日本で服役した後、中国に帰国してからの生活|上陸拒否期間と再来日の可能性
2026/08/13
日本で実刑判決を受けて服役された方は、刑期の満了とともに退去強制の手続に移り、多くの場合そのまま帰国することになります。ご本人やご家族から、帰国後の生活はどうなるのか、日本に残した家族とはどう連絡を取るのか、いつになれば再び日本に来られるのかというご質問をいただきます。本稿では、服役から帰国までの手続の流れ、上陸拒否期間の考え方、日本に残るご家族との関係の維持、そして将来の再来日を考える際の現実的な留意点を、事実に即して整理します。
本記事の要点
- 刑期の満了または仮釈放の日に、刑事施設から入管へ身柄が引き継がれ、退去強制の手続が進むのが通例です。
- 退去強制を受けた場合、入管法5条1項9号により、1回目は5年、2回目以降は10年の上陸拒否期間が生じます。
- 薬物に関する事犯では期間の定めなく上陸を拒否され、時の経過によって当然に解消されるものではありません。
- 上陸拒否期間の経過後も自動的に入国できるわけではなく、改めて在留資格該当性の審査を受けることになります。
刑期が終わった後はどのような手続になりますか
刑事施設から入管へ身柄が引き継がれ、退去強制の手続が進むのが通例です。退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当の理由があると判断されれば、収容令書に基づき収容され、違反審査、口頭審理、異議の申出という三段階の手続を経ます。この過程で、入管法50条による在留特別許可を求めることも可能ですが、実刑判決を受けた事案では判断が厳しくなる傾向があります。退去強制令書が発付されれば、送還のための手続が進みます。渡航文書がない場合には、本国の領事機関に発給を求めることになり、その分の時間を要します。この期間中は収容が続くことがあり、健康上の事情や家族の状況によっては、仮放免(入管法54条)や監理措置の枠組みを検討します。
帰国後、いつから日本に来られますか
上陸拒否期間の経過が最初の関門になります。入管法5条1項9号は、退去強制を受けた方について、退去した日から起算して、1回目であれば5年、2回目以降であれば10年の間、上陸を拒否する旨を定めています。出国命令による出国であれば1年です。ただし、薬物に関する法令違反で刑に処せられた方は、同項5号により、刑の軽重や期間の経過を問わず上陸拒否の対象となります。また、1年以上の拘禁刑に処せられたことがある方は、同項4号にも該当し得ます。したがって、期間が経過すれば当然に入国できるわけではありません。期間経過後も、改めて在留資格該当性の審査を受け、上陸拒否事由に該当する場合には、入管法12条の上陸特別許可を求めることになります。
日本に残る家族との関係はどうなりますか
婚姻関係や親子関係は、退去強制によって当然に失われるものではありません。もっとも、物理的な別離が長期に及ぶため、関係の実質をどう維持するかが重要になります。将来的に上陸特別許可や在留資格の再取得を検討する場合、別離の期間中も継続して連絡を取り合っていたこと、生活費の送金を続けていたこと、お子さんの養育に関与していたことといった事実が、実質的な家族関係の継続を示す資料となります。したがって、通話や送金の記録は、意識的に残しておくことをお勧めします。日本に残るご家族の在留資格については、ご本人の退去強制によって当然に取り消されるものではありませんが、資格の種類によっては生計の維持等が問題となり得ますので、個別にご相談ください。
帰国後の生活で現実に問題となるのは何ですか
身分関係の手続と、就業の場面での説明です。まず、長期間日本にいた方は、中国国内での住民登録や各種手続の再開が必要となることがあり、必要書類の準備に時間を要します。次に、就業の場面では、空白期間の説明を求められることがあります。ここで、日本での処分の内容を客観的に示す書面があるかどうかで、対応の負担が大きく異なります。判決書の謄本や、不起訴となった事件についての不起訴処分告知書は、日本にいる間でなければ取得が難しいため、帰国前に確保しておくことが実務的です。中国国内での取扱いについては、断定的な説明ができませんので、必要に応じて中国の専門家にご確認いただくことをお勧めします。
よくあるご質問
上陸拒否期間はいつから数えますか
退去強制により退去した日を起算日として数えるのが原則です。出国の日付は退去強制令書の執行に関する記録によって確認されます。ご自身の起算日が不明な場合は、記録に基づいて確認する必要がありますので、資料をご準備ください。
期間が過ぎれば必ず入国できますか
そうではありません。期間経過後も、在留資格該当性や上陸のための条件は改めて審査されます。他の上陸拒否事由に該当する場合には、入管法12条の上陸特別許可を求めることになりますので、事前の準備が必要です。
帰国前に日本でしておくべきことはありますか
判決書の謄本や不起訴処分告知書の取得、家族との連絡手段の確認、未払いの税や社会保険の整理などが挙げられます。いずれも帰国後では対応が難しくなりますので、送還の日程が決まる前に着手してください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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