刑事事件とは|民事事件との違い、逮捕から判決までの流れ、刑罰の種類を弁護士が解説
2026/10/11
最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
刑事事件とは、犯罪に当たる行為をした疑いがある人について、警察や検察官が捜査を行い、検察官が起訴するかどうかを決め、起訴された場合には裁判所が有罪か無罪か、有罪であればどのような刑罰を科すかを決める事件をいいます。私人同士の権利や義務をめぐる争いである民事事件とは、目的も手続も異なります。
この記事の要点
- 刑事事件の当事者は、国を代表する検察官と、疑いを受けている被疑者・被告人です。被害者は当事者ではありません。
- 逮捕されると、身体を拘束された時から72時間以内に勾留を請求するかどうかが決まり、勾留は原則10日、通常の事件では延長を含めて最大20日です(刑事訴訟法203条・205条・208条)。
- 検察官は、犯罪の疑いがあっても、情状などを考慮して起訴しないこと(起訴猶予)ができます(同法248条)。
- 刑罰の主刑は死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料の5種類で、令和7年6月1日から懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました(刑法9条)。
- 被疑者には黙秘権と弁護人を選任する権利があり、逮捕された後も弁護人とは立会人なしで接見できます(刑事訴訟法198条2項・30条・39条1項)。
刑事事件と民事事件はどこが違うのですか
刑事事件は国が刑罰を科すかどうかを決める手続であり、民事事件は私人同士の権利義務の争いを解決する手続です。
例えば、他人のお金をだまし取った場合、国が詐欺罪として処罰するかどうかを決めるのが刑事事件で、被害者がだまし取られたお金の返還や損害賠償を求めるのが民事事件です。同じ出来事から両方の事件が生じることがあり、それぞれ別の手続で進みます。刑事事件の中で被害者との示談が成立すると、民事上の賠償の問題も同時に解決することが多くなります。
| 項目 | 刑事事件 | 民事事件 |
|---|---|---|
| 目的 | 犯罪を認定し、刑罰を科すかどうかを決める | 当事者間の権利義務の争いを解決する |
| 当事者 | 検察官と被疑者・被告人 | 原告と被告(個人・会社など) |
| 始まり方 | 捜査機関の捜査、検察官の起訴 | 当事者による訴えの提起 |
| 結論 | 有罪(刑罰)・無罪、不起訴 | 請求の認容・棄却、和解 |
| 主な法律 | 刑法、刑事訴訟法 | 民法、民事訴訟法 |
| 身体の拘束 | 逮捕・勾留されることがある | 原則としてない |
刑事事件はどのような流れで進むのですか
捜査、起訴するかどうかの判断、刑事裁判、判決の順に進みます。逮捕される事件(身柄事件)と、逮捕されずに捜査が進む事件(在宅事件)があります。
警察が被疑者を逮捕したときは、48時間以内に検察官に送致する手続をしなければならず(刑事訴訟法203条1項)、検察官は被疑者を受け取った時から24時間以内に、裁判官に勾留を請求するか釈放するかを決めます(同法205条1項)。この時間の制限は、身体を拘束された時から72時間を超えることができません(同条2項)。勾留が認められると、勾留の請求をした日から10日以内に起訴しなければ釈放しなければならず、やむを得ない事由があるときは、通じて10日を超えない範囲で延長されます(同法208条)。
在宅事件では、被疑者は普段どおり生活しながら、警察や検察庁から呼出しを受けて取調べに応じます。逮捕・勾留されていない場合は、取調べのための出頭を拒むことや、出頭後いつでも退去することが認められています(同法198条1項ただし書)。もっとも、呼出しに応じない態度が逃亡のおそれの判断材料とされることもあるため、対応は弁護士と相談して決めるのが安全です。
| 段階 | 期間の上限 | 根拠条文 | 主な出来事 |
|---|---|---|---|
| 逮捕から検察官への送致 | 48時間 | 刑事訴訟法203条 | 弁解の機会、取調べ |
| 送致から勾留請求 | 24時間(逮捕から通じて72時間) | 同法205条 | 検察官の取調べ、勾留請求又は釈放 |
| 勾留 | 10日、延長して最大20日 | 同法208条 | 取調べ、起訴・不起訴の決定 |
| 起訴後の勾留 | 2か月、以後1か月ごとに更新(更新は原則1回) | 同法60条2項 | 保釈請求、公判の準備 |
| 公判・判決 | 事件により異なる | 刑事訴訟法 | 証拠調べ、判決 |
「被疑者」と「被告人」は何が違うのですか
起訴される前の段階で犯罪の疑いを受けている人が被疑者、起訴された後の人が被告人です。
報道では「容疑者」と呼ばれることがありますが、法律上は被疑者といいます。起訴されて被告人となった後も、有罪判決が確定するまでは無罪と推定されます。被疑者の段階では保釈の制度がなく、身体拘束からの解放は、勾留の決定に対する準抗告などによって求めます。起訴された後は保釈を請求することができ、法律に定める除外事由に当たらなければ、保釈を許さなければならないとされています(刑事訴訟法89条)。
犯罪の疑いがあっても、起訴されないことはあるのですか
あります。検察官は、犯罪の嫌疑が十分であっても、事情を考慮して起訴しないことができます。これを起訴猶予といいます。
刑事訴訟法248条は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」と定めています。証拠が足りない場合(嫌疑不十分)や、犯罪が成立しない場合(嫌疑なし)も不起訴となります。不起訴になれば刑事裁判は開かれず、前科も付きません。被害者のいる事件では、示談の成立や被害弁償が起訴猶予の判断に大きく影響します。
起訴には、公開の法廷で審理する通常の起訴のほか、簡易裁判所が書面の審理で100万円以下の罰金又は科料を科す略式命令の手続があります(同法461条)。略式命令による罰金も有罪の裁判であり、前科になります。
刑罰にはどのような種類がありますか
