携帯電話不正利用防止法違反とは|名義貸し・SIMの譲渡で問われる罪と在留への影響
2026/08/13
自分の名義で契約した携帯電話やSIMカードを他人に渡す行為は、携帯電話不正利用防止法(携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律)違反として処罰され得ます。来日間もない方が同郷者から名義を貸してほしいと頼まれる、帰国前に契約中の回線をまとめて譲るといった場面が典型です。渡した回線が特殊詐欺の連絡手段に使われれば、捜査は詐欺の共犯へと広がります。本稿では、罰則の内容と捜査の実際、在留資格への影響を整理します。
本記事の要点
- 携帯音声通信事業者の承諾を得ずに業として有償で回線を譲り渡す行為等は、同法20条により2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象です。
- 契約時の本人確認に際して氏名や住居を偽った場合には、50万円以下の罰金が定められています。
- 同法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではありませんが、名義を偽って端末を交付させれば詐欺罪となり、同号に該当します。
- 回線を渡した経緯と報酬の有無が、犯人性および詐欺への認識の推認材料として重視されます。
携帯電話の名義貸しは、どの範囲で犯罪になりますか
処罰の中心は、事業者の承諾を得ない有償の譲渡と、本人確認の潜脱です。同法20条は、携帯音声通信事業者の承諾を得ないで、業として有償で通話可能端末設備等を譲り渡す行為、および相手方にそのような目的があることを知りながら有償で譲り渡す行為を、2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科としています。また、契約や譲渡の際の本人確認に応じない、または氏名、住居、生年月日を偽った場合には、50万円以下の罰金が定められています。無償で家族に貸したという事案がすべて処罰されるわけではありませんが、報酬を受け取っている、複数回線をまとめて渡している、相手が転売目的であることを知っていたといった事情があれば、有償性や業としての性質が認定されやすくなります。
どのようにして捜査対象になるのですか
端緒の大半は、渡した回線が別の事件で使われたことです。特殊詐欺の架け子が使用した番号、闇バイトの募集に使われた番号が判明すると、契約名義人にたどり着き、事情聴取が行われます。契約時の申込書、本人確認書類の写し、料金の支払口座、端末のIMEIといった記録が残るため、名義人であること自体は容易に特定されます。そこで問われるのは、いつ、誰に、いくらで渡したのかという点です。ここで、貸しただけで売っていないと説明しても、報酬の入金記録やメッセージが残っていれば有償性が認定されます。逆に、盗まれた、紛失したというのであれば、その時期に届出をしていたかどうかが決定的な意味を持ちますので、心当たりがある段階で速やかに事業者と警察に届け出ることが重要です。
在留資格にはどのような影響がありますか
携帯電話不正利用防止法違反は、入管法24条4号の2が列挙する罪に含まれていません。罰金で終わる場合はもとより、別表第一の在留資格の方が執行猶予付きの拘禁刑を受けたとしても、それだけで退去強制事由に当たるわけではありません。問題は、事案が詐欺罪に発展した場合です。他人になりすまして端末の交付を受ければ詐欺罪(刑法246条)が成立し、詐欺は同号の列挙罪ですから、別表第一の在留資格者が拘禁刑に処せられれば執行猶予付きであっても退去強制事由となります。また、罰金にとどまった場合でも、在留期間の更新や在留資格の変更では素行が審査されますので、無関係とは言えません。永住者等の別表第二の在留資格には4号の2の適用がなく、1年を超える実刑(同条4号リ)の成否が中心となります。
取調べでの受け答えと、不起訴を目指す活動
本件類型では、犯罪に使われると分かっていたのではないかという認識面が争点になります。取調べで、深く考えずに渡したという趣旨を述べたつもりが、悪用されるかもしれないとは思ったという調書になっていることがあり、この一文が後の詐欺事件で認識の証拠として用いられます。したがって、供述するか黙秘するかを含め、方針は弁護人と決めるべきです。通訳を介する場合、名義貸し、譲渡、レンタルという語が同じ言葉に訳されてしまう例があるため、訳出の確認も欠かせません。弁護活動としては、回線の速やかな解約、報酬の返還、名義貸しに至った経緯の説明、再発防止の誓約を資料化し、不起訴処分を目指します。あわせて、詐欺の共犯として立件されない構成を早期に固めることが重要です。
よくあるご質問
家族に自分名義の携帯を使わせているだけでも違法ですか
同法が処罰するのは、事業者の承諾を得ない有償の譲渡や、相手方の不正利用目的を知った上での有償譲渡、本人確認における虚偽の申告などです。家族間で無償で使わせているだけであれば直ちに犯罪とはなりませんが、料金の支払や利用実態から譲渡と評価される場合もあります。
渡した番号が詐欺に使われました。私も詐欺になりますか
詐欺の共犯とされるには、詐欺に使われることの認識と、犯行への一定の関与が必要です。単に回線を渡しただけであれば同法違反にとどまる例もありますが、高額の報酬を受け取っていた、複数回線をまとめて提供したといった事情があれば認識が推認されます。勧誘の経緯を裏付ける資料を早期に整えてご相談ください。
罰金だけなら在留カードの更新に影響しませんか
罰金のみであれば、退去強制事由には直ちに当たりません。もっとも、在留期間の更新や在留資格の変更の審査では素行の善良性が評価されますので、影響がないとは言えません。更新申請の際に、名義を渡すに至った経緯と、その後の再発防止の取組みを説明できる資料を準備しておくことをお勧めします。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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