親告罪と非親告罪で示談の意味はどう違うのか。告訴取消しと不起訴の関係
2026/08/13
示談の効果は、罪名が親告罪かどうかで質的に異なります。親告罪は告訴がなければ起訴できない犯罪ですから、示談の中で告訴を取り消してもらえれば、検察官は起訴できなくなります。これに対し非親告罪では、示談が成立しても起訴の可否は検察官の判断に委ねられ、示談は起訴猶予を導く有力な事情という位置付けにとどまります。外国籍の方にとっては、この違いが在留資格の帰趨にも直結します。まず自分の事件がどちらなのかを確認することが、方針を決める出発点になります。
本記事の要点
- 親告罪では告訴の取消しにより公訴を提起できなくなり、示談が結論を決めることがあります。
- 非親告罪では示談は起訴猶予の一事情であり、被害の重大性や前科によっては起訴されます。
- 性犯罪は2017年の刑法改正により非親告罪となり、示談の位置付けが変わりました。
- 起訴を回避できれば拘禁刑に処せられず、別表第一の在留資格の方は入管法24条4号の2を避けられます。
親告罪にはどのような犯罪がありますか
代表的なものとして、器物損壊(刑法261条。264条により親告罪)、名誉毀損および侮辱(同230条、231条。232条により親告罪)、私用文書等毀棄(同259条)、過失傷害(同209条)があります。また、親族間の窃盗や詐欺など一定の財産犯には、親族相盗例により告訴を要する場合があります(同244条2項、251条等)。これらは被害者の意思を尊重すべき類型であるため、告訴という手続が起訴の条件とされています。自分の事件がどれに当たるかは、逮捕状や勾留状に記載された罪名で確認できますが、同じ行為でも構成要件の選び方で罪名が変わることがありますので、弁護人による記録の確認が確実です。
告訴の取消しにはどのような制限がありますか
告訴の取消しは公訴の提起前に行う必要があり(刑事訴訟法237条1項)、取り消した後に同じ事件について再び告訴することはできません(同条2項)。したがって、被害者にとっては取消しが最終的な判断になり、慎重になるのが通常です。示談交渉では、この不可逆性を前提に、被害弁償の完了、再発防止の具体策、当事者間の接触禁止といった条件を整えて、被害者が安心して取消しを選べる状況を作ることが実際の作業になります。取消しは書面で捜査機関に提出する扱いが一般的で、示談書とは別に取消書を作成します。期限の管理も重要で、処分が近い事件では日単位の調整が必要になります。
非親告罪で示談する意味はどこにありますか
起訴猶予(刑事訴訟法248条)を得るための最も有力な事情になる点にあります。傷害、暴行、窃盗、詐欺、住居侵入といった犯罪は非親告罪ですので、被害届が取り下げられても検察官は起訴できます。しかし実務では、被害が回復され、被害者が処罰を求めていない事案について、初犯であれば起訴猶予とする判断は珍しくありません。したがって、示談の内容は金額だけでなく、被害者が納得した経緯を説明できる形に整えることが重要です。また、起訴された場合でも、示談は量刑上の情状として働き、執行猶予の判断に影響します。示談に向けた努力は無駄になりません。
罪名の違いは在留資格にどう跳ね返りますか
起訴に至るかどうかが、別表第一の在留資格の方にとって決定的です。入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格をもって在留する者が、窃盗、詐欺、傷害、住居侵入、偽造等の一定の罪により拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由としており、執行猶予が付いても該当します。したがって、親告罪で告訴を取り消してもらえた場合や、非親告罪で起訴猶予を得られた場合には、この規定の適用を受けません。他方、永住者や定住者、日本人の配偶者等の別表第二の在留資格の方には同号の適用がなく、1年を超える拘禁刑の実刑を定める24条4号リ等が問題になります。前提となる在留資格の確認が欠かせません。
よくあるご質問
性犯罪は示談しても起訴されますか
2017年の刑法改正で強制性交等罪や強制わいせつ罪は非親告罪となりましたので、告訴の取消しによって起訴を止めることはできません。もっとも、被害者が処罰を望まない意思を示していることは起訴猶予や量刑で考慮されます。示談の可否と方法は、被害者の心情に配慮しながら弁護人が慎重に進める領域です。
被害届の取下げと告訴の取消しは同じですか
異なります。被害届は捜査の端緒にすぎず、取り下げても検察官の起訴権限に影響しません。告訴は親告罪では訴訟条件となり、取消しに法的効果があります。示談書を作る際は、罪名に応じてどちらの手続を求めるのかを明確にしておく必要があります。取消しの時期にも制限がある点に留意してください。
親族間の窃盗でも告訴が必要ですか
同居していない親族との間の窃盗などでは、親族相盗例により告訴が必要とされる場合があります(刑法244条2項)。もっとも、配偶者や同居の親族との関係では刑が免除される場合もあり、身分関係の認定が結論を左右します。戸籍や在留カードで身分関係を確認したうえで方針を決めます。
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舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 盗撮被害の事案において、刑事告訴と示談交渉を担当し、300万円の慰謝料の支払を内容とする示談を成立させた事例(被害者代理人)。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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