偽計業務妨害とは|虚偽の注文・無断キャンセル・虚偽通報で問われる責任と在留リスク
2026/08/13
虚偽の予約を大量に入れる、事実と異なる通報をする、他人になりすまして注文を出す。こうした行為は、暴力を伴わなくても偽計業務妨害罪(刑法233条後段)として処罰されます。近年は、飲食店への無断キャンセルや、インターネット上の虚偽の書き込みによる立件が増えており、外国人の方が交流サイトを通じて指示を受け、実行役として摘発される例もみられます。本稿では、偽計の意味、威力業務妨害との違い、電子計算機を用いた場合の加重、在留資格への影響を整理します。
本記事の要点
- 偽計業務妨害罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金で、威力業務妨害罪と同一です。
- 偽計とは人を欺き、誘惑し、または他人の錯誤や不知を利用する行為をいい、正面から威圧する態様を要しません。
- 電子計算機や電磁的記録を損壊するなどして業務を妨害した場合は、刑法234条の2により5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に加重されます。
- 刑法第35章の罪であるため入管法24条4号の2には当たりませんが、1年を超える実刑となれば同条4号リの退去強制事由となります。
偽計業務妨害はどのような行為で成立しますか
成立の要は、相手の錯誤や不知を利用する形で業務の遂行を妨げた点にあります。刑法233条後段は、偽計を用いて人の業務を妨害した者を3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処すると定めます。典型例としては、来店の意思がないのに大量の予約を入れる、他人名義で多数の商品を注文して配送させる、営業所に無言電話を繰り返して回線を塞ぐ、存在しない事実を通報して警察官や消防の出動を招くといった行為が挙げられます。相手方を正面から威圧する威力とは異なり、こちらは相手が事実を誤認したまま無駄な対応を強いられる点に本質があります。なお、虚偽の通報が公務員の職務に向けられた場合には、業務妨害罪の成否とは別に、軽犯罪法違反や偽計による公務執行妨害の可否が問題となります。
威力業務妨害とはどこが違いますか
違いは手段の性質にあり、法定刑は同じです。威力業務妨害は、怒号や多数での押し掛けのように、人の意思を制圧するに足りる勢力を正面から用いる場合を指します。これに対して偽計業務妨害は、虚偽や欺罔を用いて相手の判断を誤らせる場合を指します。実務では、同一の事件でどちらの構成をとるかが必ずしも自明ではなく、たとえば店舗に虚偽の苦情を大量に寄せる行為は、内容と態様により評価が分かれます。両者はいずれも刑法233条および234条という同じ枠組みの中にあり、法定刑が3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金である点も共通しますので、実際上は、どちらの罪名で起訴されるかよりも、妨害の期間、被害の額、反復性、組織的な関与の有無が量刑を左右します。
コンピュータを使った場合はどうなりますか
電子計算機を対象とする場合は加重されます。刑法234条の2は、人の業務に使用する電子計算機もしくはその用に供する電磁的記録を損壊し、または虚偽の情報もしくは不正な指令を与えるなどして、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、もしくは使用目的に反する動作をさせて業務を妨害した者を、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処すると定めています。予約システムへの自動化された大量アクセス、注文用アプリケーションを狙った不正な操作などがこれに当たり得ます。これらは通信記録から実行者が特定されやすく、端末やアカウントが押収の対象となります。海外にいる指示者から報酬を得て実行した場合であっても、日本国内で結果が生じていれば日本の刑法が適用されます。
在留への影響と、不起訴に向けた活動
偽計業務妨害罪は刑法第35章の罪であり、入管法24条4号の2の列挙罪ではありません。したがって、別表第一の在留資格の方が執行猶予付きの拘禁刑を受けても、それだけでは退去強制事由に当たりません。ただし、組織的に反復した事案で1年を超える実刑となれば同条4号リに該当します。弁護活動の中心は、被害の回復と役割の限定です。無断キャンセルであれば食材費や機会損失の実額を確認して賠償し、虚偽の書き込みであれば削除と訂正を行い、指示を受けた実行役であれば、報酬額、指示系統、認識の程度を客観資料により明らかにして、責任の範囲を過大に認定させないことが重要です。取調べでは、悪ふざけのつもりであったという説明が計画性の自白と受け取られないよう、弁護人と方針を定めてください。
よくあるご質問
予約を忘れて行かなかっただけでも罪になりますか
単なる失念による無断キャンセルは、通常は偽計に当たりません。問題となるのは、はじめから来店の意思がないのに予約を入れる、他人名義で大量に予約するなど、相手の錯誤を利用する意図が認められる場合です。回数や規模が大きい事案では立件の可能性が高まります。
インターネットの書き込みでも業務妨害になりますか
なり得ます。虚偽の事実を投稿して来店客を減少させた、存在しない衛生問題を拡散したといった場合は偽計業務妨害の対象です。内容が経済的信用に関わるものであれば信用毀損罪、個人の社会的評価に関わるものであれば名誉毀損罪の成否も併せて検討されます。
指示されて実行しただけでも重く処罰されますか
実行役であっても、正犯としての責任を負うのが原則です。もっとも、報酬が少額であること、指示系統の末端にとどまること、継続性がないことは、量刑や起訴猶予の判断において考慮されます。指示者とのやり取りを保全し、いつからどの範囲で関与したのかを客観的に示すことが有効です。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------