余罪の一括処理と示談の順序|自白の範囲をどう決めるかと在留への影響
2026/08/13
逮捕された事実のほかに同種の行為が複数ある場合、それらをどこまで捜査機関に説明し、どの順序で示談を進めるかは、処分の内容と在留の帰趨を左右する重要な判断です。すべてを認めて一括で処理してもらうことが有利に働く場面もあれば、立件されていない事実を自ら申告した結果、勾留が延び、起訴される罪名が増える場面もあります。ここでは、余罪の取扱いの基本的な考え方、併合罪の仕組み、示談の優先順位の決め方を、在留資格への影響とあわせて説明します。
本記事の要点
- 余罪をすべて自白するかどうかは、量刑上の利益と再逮捕のリスクを比較して決める。
- 複数の罪が同時に判決を受ける場合は併合罪として処理され、刑法47条により刑が加重される。
- 立件されない余罪も、起訴猶予の判断や量刑の情状として考慮されることがある。
- 起訴された罪名が入管法24条4号の2の列挙罪に含まれるかどうかが、在留の分岐点となる。
余罪はすべて話したほうがよいのですか
一律に有利とはいえず、事件の構造によって判断が分かれます。捜査機関が既に証拠を握っている余罪については、早期に事実を認めて弁償に着手するほうが、反省の姿勢として評価され、一括して起訴猶予や一つの判決で処理される可能性が高まります。他方、証拠がなく立件の見込みが乏しい事実まで自ら申告すると、新たな逮捕・勾留が生じ、身柄拘束が延び、起訴される事実が増えることになりかねません。判断の前提として、捜査機関がどこまで把握しているかを、弁護人が検察官との協議や証拠開示の状況から見極める必要があります。取調べの場で即断せず、いったん保留して弁護人と協議すると伝えることが賢明です。
併合罪として一括処理されるとどうなりますか
同時に判決を受ける複数の罪は、刑が一つにまとめられます。確定裁判を経ていない複数の罪は併合罪となり、有期の拘禁刑については、刑法47条により最も重い罪の刑の長期を1.5倍した範囲で処断されます。個々の罪の刑を単純に足し合わせるわけではないため、事実が増えたからといって刑が比例して重くなるとは限りません。この点から、余罪をまとめて一つの手続で処理してもらうことには、実務上の利点があります。もっとも、事実の数が多いこと自体は常習性を示す情状として評価されますし、処理が一括であっても、罪名が増えれば入管法上の退去強制事由に該当する罪名が含まれる可能性も高まります。
示談はどの被害者から進めるべきですか
処分に直結する事実の被害者を優先するのが基本です。すでに起訴されている、または起訴が見込まれる事実について示談が成立すれば、量刑に直接反映されます。他方、立件されていない事実の被害者と先に示談すると、その事実の存在を捜査機関に知らせる結果となる場合があり、順序の判断には注意を要します。被害者の連絡先は、通常は検察官を通じて弁護人限りで開示されるため、家族が独自に接触することは避けてください。また、被害感情が強い事案では、金額の提示より先に、経緯の説明と謝罪の意思を丁寧に伝えることが、交渉の可否を分けることがあります。
在留資格の観点からはどう考えますか
最終的にどの罪名で有罪となるかを見据えて、処理の設計を行う必要があります。別表第一の在留資格をもつ方の場合、窃盗や詐欺で拘禁刑に処せられれば、執行猶予でも入管法24条4号の2の退去強制事由に該当し得ます。したがって、余罪を一括処理することで刑が軽くなったとしても、当該罪名で有罪判決を受ける以上、在留の危険は残ります。この構造から、外国籍の方の弁護では、罪名を含めて不起訴を得ることの価値が、日本人の事件よりも大きくなります。処分の見通しを立てる段階で、量刑上の最適解と在留上の最適解が一致するとは限らないことを、依頼者と共有しておくことが不可欠です。
よくあるご質問
余罪を認めれば早く釈放されますか
必ずしもそうではありません。認めた事実について新たに逮捕・勾留がなされ、かえって拘束が延びることもあります。捜査機関の把握状況を踏まえた判断が必要ですので、取調べで即答せず、弁護人と協議する旨を伝えてください。捜査機関の把握範囲は、開示された証拠の内容からある程度推測することができます。
起訴されていない余罪も判決で考慮されますか
余罪を実質的に処罰する趣旨で量刑を重くすることは許されませんが、犯行の常習性や動機を示す情状として考慮されることはあります。したがって、弁償の状況を含めて、有利な事情も併せて主張することが重要です。弁償の履行状況を示す資料は、判決前に提出できるよう準備しておいてください。
一部の被害者としか示談できない場合はどうなりますか
示談が成立した事実については量刑上有利に働き、事案によってはその事実のみ不起訴となることもあります。全員と成立しないことが直ちに不利益となるわけではなく、資力に応じた誠実な対応を資料で示すことが大切です。資力に応じた按分による弁償計画を示すことも、有力な方法の一つです。
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舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 盗撮被害の事案において、刑事告訴と示談交渉を担当し、300万円の慰謝料の支払を内容とする示談を成立させた事例(被害者代理人)。
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- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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