示談とは何か 中国の刑事和解との違いと日本での実際の進め方と注意点
2026/08/13
日本の刑事事件でいう示談は、法律に定められた制度ではなく、被害者と加害者との間で結ばれる民事上の合意です。損害の賠償と紛争の終局的な解決を内容とし、多くの場合、加害者を許すという宥恕の意思が併せて記載されます。この合意が刑事手続の中で重い意味を持つのは、検察官の起訴不起訴の判断や、裁判所の量刑判断において、被害回復と被害感情が中心的な考慮要素とされているからです。本稿では、中国の刑事和解との違いを踏まえながら、日本での示談の実際の進め方を整理します。
本記事の要点
- 示談は法定の制度ではなく、被害者との間の民事上の合意であり、宥恕の意思の記載が重要な意味を持ちます。
- 中国の刑事訴訟法の当事者和解の手続は適用範囲が法定されていますが、日本の示談にはそのような限定がありません。
- 親告罪では告訴の取消しにより公訴を提起できなくなり、非親告罪でも不起訴の重要な考慮要素になります。
- 外国籍の方にとっては、示談の成否が不起訴を通じて在留資格の帰趨に直結します。
示談とはどのような合意ですか
被害者と加害者が、被害の弁償とその事件についての解決を確認する民事上の合意です。示談書には、支払う金額と方法、当該事件について今後互いに請求をしないという清算条項のほか、被害者が加害者を許す趣旨の宥恕条項、加害者の処罰を望まない旨の記載が置かれることがあります。法律上の制度ではないため、内容は当事者の合意によって定まりますが、刑事手続での意味は条項の書き方によって大きく変わります。とりわけ、単に金銭を受け取ったという記載にとどまるか、処罰を望まないという意思まで明示されるかは、検察官の判断に与える影響が異なります。
中国の刑事和解とはどこが違いますか
適用範囲の定め方が異なります。中国の刑事訴訟法は、当事者和解の公訴事件の手続について規定を置き、民間の紛争に起因する一定の罪で、一定の刑を超えない事件などに適用範囲を限定し、和解が成立した場合には寛大な処分を行うことができるとしています。これに対して、日本の示談は法定の制度ではありませんから、罪名や法定刑による形式的な適用範囲の限定はありません。もっとも、示談が成立すれば必ず不起訴になるというものでもなく、事案の重大性、常習性、社会的な影響なども併せて判断されます。制度の形は違っても、被害回復が重視される点は共通しています。
示談が成立するとどうなりますか
処分と量刑の双方に影響します。親告罪では、告訴が取り消されれば公訴を提起することができなくなりますので、示談に伴う告訴の取消しが決定的な意味を持ちます。非親告罪であっても、被害が回復され、被害者が処罰を望んでいないことは、起訴猶予の判断における重要な考慮要素です。起訴された後であっても、示談の成立は量刑上有利に働き、執行猶予の可否にも影響します。ただし、被害者の意思は変わり得るものであり、示談交渉の過程で被害感情が悪化することもありますので、交渉の進め方と申入れの時期の見極めが、結論を大きく左右します。
外国籍の方にとっての意味は何ですか
在留資格の帰趨に直結します。別表第一の在留資格の方は、窃盗、詐欺、傷害、住居侵入といった罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いても入管法24条4号の2により退去強制事由に該当し得ます。つまり、示談が成立して不起訴となるか、起訴されて有罪判決を受けるかによって、日本で生活を続けられるかどうかが分かれます。この意味で、外国籍の方の示談交渉は、量刑を軽くするための活動ではなく、在留を守るための活動として位置付けるべきものです。時間的な余裕がないことも多いため、逮捕直後からの弁護人選任が結論を左右します。
よくあるご質問
示談書には何を書けばよいですか
支払う金額と方法、当該事件について今後請求をしないという清算条項に加え、宥恕の意思や処罰を望まない旨の記載があるかどうかが重要です。書き方によって刑事手続での意味が変わりますので、弁護人が原案を作成し、被害者側の意向も踏まえて調整することをお勧めします。定型書式の流用は危険です。
示談が成立すれば必ず不起訴になりますか
必ずではありません。事案の重大性、前科前歴の有無、常習性なども考慮されます。もっとも、被害が回復され宥恕が得られていることは、起訴猶予の判断で大きな意味を持ちますので、可能な限り早期の成立を目指すべきです。処分が決まってからでは間に合わないことがあります。
本人や家族が直接被害者に連絡してもよいですか
避けるべきです。直接の接触は、被害者の不安を強め、罪証隠滅を疑われる原因にもなります。連絡は弁護人を通じて行うのが原則であり、被害者の連絡先も検察官を介して弁護人が取得することになります。ご家族が独自に接触することも避けてください。かえって不利に働きます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 盗撮被害の事案において、刑事告訴と示談交渉を担当し、300万円の慰謝料の支払を内容とする示談を成立させた事例(被害者代理人)。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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