犯罪収益等収受罪との関係|報酬を受け取った家族や名義人の刑事責任
2026/08/13
特殊詐欺の事件では、実行に関与した本人だけでなく、報酬を受け取った家族や、口座の名義を貸した知人が捜査の対象となることがあります。犯罪収益であることを知りながら収受した場合、組織的犯罪処罰法11条の犯罪収益等収受罪が成立し、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます。もっとも、収受した者が当該犯罪の共犯である場合には、詐欺罪の中で評価されるため、実際に問題となるのは共犯関係にない周囲の方です。ここでは、成立要件、家族が巻き込まれる典型的な場面、そして在留への影響を整理します。
本記事の要点
- 犯罪収益であることを知って収受すれば、組織的犯罪処罰法11条により3年以下の拘禁刑等に処せられます。
- 当該犯罪の共犯である場合は詐欺罪の中で評価され、収受罪は別に成立しないのが通例です。
- 口座の名義を貸した行為は、収受罪のほか、口座の不正利用に関する法令違反も問題となり得ます。
- 収受罪は特別法犯であり入管法24条4号の2の対象外ですが、更新審査の素行要件では明確に不利に働きます。
どのような場合に成立しますか
組織的犯罪処罰法11条は、情を知って犯罪収益等を収受した者を処罰します。中心的な要件は、受け取った金銭等が犯罪により得られたものであるとの認識です。法令上の義務の履行として受け取った場合や、相当な対価を伴う取引による場合には除外規定が働きますが、名目上の取引を装っただけでは除外されません。実務で問題となるのは、家族が送金を受けていた場合、知人が現金の保管を頼まれた場合、事業者が実体のない役務の対価として受け取った場合です。認識の有無は、送金額の不自然さ、送金の頻度、資金の使途、送金者との関係、説明された名目の合理性から判断されます。したがって、受領時の説明内容の記録が重要になります。
口座を貸した場合はどうなりますか
結論として、複数の責任が同時に問題となります。他人に口座を譲渡・貸与する行為自体が、金融機関との約定違反にとどまらず、犯罪利用預金口座に関する法令違反として立件され得ます。その口座に詐欺被害金が入金され、これを引き出して渡していれば、犯罪収益等収受罪や、事案によっては詐欺の幇助が問題となります。中国籍の方の事案では、帰国予定の留学生が知人に口座を譲るという形態が典型です。安易に応じた結果、帰国後に日本の捜査機関から出頭を求められ、再入国の際に問題が生じる例もあります。既に口座を渡してしまった場合には、速やかに金融機関へ届け出て、経緯を記録に残すことが被害拡大の防止につながります。
家族が受け取っていた場合はどうなりますか
家族であることを理由に免責される規定はありません。したがって、送金の性質を知りながら受け取り、生活費として費消していた場合には、収受罪が成立する余地があります。もっとも、実際には、送金の名目を説明されておらず、通常の仕送りと理解していた例も多く、認識の有無が決定的な争点となります。この場合、送金の頻度と金額が従前と比べて不自然に増えていないか、送金元が本人以外の第三者名義でなかったか、資金の使途に隠匿の工作がなかったかが検討されます。捜査が家族に及ぶ場合には、本人と家族で利害が対立する可能性がありますので、それぞれ別の弁護人が対応すべき場面があることにも留意が必要です。
在留にはどう影響しますか
犯罪収益等収受罪は特別法犯であるため、入管法24条4号の2の対象とはならず、別表第一の在留資格をお持ちの方でも、執行猶予付き判決のみを理由に同号に該当するものではありません。もっとも、1年を超える実刑となれば同条4号リの問題が生じます。実務上より現実的なのは、在留期間更新の素行要件における不利益と、家族滞在や留学の在留資格における活動実態の審査です。加えて、口座の譲渡が発覚した場合、在留資格取消(入管法22条の4)の検討対象となる可能性も否定できません。刑事処分の見通しと並行して、更新申請の時期と提出資料の準備を進めることが現実的な対応となります。
よくあるご質問
仕送りだと思って受け取っていました。罪になりますか。
犯罪収益であるとの認識がなければ収受罪は成立しません。争点は認識の有無ですので、送金の名目としてどのような説明を受けていたか、金額や頻度に変化があったかを、記録に基づいて具体的に説明することが重要です。送金元の名義が本人以外であった場合には、その点の説明も準備しておくべきです。
帰国前に口座を知人に譲りました。今からできることはありますか。
速やかに金融機関へ連絡して口座を凍結し、譲渡の経緯を記録に残すことが重要です。既に不正利用されている場合でも、自主的な申告は責任の評価に影響します。日本の捜査が及ぶ可能性を含め、早期にご相談ください。譲渡先とのやり取りや、対価を受け取ったかどうかも、重要な事実となります。
収受した金額を返還すれば不起訴になりますか。
返還は有利な事情ですが、それだけで不起訴が確約されるわけではありません。被害者への被害回復に結び付く形で返還し、認識の程度と関与の限定性を客観資料で示すことが、処分の判断において重要になります。返還の相手方を誤ると被害回復につながりませんので、弁護人を通じて行ってください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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