就労ビザ保持者が刑事事件を起こした場合|解雇・活動不行と更新の見通し
2026/08/13
技術・人文知識・国際業務などの就労資格で在留している方が刑事事件に関与した場合、問題は判決の内容だけにとどまりません。勾留による長期欠勤で解雇されれば、在留資格に応じた活動を行えなくなり、在留資格の取消しや更新不許可という形で在留の基礎が失われます。他方、不起訴を得て就労を継続できれば、在留を維持できる可能性は十分にあります。ここでは、雇用関係の維持、届出義務、更新審査における素行の評価という三つの観点から、実務的な対応を整理します。
本記事の要点
- 在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行わない状態は、入管法22条の4第1項5号の取消事由となり得る。
- 契約機関との契約終了や新たな契約の締結は、入管法19条の16により14日以内の届出を要する。
- 窃盗・詐欺・傷害等で拘禁刑に処せられれば、執行猶予でも入管法24条4号の2に該当し得る。
- 不起訴となっても、更新審査では素行が良好であるかという観点から事情説明が求められることがある。
逮捕されたことを会社に知られると解雇されますか
直ちに解雇が有効となるわけではありませんが、実際には退職に至る例が多く見られます。就業規則には、刑事事件により会社の信用を毀損した場合や、長期にわたり就労できない場合の懲戒規定が置かれているのが通常です。ただし、事件が業務と無関係であり、報道もされておらず、不起訴となった場合には、懲戒解雇の有効性が争われる余地もあります。実務的には、弁護人から会社に対して、事件の概要と見通し、復職の可能性について説明し、休職として扱ってもらえないかを協議することが有効です。雇用が維持されるか否かは、その後の在留資格の判断に直結するため、刑事弁護と並行して取り組むべき事項です。
退職した場合、在留資格はすぐに失われますか
退職により直ちに資格を失うわけではありませんが、放置すれば取消しの対象となります。入管法22条の4第1項5号は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行わないで在留している場合を取消事由としており、正当な理由があるときは除かれます。したがって、退職後は速やかに再就職活動を行い、その経過を記録しておくことが重要です。また、契約機関との契約が終了したときは、入管法19条の16に基づき14日以内に届け出る義務があります。この届出を怠ると、それ自体が不利な評価につながります。再就職先が決まった場合には、業務内容が在留資格に適合するかを確認し、必要に応じて就労資格証明書の交付を申請します。
有罪判決を受けたらどうなりますか
罪名と刑の種類により、退去強制事由に該当するかどうかが決まります。技術・人文知識・国際業務をはじめとする就労資格は別表第一に属するため、窃盗、詐欺、住居侵入、傷害、偽造等の罪で拘禁刑に処せられれば、執行猶予が付いていても入管法24条4号の2の対象となり得ます。薬物事犯であれば24条4号チにより、やはり執行猶予でも該当します。他方、罰金刑にとどまる場合や、これらの列挙罪に当たらない特別法犯の場合には、1年を超える実刑でない限り、直ちに退去強制事由とはなりません。どの罰条で処理されるかによって結論が変わるため、起訴前の段階から見通しを立てる必要があります。
更新申請の際は何を準備すべきですか
事件の経過と、生活・就労が安定していることを示す資料を揃えます。在留期間の更新は、在留資格該当性のほか、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産または技能があることなどを踏まえて判断されます。不起訴処分となった場合には、その旨の証明書、事件の経緯と再発防止の説明書、勤務先の在職証明書や上申書、納税や社会保険の履行を示す資料を添えることが有効です。有罪判決を受けたものの退去強制事由に該当しない場合も、同様に事情を説明します。事実を秘して申請することは、後に虚偽申請として在留資格の取消しの問題を生じさせるおそれがあるため、避けるべきです。
よくあるご質問
会社に知られずに手続を進められますか
難しい場合が多いといえます。長期の欠勤は説明が必要ですし、更新申請では勤務の実態を示す資料が求められます。むしろ早期に説明し、休職や復職の協議を進めるほうが、在留の維持という観点からは有利に働きます。会社への説明は、弁護人が内容と範囲を調整したうえで行うのが安全です。
罰金刑でも在留資格に影響しますか
罰金は拘禁刑ではないため、入管法24条4号の2や4号リには該当しません。ただし更新審査では素行の一要素として考慮され得ますので、経緯と再発防止の説明資料を添えて申請することが望ましいといえます。納税や社会保険の履行状況を示す資料も、あわせて準備しておいてください。
転職した場合の届出は必要ですか
必要です。契約機関との契約終了や新たな契約の締結について、入管法19条の16により14日以内の届出義務があります。届出を怠ると更新審査で不利に働くため、期限内に手続を行ってください。業務内容が在留資格に適合するかは、就労資格証明書で確認する方法もあります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
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- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
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