在留カードの不携帯・提示拒否で警察に呼び止められたときの対応
2026/08/13
入管法23条2項は、中長期在留者に対し在留カードを常時携帯する義務を課し、入国審査官、入国警備官、警察官などから提示を求められたときはこれを提示しなければならないと定めています。不携帯は同法75条の3により20万円以下の罰金の対象となり、提示を拒んだ場合にはより重い法定刑が定められています。金額としては小さく見えますが、罰金前科は在留期間の更新審査に影響し得ますし、偽造在留カードが絡めば一気に重大な事件へと発展します。職務質問の場面での適切な対応を知っておくことが重要です。
本記事の要点
- 中長期在留者は在留カードの常時携帯義務を負い、不携帯は20万円以下の罰金の対象です(入管法23条2項、75条の3)。
- 提示を拒んだ場合には、不携帯より重い法定刑が定められています。
- 16歳未満の方には携帯義務がなく、特別永住者証明書についても常時携帯義務は課されていません。
- 偽造在留カードの偽造・変造は入管法73条の3により1年以上10年以下の拘禁刑と、極めて重い法定刑が定められています。
在留カードはいつも持ち歩かなければなりませんか
中長期在留者には常時携帯義務があります。入管法23条2項は、中長期在留者に対して在留カードを常に携帯することを義務付け、入国審査官、入国警備官、警察官、海上保安官その他法令に定める職員から提示を求められた場合には、これを提示しなければならないと定めています。義務違反のうち、単に携帯していなかった場合は同法75条の3により20万円以下の罰金とされ、提示を拒んだ場合にはこれより重い法定刑が定められています。他方、16歳未満の方には携帯義務が課されておらず、また、特別永住者の方については、特別永住者証明書の常時携帯義務は設けられていません。旅券により在留資格を証する短期滞在の方などは、在留カードの交付対象ではありませんので、旅券の携帯が問題となります。
職務質問で提示を求められたらどうすればよいですか
携帯していれば提示に応じるのが法律上の義務であり、それが最も穏当な対応です。提示を拒めば、不携帯より重い罰則の対象となるうえ、その場での取扱いが長時間化する要因にもなります。他方、所持品検査や携帯電話の内容確認といった、在留カードの提示とは別の要求については、任意の協力を求められているにすぎない場面が多く、応じる義務があるかどうかを冷静に確認してよい事柄です。呼び止めの理由に納得できない場合であっても、その場で強く争うことは得策ではありません。日時、場所、警察官の所属と氏名、やり取りの内容を後で記録しておき、必要があれば弁護士に相談するという対応が現実的です。うっかり自宅に置き忘れた場合は、その事情を落ち着いて説明してください。
在留資格への影響はありますか
罰金であれば退去強制事由には当たりませんが、更新審査への影響は無視できません。不携帯は20万円以下の罰金であり、拘禁刑ではありませんので、入管法24条4号の2にも同条4号リにも該当しません。したがって、これのみで退去強制されることはありません。もっとも、在留期間の更新や在留資格の変更は法務大臣の裁量に委ねられ、素行が考慮事情とされていますので、罰金前科があることは説明を要する事情となります。繰り返し違反している場合には、法令遵守の姿勢が問われることになります。他方、偽造された在留カードを行使したり所持したりしていた場合は次元が異なり、同法73条の3以下に重い罰則が定められていますので、直ちに弁護人に相談すべきです。
忘れただけでも罪になるのですか
不携帯罪は故意犯ですので、携帯していないことの認識が必要とされています。したがって、カードを自宅に置き忘れたことに全く気付いていなかったという場合、故意の有無が問題となる余地はあります。もっとも実務では、提示を求められた時点で携帯していないと認識した以上、その後の状況によって故意が認定されやすい傾向にあり、この点の争いは容易ではありません。より現実的には、事情の説明と再発防止の姿勢を示し、微罪処分や起訴猶予による処理を目指すことになります。なお、行政上の不利益処分の場面において、本人の認識や落ち度をどこまで要求すべきかについては入管実務上争いがあり、当事務所でも責任主義の射程を問う訴訟に取り組んでいます。
よくあるご質問
在留カードのコピーを持っていれば足りますか
法律が求めているのは在留カードそのものの携帯ですので、コピーの携帯では義務を果たしたことになりません。紛失した場合は速やかに再交付の申請を行い、申請中であることを示す資料を携帯しておくことが望ましい対応となります。再交付を受けるまでの間は、外出時に特に注意しておく必要があります。
呼び止められた理由に納得できない場合、拒否できますか
在留カードの提示は法律上の義務ですので、携帯していれば応じることが必要です。他方、所持品検査などは任意の協力を求められているにとどまる場合が多く、状況の記録を残したうえで、後日弁護士に相談するという対応が現実的です。その場で強く対立することは、かえって不利な状況を招くことがあります。
罰金を払った後、更新申請で説明は必要ですか
申請書には賞罰に関する記載欄がありますので、正確に記載する必要があります。事実を伏せた申請は、後に発覚した場合により不利に評価されます。違反に至った経緯と再発防止の取組みを併せて説明することが望ましい対応です。記載の仕方に不安がある場合は、申請前に弁護士へ相談することをお勧めします。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 不法就労助長罪に問われて退去強制の危機にある依頼者について、「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた入管実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を係属中の事例。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
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