交通事故や日常の事故で示談金に保険は使えるのか。故意犯で免責となる理由
2026/08/13
示談金を用意できるかどうかは、処分の見通しを左右します。交通事故のように保険で賠償がまかなわれる類型では、資金面の負担は大きく軽減されますが、保険会社による賠償と、刑事処分に向けた示談とは目的も進み方も異なります。他方、暴行や傷害、窃盗のような故意による行為は、保険の免責事由に当たるのが通常で、自己資金や家族の援助で用意することになります。ここでは、使える保険と使えない場面、そして在留資格への影響を整理します。
本記事の要点
- 自動車事故では自賠責保険と任意保険が賠償を担いますが、刑事処分に向けた被害者対応は別に必要です。
- 個人賠償責任保険は日常生活の偶然な事故を対象とし、故意の犯罪行為は免責となるのが通常です。
- 保険会社の示談交渉は民事賠償が目的であり、宥恕文言までは取り付けないのが一般的です。
- 過失運転致傷は入管法24条4号の2が列挙する罪には含まれませんが、1年を超える実刑では同号リが問題になります。
交通事故では保険がどこまで使えますか
人身損害は自賠責保険と任意保険の対人賠償で、物的損害は対物賠償でまかなわれるのが基本です。したがって、被害者への金銭賠償という点では、加害者が自己資金を用意しなくても解決できる場合が多くあります。もっとも、刑事処分の判断では、賠償が保険で行われた事実だけでなく、加害者本人が謝罪しているか、被害者の処罰感情がどうかという点が見られます。保険会社の担当者は民事上の賠償額を交渉する立場であり、宥恕文言の取得までは行いません。そこで、保険による賠償とは別に、弁護人が見舞いと謝罪の機会を調整し、必要に応じて見舞金や宥恕文言のある書面を用意することになります。
個人賠償責任保険は刑事事件で使えますか
使える場面は限られます。個人賠償責任保険は、火災保険や自動車保険の特約、クレジットカードの付帯サービスとして加入していることが多く、日常生活における偶然な事故で他人に損害を与えた場合を対象とします。自転車で歩行者にぶつかった、店舗の商品を誤って壊したといった過失の事故が典型です。これに対し、暴行、傷害、窃盗、器物損壊のような故意の行為は、約款上の免責事由に該当し、保険金は支払われないのが通常です。まず保険証券と約款を確認し、対象となる事故かどうかを判断します。使えない場合は、自己資金、家族からの援助、勤務先からの前借りなど、現実的な調達手段を早期に検討します。
保険で賠償できる場合、示談交渉は誰が行いますか
民事の賠償額については保険会社が交渉し、刑事処分に向けた対応は弁護人が担うという役割分担になります。保険会社の示談は、治療が終了して損害額が確定してから行われることが多く、数か月を要します。他方、刑事処分の判断は勾留期間や捜査の進行に沿って早く進みますので、時間軸が合いません。そこで、刑事手続では、賠償が保険により確実に行われる見込みであることを示す書面を取り付け、加えて当面の見舞金を支払うといった形で、被害の回復に向けた姿勢を示すことになります。この点を整理せずに保険会社任せにすると、処分の段階で被害弁償の努力が伝わらないまま終わることがあります。
過失の事故と在留資格の関係はどうなりますか
過失犯であっても在留への影響が生じ得ますので、油断はできません。過失運転致傷(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)は、入管法24条4号の2が列挙する刑法上の罪には含まれないと解されますが、1年を超える拘禁刑に処せられた場合には同法24条4号リが問題になります。全部の執行猶予が付いた場合は同号から除かれます。また、無免許運転や飲酒運転を伴う場合は罪名も評価も変わります。加えて、在留期間の更新審査では、事件の内容と反省、賠償の完了状況が素行の評価に反映されます。保険で賠償が済んでいることは、この場面で有力な説明材料になります。
よくあるご質問
保険で全額賠償すれば不起訴になりますか
賠償の完了は有利な事情ですが、それだけで結論が決まるものではありません。被害の程度、過失の内容、被害者の処罰感情、前歴の有無が総合的に判断されます。保険による賠償に加えて、本人の謝罪と再発防止の具体策を示すことが、起訴猶予に向けた実務的な工夫になります。
保険会社の示談書をそのまま検察官に出せますか
提出は可能ですが、内容は民事の賠償に関する合意にとどまり、宥恕文言や処罰を求めない旨の記載は通常ありません。刑事処分に向けては、被害者の意向を別に確認し、必要な記載のある書面を用意するほうが、処分の判断に届く資料になります。見舞金の授受があれば、その記録も添えます。
加入している保険が分からない場合はどうしますか
自動車保険、火災保険、クレジットカードの付帯保険、勤務先の団体保険を順に確認します。家族が契約者である保険の特約で、同居の親族が被保険者に含まれている場合もあります。契約内容の確認には時間がかかりますので、事件の初期段階で並行して調べ始めてください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 盗撮被害の事案において、刑事告訴と示談交渉を担当し、300万円の慰謝料の支払を内容とする示談を成立させた事例(被害者代理人)。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------