外国人の保釈が認められにくいのはなぜか|刑事訴訟法89条・90条と具体的な対策
2026/08/13
外国籍の被告人については、日本人の場合と比べて保釈が認められにくいと言われます。その理由の中心は、国外に生活基盤があるとみられ、逃亡のおそれが強く推認されやすいことにあります。もっとも、これは制度上の差別ではなく、疎明の仕方によって結論が変わり得る領域です。保釈が認められれば、勤務先との調整、被害弁償、家族との生活再建が可能になり、その後の在留手続の準備も進みます。本稿では、保釈が却下される典型的な理由と、これに対して具体的にどのような資料を積み上げるべきかを整理します。
本記事の要点
- 権利保釈の除外事由は刑事訴訟法89条に列挙され、罪証隠滅を疑うに足りる相当の理由や住居不定が中心的な争点になります。
- 89条の除外事由に当たる場合でも、90条の裁量保釈により、身柄拘束の不利益と逃亡のおそれを比較して許可される余地があります。
- 保釈条件として、住居の限定、旅券の預託、出頭の確約、身元引受人による監督が組み合わされるのが通例です。
- 保釈中に在留期間の更新や就労状況の整備を進めることが、判決後の入管手続に直結します。
保釈が却下される典型的な理由は何ですか
外国籍であること自体ではなく、逃亡と罪証隠滅の具体的なおそれが理由とされます。刑事訴訟法89条は権利保釈の除外事由を列挙し、実務では4号の罪証隠滅を疑うに足りる相当の理由と、5号の被害者等への加害のおそれ、そして住居不定が問題になります。外国籍の方については、これに加えて、本国に帰る動機があること、家族が国外にいること、渡航手段を有することが、逃亡のおそれの根拠として主張されます。ここで重要なのは、これらが抽象的な可能性の指摘にとどまっていないかを検証することです。実際には、日本に配偶者や子がおり、住宅ローンや賃貸契約があり、勤務先で長年働いてきた方も多く、生活基盤が日本にあることを具体的に示せば、推認の前提は揺らぎます。
どのような資料を用意すれば説得力が増しますか
生活基盤の所在と監督体制を、書面で具体化することが要点です。まず、住居については賃貸借契約書と住民票、同居家族の状況を示します。次に、就労については在職証明書、給与明細、勤務先の上司による誓約書を提出し、復職の見込みや出社の管理方法まで記載してもらいます。身元引受人については、同居の有無、日常の連絡方法、出頭に同行する意思を具体的に記した書面を用意します。日本に在留する親族が身元引受人になる場合は、在留資格と在留期間も明示します。さらに、旅券を弁護人に預けること、指定住居から離れる場合には事前に届け出ることを、条件として自ら申し出ます。抽象的な誓約ではなく、実行可能な管理方法を具体的に書くことが、判断を左右します。
保証金はどのくらい必要ですか
事案の内容と被告人の資力によって幅があり、一律の基準はありません。保証金は、出頭を確保するための担保であり、被告人にとって失うことが痛手となる程度の額が定められます。したがって、資力が乏しいことのみを理由に減額されるとは限らず、ご家族や勤務先の協力を得て準備することが一般的です。第三者が保証金を差し入れることも可能ですが、その場合は誰が負担したかが明確になるようにしておく必要があります。なお、保釈条件に違反すれば保釈は取り消され、保証金は没取され得ます。とりわけ、無断で指定住居を離れる、被害者や共犯者に接触するといった行為は、直ちに取消しの理由となりますので、保釈中の生活上の注意点を弁護人と共有しておくことが不可欠です。
保釈が在留資格の維持にどう役立ちますか
保釈中にできる準備が、判決後の帰趨を大きく変えます。身柄が解放されていれば、在留期間の更新申請を自ら行い、勤務先との関係を維持し、被害弁償の交渉を進めることができます。これらは判決の量刑に影響するだけでなく、仮に退去強制手続に進んだ場合の入管法50条の在留特別許可の判断においても、同条5項の考慮事情に沿った具体的な主張材料になります。逆に、勾留が続けば在留期間が満了し、不法残留(入管法24条2号の2)の状態が加わって、事態が複雑化します。判決言渡し後に入管の収容へ移行する可能性も見据え、保釈期間中に監理措置(入管法44条の2以下)を含む選択肢の準備を進めておくことが実務的です。
よくあるご質問
否認していると保釈は認められませんか
否認それ自体は除外事由ではありませんが、罪証隠滅のおそれが認められやすくなる傾向はあります。証拠が既に押収済みであること、関係者との接触手段がないことを具体的に示すことで、許可される事案は少なくありません。
家族が日本にいない場合、身元引受人はどうしますか
勤務先の上司、同僚、長年の知人、支援団体の関係者などが引受人となる例があります。重要なのは属性よりも、日常的に連絡が取れ、出頭を確保できる関係にあることを具体的に示せるかどうかです。
保釈中に働くことはできますか
在留資格の範囲内であれば可能です。ただし、資格外活動(入管法19条違反)にならないよう注意が必要で、就労内容と勤務先を事前に確認してください。保釈条件との整合も必要ですので、弁護人に相談してから始めてください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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