主刑は死刑、拘禁刑、罰金、拘留、科料の5種類で、付加刑として没収があります(刑法9条)。
令和4年の刑法改正により、令和7年6月1日から懲役と禁錮が廃止され、拘禁刑に一本化されました。拘禁刑は刑事施設に拘置する刑で、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができるとされています(刑法12条2項・3項)。
| 刑の種類 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 死刑 | 生命を奪う刑 | 刑法9条・11条 |
| 拘禁刑 | 刑事施設に拘置する刑。無期と有期があり、有期は1月以上20年以下 | 刑法12条 |
| 罰金 | 1万円以上の金銭を納めさせる刑 | 刑法15条 |
| 拘留 | 1日以上30日未満、刑事施設に拘置する刑 | 刑法16条 |
| 科料 | 1000円以上1万円未満の金銭を納めさせる刑 | 刑法17条 |
| 没収 | 犯罪に関係する物を取り上げる付加刑 | 刑法9条・19条 |
3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、刑の全部の執行を猶予することができます(刑法25条1項)。執行猶予付きの判決も有罪判決であることに変わりはなく、前科になります。
逮捕されたら、どのような権利がありますか
被疑者には、黙秘権、弁護人を選任する権利、弁護人と立会人なしで接見する権利があります。
取調べの前には、「自己の意思に反して供述をする必要がない旨」を告げなければならないとされています(刑事訴訟法198条2項)。作成された供述調書の内容に誤りがあれば訂正を求めることができ、署名押印を拒むこともできます(同条4項・5項)。被疑者本人のほか、その配偶者、直系の親族、兄弟姉妹などは、独立して弁護人を選任することができ(同法30条)、身体を拘束されている被疑者は、弁護人と立会人なしで接見することができます(同法39条1項)。家族の面会は、接見等禁止の決定があると認められませんが、弁護人との接見は禁止されません。
外国人が刑事事件の当事者になった場合、何に注意すべきですか
刑事手続の結果が在留資格に直接影響するため、刑事事件の段階から入管法上の影響を見据えて対応する必要があります。
例えば、技術・人文知識・国際業務や留学などの在留資格の方が、窃盗や詐欺などで拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いても退去強制事由に当たります(入管法24条4号の2)。一方、罰金で終われば同号には当たりません。在留資格の区分によって基準が異なるため、詳しくは「在留資格の別表第一・別表第二とは」で解説しています。また、取調べは通訳を介して行われるため、供述調書の内容を確認する際の注意点は「供述調書とは」をご覧ください。
弁護士に相談すべき場面
- 家族が逮捕されたと警察から連絡を受けたが、どこの警察署にいるのか、いつ面会できるのか分からないとき。
- 警察から呼出しを受け、取調べにどう臨めばよいか知りたいとき。
- 被害者と示談をしたいが、連絡先が分からない、又は直接の連絡を控えるよう言われているとき。
- 勾留が延長され、起訴されるかどうかの見通しを知りたいとき。
- 外国籍で、刑事事件の結果が在留資格にどう影響するかを知りたいとき。
当事務所では中国語での相談に対応しており、中国語の通訳を完備し、中国律師(中国の弁護士資格者)も在籍しています。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績、入管事件では在留特別許可の獲得実績があります。行政事件では違法な行政処分の撤回を得た例があり、取り扱った事件の一部は法律学の学術誌で取り上げられています。弁護の考え方は「松村大介弁護士の弁護方針」(note)にまとめています。
よくある質問
前科と前歴は何が違うのですか。
前科は、有罪の判決(罰金や執行猶予付きの判決を含みます)を受けた経歴をいいます。前歴は、捜査の対象となった経歴をいい、不起訴で終わった場合も含みます。不起訴になれば前科は付きませんが、捜査機関の記録には前歴として残ります。
逮捕されずに捜査されることはありますか。
あります。逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合などには、逮捕せずに在宅のまま捜査が進められます(在宅事件)。在宅事件でも、検察官が起訴すれば刑事裁判になり、有罪となれば前科が付きます。身柄事件のような時間の制限がないため、捜査が数か月から1年以上続くこともあります。
示談が成立すれば、刑事事件は終わりますか。
示談が成立しても、それだけで刑事事件が終了するわけではありません。ただし、被害者のいる事件では、示談の成立や被害弁償は、起訴猶予の判断や量刑で重視されます。告訴がなければ起訴できない親告罪では、告訴が取り消されれば起訴されなくなります。
家族が逮捕されたら、すぐに面会できますか。
逮捕の段階(最長72時間)では、家族の面会は通常認められません。勾留された後は、接見等禁止の決定がなければ、警察署が定める時間に面会できます。弁護人は、逮捕直後から立会人なしで接見できます(刑事訴訟法39条1項)。
略式命令とは何ですか。
略式命令は、簡易裁判所が、検察官の請求により、公判を開かずに書面の審理で100万円以下の罰金又は科料を科す手続です(刑事訴訟法461条)。被疑者が略式手続によることに異議がないことを書面で明らかにする必要があります(同法461条の2)。早く終わる反面、有罪の裁判であるため前科になります。
根拠条文・出典
- 刑法9条・12条・15条・16条・17条・25条(e-Gov法令検索の現行条文で確認。2026年10月11日)
- 刑事訴訟法30条・39条・60条・89条・198条・203条・205条・208条・248条・461条・461条の2(同上)
- 出入国管理及び難民認定法24条4号の2(同上)
関連する解説
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