日本の判決文は中国でどう使われるか 証明書の取得と認証の実務
2026/08/13
日本で刑事裁判を受けた方から、判決の内容が中国でどう扱われるのかというご質問をいただくことがあります。中国の刑法は、国外で確定判決を受けた場合であっても、なお中国の法律により追及することができるとしつつ、外国で既に刑の執行を受けたときは処罰を免除し、又は軽減することができると定めています。つまり、日本での判決は中国での追及を当然に遮断するものではありません。本稿では、日本の判決文や関連証明の取得方法、中国で用いる際の認証手続、そして在留への影響を整理します。
本記事の要点
- 中国の刑法は、外国で確定判決を受けた場合でも中国法により追及し得るとし、既に刑の執行を受けたときは免除又は軽減ができると定めています。
- 日本の判決謄本や確定証明書は、裁判所に対する申請により取得できます。
- 中国で公文書を用いる際の認証は、2023年11月にハーグ条約が中国について発効し、アポスティーユによる方法が利用できるようになりました。
- 翻訳の正確性は結論を左右するため、法律用語の訳し方には特に注意が必要です。
日本の判決は中国での処罰を妨げますか
当然には妨げません。中国の刑法は、中国の領域外で罪を犯した者について、外国で裁判を受けた場合であってもなお中国の法律により責任を追及することができるとしたうえで、外国で既に刑罰の執行を受けたときは、処罰を免除し、又は軽減することができると定めています。ここでいう免除や軽減は、裁量的なものとして規定されている点に注意が必要です。したがって、日本で服役を終えたという事実は、中国での追及を確実に遮断するものではなく、量刑上の考慮事由として位置付けられるにとどまります。日本での手続がどのように終わったのかを正確に示す資料を残しておくことが、実際上の防御になります。
判決文や証明書はどのように取得しますか
判決を言い渡した裁判所に対する申請により取得します。刑事事件では、判決書の謄本のほか、判決が確定したことを示す確定証明書、刑の執行が終了したことに関する証明などが必要になる場面があります。不起訴となった事件については、検察官に対する請求により不起訴処分告知書の交付を受けることが考えられます。いずれも本人又は代理人が請求することになりますので、帰国後に必要となる可能性がある場合は、日本を離れる前に取得しておくことをお勧めします。後日、国外から取り寄せようとすると、委任状の認証や郵送の手配に時間を要し、必要な場面に間に合わないことがあります。
中国で使うための認証手続はどうなりますか
アポスティーユによる方法が利用できます。外国公文書の認証を不要とするハーグ条約は、2023年11月に中国について効力を生じており、日本も締約国です。これにより、従前の領事認証に代えて、日本の外務省が付与するアポスティーユによって、中国の機関で使用できる形式を整えることが可能になりました。もっとも、提出先の機関が具体的にどのような書式や翻訳を求めるかは事案によって異なりますので、事前に確認することが望まれます。公証手続や翻訳の要否を含め、必要な準備は提出先ごとに変わりますから、余裕をもったスケジュールを組んでください。
翻訳と説明で気を付ける点は何ですか
法律用語の対応関係を正確に押さえることが不可欠です。日本の拘禁刑、執行猶予、不起訴処分といった概念は、中国法の有期徒刑、緩刑、不起訴と近い面がありますが、要件も効果も同一ではありません。とりわけ起訴猶予は、嫌疑を認めながら訴追しないという日本独自の運用であり、単に不起訴と訳すだけでは実質が伝わらないことがあります。翻訳文には条文の引用を添え、制度の位置付けを注記しておくと、誤解を避けやすくなります。日本の在留手続でも同様の資料が求められることがありますので、日中双方で使える形に整えておくと効率的です。
よくあるご質問
日本で服役しました。中国でも処罰されますか
中国の刑法は、外国で刑の執行を受けた場合に処罰の免除又は軽減ができると定めており、いずれも裁量的な規定です。処罰されないと断定はできません。判決書や刑の執行に関する証明を確保し、中国側の弁護士とも相談することをお勧めします。日本での手続の経過を時系列で整理しておくと有用です。
判決書の謄本は帰国後でも取り寄せられますか
制度上は可能ですが、委任状の認証や送付に時間を要します。実務上は、出国前に必要と思われる証明類をまとめて取得しておく方が確実です。どの書類が必要かは使う場面によりますので、想定される用途を整理したうえで事前にご相談ください。訳文の準備まで考えると相応の余裕が要ります。
領事認証とアポスティーユのどちらが必要ですか
ハーグ条約が中国について発効した後は、アポスティーユによる方法が利用できます。ただし提出先の求める形式は個別に異なりますので、事前に提出先へ確認したうえで手配することが確実です。翻訳や公証の要否も併せて確認しておくと、手戻りを防ぐことができ、結果として早く整います。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------