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日本と中国の間に犯罪人引渡条約はあるか 刑事共助との違いと在留への影響

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日本と中国の間に犯罪人引渡条約はあるか 刑事共助との違いと在留への影響

日本と中国の間に犯罪人引渡条約はあるか 刑事共助との違いと在留への影響

2026/08/13

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日本と中国との間には、犯罪人引渡しに関する条約は締結されていません。他方で、刑事に関する共助の条約は2008年に発効しており、証拠の収集や書類の送達といった捜査協力は条約の枠組みで日常的に行われています。この二つを混同したまま、中国で立件されたと聞いて慌てて帰国したり、逆に日本にいれば一切の追及を受けないと考えたりする方が少なくありません。本稿では、引渡しと共助の区別、条約がない場合に日本の逃亡犯罪人引渡法がどう働くか、そして日本で刑事事件になった場合に在留資格へどのような影響が及ぶかを、刑事手続と入管手続の両面から整理します。

本記事の要点

  • 日本が犯罪人引渡条約を結んでいるのはアメリカと韓国の二か国のみで、中国との間に引渡条約はありません。
  • 引渡条約はなくても日中刑事共助条約があり、証拠収集や書類送達などの捜査協力は中央当局を通じて行われます。
  • 条約がない国への引渡しも逃亡犯罪人引渡法により相互主義の保証があれば理論上は可能ですが、東京高等裁判所の審査など重い手続を要します。
  • 引渡しの可否とは別に、日本で刑事処分を受ければ入管法24条各号の退去強制事由に直結するため、まず不起訴処分の獲得を目指します。

日中間に犯罪人引渡条約はありますか

締結されていません。日本が犯罪人引渡しに関する二国間条約を結んでいるのは、アメリカ合衆国と大韓民国の二か国のみで、中国(中華人民共和国)との間には引渡条約がありません。したがって、中国の捜査機関が日本に滞在する方の身柄を求めても、条約上の請求権に基づいて日本政府に引渡しを義務付けることはできません。もっとも、条約がないことは「絶対に引き渡されない」ことを意味しません。日本には逃亡犯罪人引渡法という国内法があり、条約がない相手国からの請求でも、その国が同種の場合に日本の請求に応じる旨の保証、すなわち相互主義の保証をすれば、審査の対象にはなります。条約の有無は請求の入口の問題であり、身柄の安全を保証する結論ではない、という理解が出発点になります。

条約がない場合、引渡しはどのような手続で判断されますか

法務大臣の判断と東京高等裁判所の審査という二段構えで進みます。逃亡犯罪人引渡法は、請求を受けた法務大臣が東京高等検察庁検事長に審査請求を命じ、東京高等裁判所が引渡しできる場合に当たるかを決定し、これを踏まえて法務大臣が引渡命令を出すという流れを定めています。同法は引渡しを制限する事由も列挙しており、請求に係る犯罪が政治犯罪であるとき、日本の法令によれば罰することができない行為であるとき(双方可罰性の欠如)、法定刑が一定の重さに達しないときなどは引き渡すことができません。中国からの請求については、死刑が科される可能性や手続保障のあり方も現実の判断要素となります。公表されている限り、中国への引渡しが実行された例は乏しく、実務上のハードルは高いといえます。

引渡しがなくても捜査協力は行われるのですか

行われます。ここが最も誤解されやすい点です。日中間には刑事に関する共助の条約があり、両国の中央当局を経由して、供述の録取、書類や記録の提供、物の所在の特定、書類の送達などが要請されます。日本側の窓口は国際捜査共助等に関する法律の枠組みで整理され、政治犯罪に関する要請や、日本の法令に照らして犯罪とならない行為についての要請は拒む建て付けになっています。身柄を送る引渡しは行われなくても、日本国内で任意の事情聴取を受けたり、取引記録が中国側へ提供されたりすることはあり得ます。任意の聴取に応じるかどうかは、その供述が中国の刑事手続でどう使われるかまで見据えて判断すべきで、応じる前に弁護人に相談することをお勧めします。

日本での刑事事件は在留資格にどう影響しますか

引渡しの議論とは切り離して、日本での処分そのものが在留を左右します。技術・人文知識・国際業務や留学など別表第一の在留資格の方は、窃盗、詐欺、傷害、住居侵入、偽造といった罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いても入管法24条4号の2により退去強制事由に当たります。薬物事犯は同条4号チにより、やはり執行猶予でも該当します。永住者や日本人の配偶者等など別表第二の方には4号の2の適用がなく、同条4号リの1年を超える拘禁刑(全部執行猶予は除かれます)が基準になります。この差が結論を大きく分けるため、まず起訴前の段階で不起訴処分を目指し、有罪を前提とした情状活動に流れないことが重要です。

よくあるご質問

中国で指名手配されていますが、日本にいれば身柄を送られませんか

日中間に引渡条約はないため、条約に基づく引渡請求はできません。ただし逃亡犯罪人引渡法による請求の余地はあり、また日本国内で別の事件として捜査が始まる可能性もあります。安全と断定せず、日本での在留資格の維持と併せて、早い段階で弁護人に相談してください。渡航や転職の予定がある場合は、事前の確認が特に重要です。

中国の警察から日本の家族に連絡が来ました。応じる義務はありますか

中国の捜査機関が日本国内で直接強制力を行使することはできず、任意の連絡に応じる法的義務はありません。正式なルートは共助条約に基づく要請です。応答の内容が後の刑事手続で使われることがあるため、回答前に弁護人を通し、応じる範囲を検討することをお勧めします。ご家族だけで対応しないでください。

日本で不起訴になれば、中国での立件も終わりますか

別の問題です。日本の不起訴処分は中国の捜査を終わらせるものではありません。もっとも、日本で前科が付かないことは在留資格の維持に決定的で、入管法24条各号の退去強制事由を回避できます。両国の手続は別個のものですので、それぞれについて方針を立て、並行して対応する必要があります。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。

当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。

これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。

  • 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
  • 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
  • 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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