更新の審査で素行も考慮されるため、事前に見通しを立てておく必要があります。
不法就労助長については、不法就労の特集も参照してください。
家族滞在の方や、家族が逮捕されたときはどうなるのか?
家族滞在の在留資格は、扶養者(留学・技能・経営・管理などで在留する方)の在留に連動するため、扶養者が逮捕されて在留を失えば、配偶者や子の在留にも影響します。
一方、家族滞在の方本人が万引きなどで逮捕された場合も、別表第一の在留資格なので、執行猶予付きの拘禁刑で退去強制事由に当たり得ます。いずれの場合も、刑事事件の見通しと在留の見通しを分けて整理し、早い段階で家族全体の在留を守る方法を考えます。
家族や友人は何をすればよいのか?
家族や友人が最も役に立つのは、弁護人の選任を依頼し、本人の在留資格・在留期限・勤務先などの情報を弁護人に伝えることです。
警察署での面会(一般面会)は、勾留決定後に接見等禁止の決定が付くと家族でもできなくなることがあります。弁護人は接見等禁止の決定があっても、立会人なしで本人と会うことができます(刑事訴訟法39条1項)。差入れや連絡の取り次ぎも、弁護人を通すと確実です。
逮捕された外国人は、本人が希望すれば、ネパール大使館・領事機関への通報を求めることができます(領事関係に関するウィーン条約36条)。国によっては二国間の取決めがあり、本人の希望にかかわらず通報される場合もあるため、取扱いは弁護人に確認してください。
当事務所はネパール国籍の方の事件にどう対応するのか?
松村大介弁護士が刑事事件と入管事件の両方を担当し、起訴前の不起訴を目指す活動から、判決後の在留資格・退去強制の手続まで続けて対応します。
ご相談のときは、通訳が必要な言語をお知らせください。当事務所は中国語の専属通訳が常駐しており、ネパール語など中国語以外の言語は、事案に応じて通訳人を手配します。全国からのご相談に対応しています。電話は050-7587-4639です。これまでの解決事例は外国人・中国人の刑事事件 解決事例の罪名別一覧にまとめています。
ご相談の際は、次の情報があると話が早く進みます。
- 逮捕された警察署の名前と、逮捕された日時
- 本人の氏名・生年月日・国籍
- 在留資格の種類と在留期限(在留カードの写し)
- 勤務先・学校の名前
- 罪名(分かっている範囲で)
- 通訳が必要な言語
よくある質問
留学生が週28時間を超えてアルバイトをしていたことが分かりました。逮捕されますか?
超過の程度や回数、雇用主の関与などによって、警察が入管法違反として捜査するか、入管が調査して退去強制の手続に進めるかが分かれます。取調べを受けたときは、内容を確かめないまま署名せず、早めに弁護士に相談してください。
飲食店の経営者です。従業員が不法就労だったと警察に言われました。知らなかった場合も罪になりますか?
故意がなくても、在留カードを確認しなかったなど過失があれば、知らなかったという理由だけでは処罰を免れません(入管法73条の2第2項)。過失がなかったといえるかどうかが争点になるため、確認していた経過を具体的に整理する必要があります。
罰金刑になった場合、ネパールに帰らなければなりませんか?
罰金だけでは退去強制事由に当たりません。ただし、在留期間の更新などの審査で素行が善良かどうかが見られ、前科が不利に考慮されることがあります。経営・管理などの在留資格では、更新の見通しを早めに確かめておくことをお勧めします。
夫が逮捕されました。家族滞在の私と子どもの在留はどうなりますか?
夫の在留が続く限り、家族滞在の在留は直ちには失われません。夫が退去強制事由に当たったり、在留期間の更新が認められなかったりすると、家族滞在の在留にも影響します。夫の事件の見通しを踏まえて、家族の在留を守る方法を一緒に検討します。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新日:2026年10月3日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119 電話:050-7587-4639