偽装結婚を疑われたら|公正証書原本不実記載罪と在留資格の取消し
2026/08/13
在留資格を得る目的で婚姻の届出をしたと疑われる場合、刑事面では刑法157条1項の公正証書原本不実記載罪および同法158条1項の同行使罪が問題となり、法定刑は5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。同時に、入管法上は偽りその他不正の手段により許可を受けたとして在留資格の取消しが検討され、仲介した者には別途重い罰則が定められています。文書偽造の罪は刑法第17章に属し、入管法24条4号の2の列挙対象に含まれるため、別表第一の在留資格をお持ちの方は執行猶予でも退去強制事由に該当します。
本記事の要点
- 婚姻の実体がないのに婚姻届を提出すれば、刑法157条1項の公正証書原本不実記載罪(5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)が問題となります。
- 刑法第17章は入管法24条4号の2の列挙対象であり、別表第一の在留資格者は執行猶予付き拘禁刑でも退去強制事由に該当します。
- 在留資格は入管法22条の4第1項2号により取り消され得るほか、出国期限までに出国しなければ同法24条2号の2に該当します。
- 営利目的で他人の不正な在留資格取得を援助した者には、入管法74条の6による別個の処罰が定められています。
どのような場合に偽装結婚と判断されますか
婚姻意思、すなわち社会通念上夫婦としての共同生活を送る意思がないと認められる場合です。入管および捜査機関は、同居の有無、生活費の負担、共同の口座や家財の状況、交際の経緯、双方の言語能力、写真や通信履歴の有無、親族への紹介の状況などから、婚姻の実体を判断します。仲介者を介して知り合い、報酬の授受があった場合には、その事実が決定的な証拠となります。もっとも、言葉が十分に通じない、生活習慣が異なる、別居しているといった事情は、それだけで婚姻意思の不存在を意味するものではありません。単身赴任や介護、住宅事情といった合理的な理由による別居は現実に存在しますので、生活の実態を示す客観資料によって反論する余地があります。
刑事責任はどのように問われますか
虚偽の婚姻届を提出して戸籍に記載させた点が処罰対象となります。刑法157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、権利義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせた者を5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処すると定めています。戸籍はこれに当たると解されており、婚姻の実体がないのに婚姻届を提出して受理させれば、同罪が成立し得ます。さらに、その戸籍謄本を入管に提出して在留資格の変更や更新を申請すれば、同法158条1項の行使罪が問題となります。仲介した者や報酬を支払った者については、共犯としての責任に加え、入管法74条の6が定める営利目的での不正在留資格取得の援助として、別個に処罰される可能性があります。
在留資格にはどのような影響が生じますか
取消しと退去強制の双方が問題となります。入管法22条の4第1項2号は、偽りその他不正の手段により在留資格の変更や在留期間の更新の許可を受けたことを取消事由と定めており、偽装結婚を前提とする日本人の配偶者等の在留資格は、この規定により取り消され得ます。取消しの際には出国のための期限が指定されることがあり、その期限までに出国しなければ、入管法24条2号の2の退去強制事由に該当します。加えて、公正証書原本不実記載罪は刑法第17章の罪ですので、別表第一の在留資格をもって在留していた方が拘禁刑に処せられれば、執行猶予が付いていても入管法24条4号の2に該当します。なお、日本人の配偶者等は別表第二ですので、同号の適用はありませんが、取消しの問題は残ります。
身に覚えがない場合はどう対応すべきですか
生活の実態を示す資料を早期に確保し、供述の初期固定を避けることが重要です。この類型の捜査では、双方が別々に取り調べられ、交際の経緯や生活の細部について同じ質問が繰り返されます。記憶違いによる食い違いが生じると、それが婚姻意思の不存在を示す事情として扱われることがあります。とりわけ、通訳を介した取調べでは、出会いの経緯についての表現が、紹介を受けたという趣旨からあっせんを受けたという趣旨に変質してしまう危険があります。したがって、弁護人と事実関係を整理するまでは黙秘権を行使することも合理的な選択です。並行して、同居を示す公共料金の記録、共同の写真、日常の連絡記録、親族との交流の記録などを保全しておくことが、後の反論の基礎となります。
よくあるご質問
別居していると必ず偽装結婚と判断されますか
別居の事実のみで婚姻意思がないと判断されるわけではありません。単身赴任、介護、就学、住宅事情など合理的な理由があれば、その説明と裏付け資料が重要になります。定期的な往来の記録、生活費の送金記録、連絡の履歴などを整理して示すことが有効です。写真や日常の連絡の履歴も、関係の継続を示す資料となります。
報酬を受け取っていなければ罪になりませんか
報酬の有無は重要な事情ですが、成立要件そのものではありません。婚姻の実体を作る意思がないまま届出をした事実が認められれば、刑法157条1項の罪は成立し得ます。もっとも、報酬がないことは組織的関与を否定する事情として、量刑や処分の判断で意味を持ちます。
在留資格を取り消されたら直ちに帰国しなければなりませんか
取消しの際に出国のための期限が指定される場合があり、その期限内に出国すれば退去強制手続を経ずに済むことがあります。期限を過ぎると入管法24条2号の2に該当しますので、期限の有無と日付を必ず確認し、対応方針を早急に検討する必要があります。期限の延長の可否や不服申立ての方法についても、確認が必要です。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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舟渡国際法律事務所
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