舟渡国際法律事務所

日本で処罰された後、中国に帰国してから再び処罰されますか|中国刑法7条・10条の整理

お問い合わせはこちら

日本で処罰された後、中国に帰国してから再び処罰されますか|中国刑法7条・10条の整理

日本で処罰された後、中国に帰国してから再び処罰されますか|中国刑法7条・10条の整理

2026/08/13

この記事の中国語版はこちら(本文的中文版请点击这里)

日本で刑事事件になった中国籍の方から、判決を受けて帰国した後に中国でも処罰されるのかというご質問をよくいただきます。結論から申し上げると、中国刑法には自国民が国外で犯した罪について自国の刑法を適用する規定があり、理論上は二重に問われ得ます。もっとも、法定刑の上限や外国での服役の扱いについて明文の緩和規定があり、実際に再度立件される事案は限られます。本稿では、中国刑法7条と10条の枠組み、日本側の手続で何を残しておくべきか、そして退去強制と上陸拒否期間の関係を整理します。

本記事の要点

  • 中国刑法7条は、中国公民が国外で犯した罪に中国刑法を適用するとしつつ、法定最高刑が3年以下の有期徒刑にとどまる罪は追及しないことができると定めています。
  • 中国刑法10条は、外国で裁判を受けた後でも中国刑法により追及し得るとしつつ、外国で既に刑罰を受けた場合は処罰を免除または軽減できると定めています。
  • 日本の判決書と刑の執行状況を示す資料は、中国側での取扱いを説明する際の基礎資料になりますので、確定後に取得しておくことが有用です。
  • 退去強制を受けた場合、入管法5条1項9号により上陸拒否期間が生じ、1回目は5年、2回目以降は10年、薬物事犯は無期限となります。

日本で判決を受けた行為について中国でも起訴されますか

理論上は可能ですが、実際に再度起訴される例は限られます。中国刑法7条1項は、中国公民が中国領域外で同法の定める罪を犯した場合に同法を適用するとしています。ただし同条2項は、同法の定める法定最高刑が3年以下の有期徒刑にとどまる罪については追及しないことができると定めており、比較的軽微な類型は事実上除外されます。さらに10条は、国外で犯した罪について外国の裁判を経た場合でも中国刑法により追及することを妨げないとしつつ、外国で既に刑罰の執行を受けたときは処罰を免除しまたは軽減することができると定めます。つまり、二重処罰の禁止を正面から定めるのではなく、量刑段階で調整する構造です。実務上は、中国国内に被害者や法益侵害の実質がない事案について、改めて立件される例は多くないと理解されています。

どのような類型で中国側の関心が高くなりますか

中国国内に被害者がいる場合や、中国の管理秩序そのものを害する類型では、中国側の関心が高くなります。たとえば、日本にいながら中国国内の被害者から金銭をだまし取った事案、中国国内の資金を違法に国外へ移した事案、旅券や身分証明資料の偽造に関わった事案などです。逆に、日本国内でのみ完結し、被害者も日本にいる万引きや傷害のような事案では、中国側が改めて刑事手続をとることは通常想定されません。もっとも、これは法律上追及できないという意味ではなく、運用としてそうなっているにとどまります。したがって、日本の刑事手続の段階から、行為地・被害者の所在・被害回復の状況を記録に残しておくことが、帰国後の説明において意味を持ちます。

日本側の手続では何を残しておくべきですか

判決書の謄本、刑の執行に関する資料、そして不起訴の場合は不起訴処分告知書を取得しておくことをお勧めします。不起訴処分告知書は、請求により検察庁から交付を受けられます。中国側の機関や勤務先から経緯の説明を求められた場合、これらの公的書面があるかないかで説明の負担がまったく異なります。また、起訴猶予と嫌疑不十分では意味が異なりますので、処分の理由が記載された書面を得ておくことが望ましいといえます。より根本的には、不起訴処分を獲得することが、日本での在留の維持と帰国後の不利益回避の双方にとって最善です。執行猶予付きの判決であっても、別表第一の在留資格の方は詐欺・窃盗・傷害・住居侵入・偽造等であれば入管法24条4号の2により退去強制事由に該当し、在留の面では救済になりません。

帰国後、再び日本に来ることはできますか

退去強制を受けたかどうかで大きく変わります。退去強制された場合、入管法5条1項9号により上陸拒否期間が生じ、退去強制歴が1回目であれば5年、2回目以降は10年、薬物に関する事犯では期間の定めなく上陸を拒否されます。出国命令による出国であれば1年です。加えて、日本を含む外国の法令に違反して1年以上の拘禁刑に処せられたことがある方は、入管法5条1項4号により、上陸拒否期間とは別に上陸を拒否され得ます。これらに該当する場合でも、入管法12条の法務大臣による上陸特別許可の余地は残りますが、判断は個別的で、家族関係や渡航目的の説明を丁寧に組み立てる必要があります。まずは退去強制自体を避ける、すなわち不起訴処分を得ることが決定的に重要です。

よくあるご質問

日本の判決は中国の公安機関に自動的に通知されますか

日本の裁判所が中国当局へ判決を自動通知する一般的な制度は設けられていません。もっとも、退去強制により旅券や渡航文書の発給を領事館に依頼する過程などで、事情が中国側に伝わることは現実にあり得ます。通知の有無を前提に判断せず、書面の準備をしておくことが安全です。

日本で執行猶予になった場合、中国では前科として扱われますか

中国刑法上の累犯の基礎となるのは中国の裁判所による判決であると一般に理解されており、外国判決が直ちに同様に扱われるわけではありません。ただし、就職や公職に関する場面での事実上の取扱いは別問題ですので、個別に確認する必要があります。

日本で服役した期間は中国での量刑で考慮されますか

中国刑法10条は、外国で既に刑罰を受けた場合に処罰を免除しまたは軽減することができると定めています。したがって、仮に中国で改めて処罰される場合でも、日本での服役期間は考慮の対象となります。服役証明などの資料を保管しておくことが有用です。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。

当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。

これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。

  • 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
  • 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
  • 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。

本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

この記事の中国語版はこちら(本文的中文版请点击这里)

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。