威力業務妨害で逮捕されたら|成立要件と量刑の見通し、外国人の在留資格への影響
2026/08/13
店舗で大声を出して抗議を続けた、退去を求められても居座った、勤務先で机を叩いて騒いだ。こうした行為は威力業務妨害罪(刑法234条)として立件されることがあります。言葉の行き違いから抗議が長時間に及び、通報を受けた警察官が臨場して現行犯逮捕に至る例は、在留外国人の相談でも珍しくありません。本稿では、威力の意味と成立の範囲、しばしば併せて問題となる建造物侵入罪との関係、そして在留資格への影響について、条文に即して整理します。
本記事の要点
- 威力業務妨害罪の法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金であり、現実に業務が妨害された結果までは必要とされません。
- 威力とは人の意思を制圧するに足りる勢力をいい、暴行に至らない怒号や多数での押し掛け、退去要求への無視も含まれ得ます。
- 刑法第35章の罪であるため入管法24条4号の2の列挙罪には当たりませんが、建造物侵入を伴えば同号に該当します。
- 被害店舗との示談は成立の余地が大きく、不起訴処分を目指すうえで中心的な活動となります。
どのような行為が威力業務妨害になりますか
成立の中心は、人の意思を制圧するに足りる勢力を用いて業務を妨害したことです。刑法234条は威力を用いて人の業務を妨害した者を3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処すると定めており、暴行や器物損壊に至らなくとも、店内で怒号を上げ続ける、カウンターを占拠して他の客の応対を不能にする、複数人で押し掛けて退去を拒むといった態様が該当し得ます。妨害されるべき業務は、職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務であれば足り、営利性は不要です。判例上、本罪は業務を妨害するおそれのある行為があれば成立し、現実に売上げが減少したことまでは要しないと解されています。したがって、短時間の出来事であっても、営業を一時中断させた事実があれば立件の対象となります。
抗議やクレームとの境界はどこにありますか
境界は、要求の正当性ではなく、手段が社会通念上許される範囲を超えたかどうかにあります。商品やサービスに問題があり、その説明や返金を求めること自体は正当な権利行使です。しかし、大声を上げ続ける、店長を長時間拘束する、他の客の面前で威圧して営業を継続できない状態を作出するといった手段に及べば、要求内容が正しくても本罪が成立し得ます。とくに言語による意思疎通が難しい場面では、説明を求める側が声を張り上げ、店側が恐怖を感じて通報するという経過をたどりやすく、当事者の主観と外形的評価が食い違いがちです。防犯カメラの映像や店員の供述が中心的な証拠となりますので、自らの言動の時系列と、店側の対応の経緯を早期に整理しておくことが重要です。
在留資格にはどう影響しますか
威力業務妨害罪は刑法第35章の信用及び業務に対する罪であり、入管法24条4号の2が列挙する罪には含まれていません。したがって、別表第一の在留資格をもって在留する方が執行猶予付きの拘禁刑を受けても、それだけで退去強制事由とはなりません。注意を要するのは、店舗や事務所への立入りが建造物侵入罪(刑法130条)と評価される場合です。同罪は第12章の住居を侵す罪であり4号の2の列挙罪に含まれますので、建造物侵入と威力業務妨害が併せて起訴され拘禁刑に処せられれば、執行猶予付きであっても退去強制事由に当たります。この違いは在留の帰趨を分けますので、立入りの経緯、退去要求の有無とその時点を丁寧に主張することが必要です。1年を超える実刑であれば同条4号リの問題ともなります。
不起訴処分を目指すための初動
この類型では、被害店舗との示談が最も直接的な効果を持ちます。営業への具体的な支障、原状回復の費用、従業員が受けた恐怖といった点を踏まえた謝罪と賠償が整えば、起訴猶予の判断に強く働きます。逮捕直後の段階では、興奮した状態のまま経緯を説明すると、正当性の主張が反省の欠如と受け取られることがありますので、まず弁護人を選任し、供述の順序と範囲を整理してください。通訳を介する場合、抗議、要求、脅しといった語の訳し分けが不正確だと、意図しない威圧の自白となる危険があります。また、防犯カメラの映像は上書きにより短期間で失われますので、有利な場面が記録されている可能性があるときは、弁護人を通じて早期に保全を求めるべきです。
よくあるご質問
実際に店の営業は止まっていません。それでも罪になりますか
威力業務妨害罪は、業務を妨害するおそれのある行為があれば成立すると解されており、現実に売上げが減少したことまでは必要とされません。もっとも、実害の程度は起訴するか否かの判断や量刑に影響しますので、営業にどのような支障が生じたのかは、防犯カメラの映像等に照らして丁寧に確認すべきです。
店に入ったこと自体が別の罪になると言われました
退去を求められた後も居座った場合には不退去罪、当初から正当な理由のない立入りと評価されれば建造物侵入罪が問題となります。建造物侵入は入管法24条4号の2の列挙罪に含まれるため、在留への影響が大きく変わります。立入りの経緯を正確に主張してください。
示談ができれば前科はつきませんか
示談が成立し、被害店舗が処罰を求めない意向を示せば、起訴猶予による不起訴処分となる可能性が高まります。ただし本罪は親告罪ではありませんので、示談だけで当然に不起訴となるわけではありません。妨害の時間や態様、前科の有無、再発防止の取組みも踏まえて総合的に判断されます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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