犯人蔵匿・隠避罪とは|知人をかくまう行為の刑事責任と入管法上の蔵匿罪、在留への影響
2026/08/13
捜査を受けている知人に住まいを提供した、身代わりとして出頭した、居場所を尋ねられて虚偽の説明をした。こうした行為は、犯人蔵匿・隠避罪(刑法103条)として処罰されることがあります。同郷者どうしの助け合いという意識で行われることが少なくありませんが、法律上は犯罪です。さらに、退去強制を免れさせる目的で不法入国者等をかくまえば、入管法にも別途の罰則があります。本稿では、成立範囲、親族の特例、在留資格への影響を整理します。
本記事の要点
- 犯人蔵匿・隠避罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
- 対象となるのは罰金以上の刑に当たる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者であり、判例上、真犯人に限らず嫌疑を受けて捜査中の者も含まれます。
- 犯人の親族が犯人の利益のためにこれらの罪を犯したときは、刑を免除することができるとされています(刑法105条)。
- 退去強制を免れさせる目的で不法入国者等を蔵匿・隠避させた場合は、入管法74条の8により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象となります。
どのような行為が蔵匿・隠避にあたりますか
蔵匿とは場所を提供してかくまうことをいい、隠避とは蔵匿以外の方法で発見や身柄の確保を妨げる一切の行為をいいます。刑法103条は、罰金以上の刑に当たる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を蔵匿し、または隠避させた者を、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処すると定めます。具体的には、自宅や借りている部屋に住まわせる、逃走用の交通手段や資金を提供する、警察官の問合せに対して所在について虚偽の説明をする、身代わりとして出頭するといった行為が該当します。判例は、犯人が真犯人であることを要せず、犯罪の嫌疑を受けて捜査中の者も含まれるとしており、また、身代わり出頭も隠避に当たるとしています。犯人が既に逮捕されている場合であっても、身柄の拘束を免れさせる行為は隠避となり得ます。
家族や親族の場合も処罰されますか
刑は免除され得ますが、犯罪の成立自体は否定されません。刑法105条は、犯人または逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯人蔵匿等の罪を犯したときは、その刑を免除することができると定めています。これは任意的免除であり、必ず免除されるわけではない点に注意が必要です。また、対象は親族に限られますので、同郷の友人や同じ職場の同僚は含まれません。実務上、外国人の方の事案では、身寄りのない知人を放っておけずに部屋を貸したという経緯が語られることが多くありますが、動機に酌むべき点があっても犯罪の成立は妨げられません。もっとも、動機や関与の程度、期間の長短は、起訴するか否かの判断や量刑において具体的に考慮されますので、経緯を丁寧に主張することには意味があります。
入管法上の蔵匿罪との関係はどうなりますか
在留資格に関わる事案では、入管法の罰則が別途問題となります。入管法74条の8は、退去強制を免れさせる目的で不法入国者等を蔵匿し、または隠避させた者を、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科とし、営利の目的で犯した場合は5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはその併科としています。住居を提供して報酬を得ていた、就労先を斡旋して手数料を受け取っていたという事情があれば、営利目的が問題となります。なお、刑法103条の罪も入管法74条の8の罪も、入管法24条4号の2が列挙する罪には含まれていません。したがって、別表第一の在留資格の方が執行猶予付きの拘禁刑を受けても直ちに退去強制事由とはならず、1年を超える実刑の場合に同条4号リが問題となります。
捜査を受けたときに気を付けること
最も避けるべきは、その場を取り繕うための虚偽の説明です。所在を尋ねられて知らないと答える行為自体が隠避と評価されることがあり、後から訂正しても供述の信用性が失われます。捜査機関から連絡があった段階で、答えるべき範囲を弁護人と整理してください。次に、居住させていた事実そのものは客観的な資料から判明することが多く、賃貸借契約、光熱費の記録、防犯カメラ、通信記録が証拠となります。したがって、事実関係を争うよりも、認識の内容と関与の程度を正確に示すことが実際的です。相手が捜査対象であることを知っていたか、いつから知ったか、報酬を受け取っていたかという点が処分を分けます。示談の相手方が存在しない類型ですので、不起訴に向けては経緯の疎明と再発防止が中心となります。
よくあるご質問
友人が捜査対象だと知りませんでした。それでも罪になりますか
本罪の成立には、相手が罰金以上の刑に当たる罪を犯した者等であることの認識が必要です。まったく知らずに部屋を貸していただけであれば成立しません。もっとも、報道や本人の説明から認識が推認される場合がありますので、経緯を客観資料とともに示すことが重要です。
身代わりで出頭すると、どのような罪になりますか
判例上、身代わり出頭は隠避に当たるとされています。加えて、捜査機関に対して虚偽の供述を重ねれば、事案によっては別の罪が問題となることもあります。真犯人をかばう目的であっても処罰を免れませんので、そのような依頼を受けた場合は応じず、まず弁護人にご相談ください。
オーバーステイの知人を泊めた場合はどうなりますか
退去強制を免れさせる目的が認められれば、入管法74条の8の対象となり得ます。報酬を受け取っていた場合には営利の目的として、より重い法定刑が定められています。目的の有無、宿泊させた期間、報酬の有無が判断の分かれ目となりますので、早期にご相談ください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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