保釈とは|権利保釈の除外事由・保釈保証金・中国の取保候審との違いを弁護士が解説
2026/09/10
保釈とは、起訴された後に勾留されている被告人について、保証金の納付を条件として勾留の執行を停止し、身体の拘束を解く制度をいう。(刑事訴訟法88条以下)
- 請求できるのは起訴された後であり、起訴前は認められない
- 除外事由に当たらなければ保釈は許さなければならない
- 除外事由に当たる場合でも裁量による保釈がありうる
- 保証金は逃げなければ最後に返還される
- 外国人は住居と身元引受けの疎明が結果を左右する
保釈はいつから請求できるのか
起訴された後である。捜査段階には保釈の制度がなく、争う手段は勾留の裁判に対する準抗告、勾留の取消しの請求、勾留の執行停止に限られる。逮捕から最大で23日間の拘束が予定され、その間は保釈という選択肢がない。起訴の当日から請求できる。
保釈にはどのような種類があるのか
権利保釈、裁量保釈、義務的保釈の3つがある。原則は権利保釈であり、法定の除外事由に当たらない限り、裁判所は保釈を許さなければならない。
| 種類 | 根拠 | 判断の枠組み |
|---|---|---|
| 権利保釈 | 刑事訴訟法89条 | 除外事由がなければ許さなければならない |
| 裁量保釈 | 同法90条 | 逃亡や罪証隠滅のおそれと拘束による不利益を比較する |
| 義務的保釈 | 同法91条 | 拘禁が不当に長くなったときに請求により許す |
権利保釈が認められないのはどのような場合か
法は6つの除外事由を定めている。第1に、死刑または無期もしくは短期1年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。第2に、前に死刑または無期もしくは長期10年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。第3に、常習として長期3年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。第4に、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。第5に、被害者や事件について知識を有する者、その親族に害を加える行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。第6に、被告人の氏名または住居が分からないときである。
実務で争点になるのは第4号である。罪証隠滅のおそれは、隠滅の対象、方法、実効性を具体的に検討すべきであり、否認しているだけで抽象的なおそれを認めるのは相当でない。
裁量保釈ではどのような事情が考慮されるのか
逃亡や罪証隠滅のおそれの程度と、拘束による被告人の不利益とを比べて判断される。考慮されるのは、健康上、経済上、社会生活上、防御の準備上の不利益である。治療の必要、勾留が続けば職を失うこと、記録が多く打合せに時間を要することは、この枠組みで主張できる。
保釈保証金はいくらで、返ってくるのか
金額は、犯罪の性質と情状、証拠の証明力、被告人の性格と資産を考慮し、出頭を保証するに足りる相当な額とされる。一般的な事件では200万円前後が目安とされ、被害額が大きい事件ではさらに高額になる。
保証金は、逃亡や無断の不出頭、条件違反がなければ、手続の終了後に返還される。違反があれば保釈は取り消され、全部または一部が没取されうる。拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があったときは保釈は効力を失い、改めて保釈が許されなければ当日に収容される。
保釈にはどのような条件が付くのか
住居を制限し、被害者や関係者への接触を禁止することが中心となる。制限住居として届け出た場所に居住し、旅行や転居には裁判所の許可を要する。近年は監督者を選任する仕組みも設けられ、身元引受人の役割が重くなっている。
中国の取保候審と何が違うのか
最も大きな違いは、日本の保釈が起訴後にしか使えない点である。中国の取保候審は捜査の段階から利用でき、公安機関、人民検察院、人民法院のいずれもが決定できる。捜査中に身柄を解けると考えて時期を逃す例があり、注意を要する。
| 項目 | 日本の保釈 | 中国の取保候審 |
|---|---|---|
| 利用できる段階 | 起訴された後に限られる | 捜査の段階から利用できる |
| 決定する機関 | 裁判所 | 公安機関、人民検察院、人民法院 |
| 担保の方法 | 保証金の納付が原則 | 保証人による方法と保証金による方法 |
| 期間 | 実刑判決の宣告により効力を失う | 法律上の上限が定められている |
| 主な条件 | 制限住居、関係者への接触禁止 | 居住地を離れる際の許可、召喚への出頭 |
外国人の保釈はなぜ通りにくいのか、どう備えるか
住居が定まらないこと、国外へ出てしまうおそれが疑われることが理由である。除外事由の第6号は住居が分からないときを挙げており、住居の不安定さは裁量保釈でも不利に働く。勾留中に勤務先を退職すれば住居も失いやすく、在留資格の基礎が崩れて、さらに逃亡のおそれが疑われる悪循環に陥る。
備えとしては、居住する場所を固めて賃貸借契約書などで裏づけ、親族や雇用主による身元引受書に監督の内容を具体的に書き込むことが基本になる。旅券と在留カードを弁護人が預かる旨の申出、保証金の準備、就労継続の見込みの疎明、通訳人の確保もあわせたい。
退去強制手続との関係も見落とせない。在留資格を失っていると、保釈が許されても釈放と同時に入管の手続に移り、収容されることがある。
よくある質問
逮捕されてすぐに保釈を請求できますか。
できません。保釈は起訴された後の被告人について認められる制度で、捜査段階には対応する制度がありません。この時期に取りうる手段は、勾留の裁判に対する準抗告や勾留の取消しの請求などです。起訴の当日から請求できるよう、資料を先に整えておくことが有効です。
否認していると保釈は認められないのですか。
否認していること自体が除外事由ではありません。もっとも、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかが問題とされやすくなります。証拠がすでに収集されていること、関係者との接触を防ぐ条件を付せば足りることを具体的に示して請求します。条件の工夫が結論を左右します。
保釈保証金は誰が払ってもよいのですか。
被告人以外の親族や知人が納付することも実務上行われています。国外の家族から送金を受ける場合は着金に日数がかかるため、早めの準備が必要です。第三者の差し出した保証書や、立替えの仕組みを利用できる場合もあります。納付が済むまで釈放されませんので、資金の手当ては早いほど有利です。
保釈中に帰国することはできますか。
できません。制限住居に居住することが条件とされ、旅行や転居には裁判所の許可が必要です。無断で出国すれば保釈は取り消され、保証金が没取されるほか、逃亡として扱われます。やむを得ない事情があるときは、必ず事前に弁護人を通じて許可を求めてください。
保釈されれば入管に収容されずに済みますか。
そうとは限りません。在留資格を失っている場合には、釈放と同時に入管の手続に移り、収容されることがあります。刑事手続と入管手続は別に進みますので、保釈の準備と並行して、在留資格の状況と退去強制手続の見通しを確認しておく必要があります。収容が見込まれる場合は、その後の手続の準備も併せて進めます。
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最終更新日:2026年9月10日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
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