ストーカー規制法違反で警告・禁止命令を受けたら|罪となる行為と在留資格への影響
2026/08/13
交際関係が終わった後の連絡や、勤務先付近での待ち合わせが、ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)違反として問題となることがあります。同法は、警察による警告や公安委員会による禁止命令という行政上の措置と、ストーカー行為そのものに対する刑罰とを組み合わせた構造をとっています。平成28年の改正により、ストーカー行為罪は告訴がなくても起訴できるようになりました。本稿では、規制される行為の類型、命令違反の罰則、在留資格への影響を整理します。
本記事の要点
- ストーカー行為罪の法定刑は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金であり、告訴がなくても起訴できます。
- 禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金と加重されます。
- 令和3年の改正により、承諾を得ない位置情報の取得やGPS機器の取付けも規制対象に加えられました。
- 同法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではありませんが、住居侵入を伴えば同号に該当します。
どのような行為が規制されるのですか
規制の対象は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われる、法律に列挙された行為です。同法2条は、つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがる、住居や勤務先の付近で見張る、押しかける、監視していると告げる、面会や交際を要求する、著しく粗野または乱暴な言動、無言電話や連続した電話・メッセージの送信、汚物等の送付、名誉を害する事項の告知、性的羞恥心を害する事項の告知や画像の送付といった行為をつきまとい等として定めます。さらに令和3年の改正により、承諾を得ずに位置情報を取得する行為や、相手方の所持する物にGPS機器を取り付ける行為も規制されました。これらを同一の者に対して反復して行うことがストーカー行為とされます。
警告や禁止命令が出た後はどうなりますか
行政上の措置に違反すると、罰則が加重されます。まず、被害の申出を受けた警察本部長等は警告を発することができ、公安委員会は、必要と認めるときは、つきまとい等を反復してはならない旨の禁止命令等を発することができます。緊急を要する場合には、聴聞を経ずに命令が発せられることもあります。この禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合には2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金、禁止命令等に違反した場合には6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。禁止命令が出されている状況で、たとえ用件があるからといって連絡を試みれば、それ自体が処罰の対象となり得ます。連絡の必要がある場合は、代理人である弁護士を通じて行うほかありません。
在留資格への影響と、外国人の事案で注意すべき点
ストーカー規制法違反は、入管法24条4号の2が列挙する刑法犯や暴力行為等処罰法の罪に含まれていません。したがって、別表第一の在留資格の方が拘禁刑に処せられても、執行猶予付きであれば、それだけで退去強制事由に当たるわけではありません。注意すべきは、待ち伏せや押しかけの過程で相手方の住居やマンションの共用部分に立ち入った場合です。この立入りが住居侵入罪(刑法130条)と評価されれば、同罪は第12章の罪として4号の2に含まれますので、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となります。また、身体的接触があれば暴行罪や傷害罪(第27章)が成立し、これらも同号の対象です。外国人の事案では、在留資格が配偶者としての身分に基づく場合、関係の破綻自体が更新や22条の4の判断に影響します。
初動対応と、事件を終わらせるための活動
最初に必要なのは、連絡の完全な停止です。誤解を解きたい、荷物を返したいという理由であっても、直接の連絡は反復の一部と評価され、事態を悪化させます。荷物や金銭の清算は弁護人を通じて行ってください。次に、これまでのやり取りを保全します。相手方から返信があった、面会に応じていたといった事情は、目的や反復性の評価に影響することがあります。そのうえで、弁護人を通じて謝罪と再発防止の約束を伝え、示談を目指します。本罪は告訴がなくても起訴できますが、被害者が処罰を求めない意向であることは起訴猶予の判断で重視されます。取調べでは、好意の感情の有無や目的が問われますので、通訳を介する場合は微妙な表現の訳出に注意が必要です。
よくあるご質問
一度連絡しただけでもストーカー行為になりますか
ストーカー行為は、つきまとい等を反復して行うことを要件としますので、一度きりの連絡が直ちにこれに当たるとは限りません。もっとも、警告や禁止命令が出ている場合には、一度の連絡であっても命令違反として処罰の対象となり得ますので、連絡は控えるべきです。
相手が返信していたのに、なぜ立件されるのですか
返信があったことは、目的や相手方の意思の評価に影響し得る事情ですが、それだけで違法性が否定されるわけではありません。途中から拒絶の意思が示されていた場合には、それ以後の連絡が問題とされます。やり取りを時系列で保全し、拒絶の時点を明らかにしてご相談ください。
禁止命令には従わなければなりませんか
従う必要があります。禁止命令等に違反すれば6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、違反してストーカー行為に及べば2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象です。命令の内容に不服がある場合は、行政上の不服申立てや取消訴訟を検討します。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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