偽証罪で取調べを受けたら|刑法169条の成立要件と自白による減免、在留への影響
2026/08/13
裁判で証人として宣誓したうえ、自分の記憶に反する内容を述べると、偽証罪(刑法169条)に問われることがあります。法定刑は3月以上10年以下の拘禁刑で、罰金刑の定めがありません。中国籍の方の場合、知人や勤務先の関係者から証言を頼まれ、頼まれた筋書きに沿って話した結果、後日ご自身が被疑者として取調べを受ける例が見られます。偽証罪は、証言の内容が客観的真実と一致するかどうかではなく、記憶に反するかどうかで判断される点に特徴があります。本稿では、成立要件、裁判確定前の自白による刑の減免、そして在留資格への波及を整理します。
本記事の要点
- 偽証罪は「客観的な嘘」ではなく「記憶に反する陳述」を処罰するため、記憶の内容そのものが最大の争点になります。
- 法定刑に罰金がなく、起訴されれば拘禁刑の判断となるため、起訴前の不起訴獲得が実務上の最優先目標です。
- 偽証した事件の裁判が確定する前に自白すれば、刑の減軽または免除を受けられる余地があります(刑法170条)。
- 偽証罪は入管法24条4号の2が列挙する章の罪ではありませんが、1年を超える実刑となれば同条4号リの退去強制事由に当たり得ます。
偽証罪はどのような場合に成立しますか
偽証罪が成立するのは、法律により宣誓した証人が、自分の記憶に反する陳述をした場合です(刑法169条)。ここで重要なのは、述べた内容が結果として真実であっても、記憶に反していれば成立し得るという点です。逆に、記憶どおりに述べた結果それが客観的事実と食い違っていても、偽証にはなりません。したがって弁護活動の中心は、当時どこまで記憶していたか、記憶が曖昧であった部分をどう表現したかという、供述の質の検討になります。また、宣誓を経ていない参考人としての警察・検察での供述は偽証罪の対象外であり、この場合は犯人隠避罪(刑法103条)や証拠隠滅罪(同104条)が別途問題となるにとどまります。捜査機関がどの罪名で立件しようとしているのかを早期に把握することが、方針決定の出発点になります。
証言を頼まれただけの人も処罰されますか
結論として、依頼した側は偽証教唆(刑法61条、169条)として、証言した本人と同等かそれ以上に重く扱われることがあります。実務では、依頼のやり取りが残る通信履歴や、証言前の打合せの状況が重視されます。他方、依頼を受けた側も、断りきれなかったという事情だけでは責任を免れません。もっとも、依頼者との関係、報酬の有無、証言が裁判の結論に及ぼした影響の程度は、起訴・不起訴の判断や量刑で考慮されます。日本語での証言に不安があり、通訳を介した尋問で意図と異なる訳出がされた可能性がある場合には、公判調書や録音の確認を通じて、そもそも記憶に反する陳述をしたといえるのかを争う余地があります。この点は中国語話者の事件で見落とされやすい重要な防御線です。
自白すれば刑は軽くなりますか
偽証した事件の裁判が確定する前、または懲戒処分が行われる前に自白したときは、刑を減軽または免除することができます(刑法170条)。これは他の犯罪類型にはあまり見られない有利な規定であり、事案によっては不起訴処分に至る現実的な根拠となります。ただし、自白のタイミング、内容の一貫性、真の事実関係を明らかにする姿勢が伴わなければ、規定の趣旨に沿った評価は得られません。自白は関係する別事件の帰趨にも影響しますので、どの範囲で、どの時点で、どのような形式で述べるかは、必ず弁護人と協議したうえで決める必要があります。安易に「全部認めます」と述べることが、かえって共犯関係を広く認定される結果につながる場合もあります。
在留資格にはどのような影響がありますか
偽証罪は刑法第20章の罪であり、入管法24条4号の2が列挙する章(住居侵入、偽造、傷害、窃盗、詐欺等)には含まれないと解されます。そのため、別表第一の在留資格をお持ちの方でも、執行猶予付き判決を受けたことのみを理由に直ちに同号の退去強制事由に当たるわけではありません。もっとも、1年を超える拘禁刑の実刑となれば24条4号リに該当します(全部執行猶予は同号から除かれます)。さらに、有罪判決は在留期間更新の素行要件で不利に働き、事案によっては在留資格取消(入管法22条の4)の検討対象にもなり得ます。永住者・定住者・日本人の配偶者等といった別表第二の在留資格には24条4号の2の適用がありませんが、更新や永住申請への影響は残ります。刑事と入管を一体として設計する必要があります。
よくあるご質問
記憶が曖昧なまま断定して話してしまいました。偽証になりますか。
記憶が曖昧であることを自覚しながら断定的に述べた場合、記憶に反する陳述と評価される余地があります。ただし、質問の仕方や通訳の訳出によって断定的な表現になったにすぎない場合もあります。尋問調書や録音を確認し、実際の応答内容を精査することが第一歩です。
偽証罪で不起訴になれば在留資格に影響はありませんか。
不起訴処分であれば有罪判決を前提とする退去強制事由には該当せず、更新審査での不利益も大きく軽減されます。ただし、逮捕勾留の事実自体が勤務先や学校に伝わることによる在留活動への影響は残りますので、勤務継続や在籍の調整も並行して行う必要があります。
証人として呼ばれる前に弁護士に相談できますか。
できますし、その段階での相談が最も有効です。証言予定の内容が刑事責任に触れる可能性がある場合、証言拒絶権(刑事訴訟法146条等)の行使を含めた検討が必要です。宣誓後に軌道修正することは困難ですので、出廷前のご相談をおすすめします。証人尋問の準備段階で、通訳人の選任状況を確認しておくことも有効です。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------