職業安定法違反(有害業務紹介)の重さ|1年以上10年以下の拘禁刑
2026/08/13
職業安定法63条は、暴行や脅迫などによって職業紹介や労働者の募集、労働者供給を行った者、および公衆衛生または公衆道徳上有害な業務に就かせる目的でこれらを行った者について、1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金と定めています。下限が1年に設定された重い規定であり、無許可の職業紹介にとどまる同法64条とは次元が異なります。外国人を対象とする場合には入管法73条の2の不法就労助長罪も併せて問題となりますので、両者を見据えた対応が必要です。
本記事の要点
- 有害業務就労目的の職業紹介等は、1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金の対象です(職業安定法63条)。
- 無許可の職業紹介は同法64条により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と、法定刑が大きく異なります。
- 宣告刑が1年を超える実刑となれば、在留資格の種類を問わず入管法24条4号リの退去強制事由に該当します。
- 外国人を紹介した場合には、入管法73条の2の不法就労助長罪が併せて成立し得ます。
公衆道徳上有害な業務とは何を指しますか
性風俗に関わる業務など、社会通念上、公衆の道徳を害すると評価される業務を指すと解されています。職業安定法63条2号は、公衆衛生または公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集または労働者供給を行った者を処罰対象としています。裁判例では、売春に関わる業務やこれに準ずる性的なサービスを提供する業務がこれに当たるとされてきました。重要なのは、実際に就労させたことではなく、そのような業務に就かせる目的で紹介や募集を行ったこと自体が処罰対象とされている点です。したがって、紹介の段階で摘発された場合であっても、目的が認定されれば同条が適用されます。同条1号は、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段による職業紹介等を対象としています。
無許可の職業紹介とはどう違いますか
法定刑が根本的に異なります。職業安定法64条は、許可を受けずに有料職業紹介事業を行った者などを1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金としています。これに対し同法63条は、1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金と定めており、下限が1年に設定されています。すなわち、同条が適用される場合、罰金刑が選択されない限り、拘禁刑の宣告は1年以上となります。もっとも、宣告刑が3年以下であれば刑の全部の執行猶予を付すことが可能ですので、実刑か猶予かが大きな分岐点となります。捜査段階では、単に人材を紹介しただけなのか、就労させる業務の内容を認識していたのかが厳しく問われることになります。
在留資格にはどう影響しますか
実刑の刑期が1年を超えるかどうかが決定的です。職業安定法違反は特別法犯ですので、刑法各章の罪を列挙する入管法24条4号の2の対象ではありません。したがって、執行猶予付き判決であれば同号による退去強制はありません。他方、入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由とし、全部執行猶予の言渡しを受けた者を除くと定めています。職業安定法63条の下限は1年ですので、実刑判決を受けた場合、宣告刑がちょうど1年であれば1年を超えるには当たりませんが、これを超えれば在留資格の種類を問わず退去強制事由に該当します。この1年という境界線が量刑弁護の具体的な目標を規定します。
捜査への対応で重要な点は何ですか
紹介先の業務内容についての認識を、正確に切り分けて説明することが要点です。この類型では、単に人手を探している知人に人材を紹介しただけという方が、紹介先が性風俗関係の店舗であったために、有害業務への紹介として立件されることがあります。したがって、紹介先の業態をどこまで知っていたか、報酬を受け取っていたか、継続的に紹介していたか、といった事情が結論を左右します。取調べでは、そういう店だと思っていたかという趣旨の質問が繰り返されますが、通訳を介したやり取りで曖昧に認めると、目的の認定に直結します。あわせて、外国人を紹介していた場合には入管法73条の2の不法就労助長罪も問題となりますので、在留資格の確認状況についても整理しておく必要があります。
よくあるご質問
知人に仕事を紹介しただけでも罪になりますか
紹介先が公衆道徳上有害な業務に当たり、その業務に就かせる目的が認められれば、職業安定法63条の対象となり得ます。反復継続性や報酬の有無は、職業紹介に当たるかの判断や量刑に影響しますので、紹介の経緯を具体的に説明することが重要です。紹介料を受領していれば、職業紹介に当たると評価されやすくなります。
執行猶予がつけば在留を続けられますか
入管法24条4号リは全部執行猶予の言渡しを受けた者を除いていますので、執行猶予であれば同号には該当しません。もっとも、在留期間の更新審査では素行が考慮されますので、事案の内容や再発防止の取組みを資料で示す準備が必要となります。執行猶予期間中の再犯は、更新審査において特に厳しく評価されます。
紹介した外国人が不法残留者だった場合はどうなりますか
入管法73条の2の不法就労助長罪が問題となります。同条2項により、知らなかったことのみでは処罰を免れず、過失がなかったことを示す必要があります。在留カードの確認記録の有無が判断を分けますので、確認の実態を整理して説明することが重要です。就労資格証明書の徴求まで行っていたかどうかも、判断の材料となります。
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舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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