公務執行妨害で逮捕されたら|職務質問への抵抗と職務の適法性、在留への影響
2026/08/13
職務質問や所持品検査の場面で警察官の手を振り払った、逮捕されそうになって抵抗したという経緯から、公務執行妨害罪(刑法95条1項)で現行犯逮捕される事案があります。本罪は、公務員の職務の執行に対する暴行または脅迫を処罰するものであり、その前提として職務が適法であることが必要です。外国人の方の場合、職務質問の適法性そのものが争点となる事案もあります。本稿では、成立要件、傷害罪との関係、在留資格への影響を整理します。
本記事の要点
- 公務執行妨害罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
- 職務の執行が適法であることが成立の前提であり、違法な職務執行に対する抵抗は本罪を構成しません。
- 刑法第5章の罪であるため入管法24条4号の2の列挙罪ではありませんが、傷害を負わせれば傷害罪として同号に該当します。
- 外国人に対する職務質問の適法性については社会的な議論があり、その適法性は事案ごとに具体的に検討されます。
どのような行為が公務執行妨害になりますか
要件は、公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行または脅迫を加えたことです。刑法95条1項は、これを3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定めています。ここでいう暴行は、公務員の身体に直接向けられたものに限られず、その職務の執行を妨げる程度の有形力であれば足ります。したがって、警察官が持っていた書類を払い落とす、押収しようとした物を蹴るといった行為も、間接暴行として本罪に当たり得ます。もっとも、単に立ち去ろうとした、手を振りほどいた程度の動作が常に暴行と評価されるわけではなく、その態様と強度が具体的に検討されます。また、同条2項は、職務上の行為をさせ、もしくはさせないため、または職を辞させるために暴行または脅迫を加えた場合を処罰しています。
職務の適法性はどのように争えますか
本罪は適法な職務の執行を保護するものであり、職務執行が違法であれば成立しません。判例も、公務執行妨害罪の成立には職務行為が適法であることを要すると解しています。職務質問は警察官職務執行法2条1項に基づくものであり、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、何らかの犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある者などを対象とします。同条3項は、答弁を強要されないことを明記しています。所持品検査についても、任意手段としての限界があり、承諾のない開披や有形力の行使は違法とされる場合があります。外国人の方については、外見のみを理由とする声掛けの当否をめぐる議論があり、質問に至った端緒、時間帯、場所、やり取りの経過を具体的に検討して、職務の適法性を争う余地があります。
在留資格にはどのような影響がありますか
公務執行妨害罪は刑法第5章の公務の執行を妨害する罪に属し、入管法24条4号の2が列挙する罪には含まれていません。したがって、別表第一の在留資格の方が執行猶予付きの拘禁刑を受けても、それだけで退去強制事由に当たるわけではなく、1年を超える実刑となれば同条4号リが問題となります。ただし、抵抗の過程で警察官に負傷させた場合には傷害罪(刑法204条)が成立し、傷害は第27章の罪として4号の2に含まれますので、執行猶予付きであっても退去強制事由となります。この違いは決定的ですので、傷害の有無と因果関係は慎重に検討すべきです。加えて、身体拘束が長引けば勤務先での活動が中断し、更新申請や入管法22条の4の判断にも影響し得ます。
初動対応と、争う場合の準備
現場での対応としては、抵抗しないことが最善です。職務執行に疑問がある場合でも、その場で有形力を用いれば新たな犯罪として立件され、本来争えたはずの職務の適法性の議論が後景に退いてしまいます。疑問は記録し、後に弁護人を通じて主張してください。取調べでは、警察官の供述が中心的な証拠となるため、当方の説明が具体的で一貫していることが重要です。通訳を介する場合、振り払った、押した、たたいたという動作の訳し分けが結論を左右しますので、訳文の確認が欠かせません。争う事案では、現場付近の防犯カメラ、同行者や通行人の証言、着衣の状態、負傷の有無に関する診断書といった客観証拠の保全を急ぎます。認める事案では、謝罪と再発防止を整え、不起訴処分を目指します。
よくあるご質問
警察官に触れていなくても公務執行妨害になりますか
なり得ます。本罪の暴行は、公務員の身体に直接向けられたものに限られず、職務の執行を妨げる程度の有形力であれば足ります。書類を払い落とす、押収されようとした物を蹴るといった行為も対象となり得ますので、当時の動作の態様と強度を具体的に確認する必要があります。
職務質問が違法だと思ったら、その場で拒否してよいですか
質問に答えないこと自体は法律上認められていますが、有形力を用いれば別の犯罪となり、本来争えたはずの論点が後景に退いてしまいます。その場では冷静に対応し、日時、場所、警察官の言動を記録してください。職務の適法性は、後に弁護人を通じて具体的に主張することができます。
警察官がけがをした場合はどうなりますか
傷害罪が成立し得ます。傷害は入管法24条4号の2の列挙罪に含まれるため、別表第一の在留資格の方は執行猶予付きの拘禁刑であっても退去強制事由に当たります。負傷の有無と因果関係が在留の帰趨を左右しますので、診断書の内容と受傷の経緯を慎重に検討する必要があります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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舟渡国際法律事務所
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