不法就労助長罪で捜査を受けた経営者の方へ|過失でも処罰される構造
2026/08/13
入管法73条の2は、事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者などを5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています。特に注意すべきは同条2項で、不法就労活動であることを知らなかったことを理由に処罰を免れることはできないとしたうえで、過失がないときはこの限りでないと規定している点です。つまり、確認を怠った経営者は、知らなかったという弁解では責任を免れられません。外国人経営者の場合、自らの在留資格の更新にも直結する問題となります。
本記事の要点
- 不法就労助長罪の法定刑は5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはその併科です(入管法73条の2第1項)。
- 同条2項により、知らなかったことのみでは処罰を免れず、過失がなかったことの立証が求められます。
- 不法就労には、不法残留者の就労のほか、資格外活動許可の範囲を超えた就労も含まれます。
- 経営・管理の在留資格をお持ちの方は、事業の適法性が否定されることで更新審査に重大な影響を受けます。
どのような行為が不法就労助長罪になりますか
事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせた場合が中心的な類型です。入管法73条の2第1項は、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者、外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者、業としてこれらの行為に関しあっせんした者を処罰対象とし、法定刑を5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金またはその併科としています。ここでいう不法就労活動には、不法残留者や不法入国者を働かせる場合のほか、留学生を資格外活動許可の範囲を超えて働かせる場合、技術・人文知識・国際業務の在留資格者に単純労働や風俗営業の業務をさせる場合も含まれ得ます。適法な在留資格を持つ方であっても、その資格の範囲外の業務に従事させれば、この罪が問題となる点に注意が必要です。
知らなかったと言えば責任を免れますか
免れません。入管法73条の2第2項は、不法就労活動であることを知らないことを理由として処罰を免れることができないとしたうえで、過失のないときはこの限りでないと定めています。この構造により、経営者の側が、在留カードの確認を含め相当な注意を尽くしたことを具体的に示さない限り、処罰を免れることは困難です。実務上求められる注意の程度としては、採用時に在留カードの原本を確認すること、在留期限と就労制限の有無の記載を確認すること、資格外活動許可の記載を確認すること、必要に応じて就労資格証明書の提出を求めること、偽変造が疑われる場合には在留カード等読取アプリケーションで確認することなどが挙げられます。これらの確認記録を保存しておくことが、後日の防御において決定的な意味を持ちます。
外国人経営者の在留資格にはどう影響しますか
刑の重さと、事業の適法性の両面から影響が生じます。入管法73条の2違反は特別法犯であり、刑法各章の罪を列挙する入管法24条4号の2の対象ではありません。したがって、執行猶予付き判決であれば同号による退去強制はありませんが、1年を超える実刑となれば同条4号リの退去強制事由に該当します。より現実的な問題は在留期間の更新です。経営・管理の在留資格は、適法かつ安定的な事業運営を前提としますので、不法就労助長罪による有罪は、事業の適法性を正面から否定する事情として更新審査に強く影響します。更新が不許可となれば在留期間の満了により不法残留となり、入管法24条4号ロの退去強制事由に該当します。刑事処分の段階から、雇用管理体制の是正を並行して進める必要があります。
過失の有無はどのように争いますか
確認の実態を客観資料で示し、注意義務の内容を具体的に検討することが中心となります。在留カードの写しの保管状況、確認の日時と担当者、外国人従業員に対する就労条件の説明記録、社会保険や労働保険の加入手続、税務上の処理などは、いずれも経営者が適法な雇用を意図していたことを裏付ける資料となります。他方、給与を現金で支払い記録を残していない、勤務時間を管理していない、在留カードの写しを保管していないという状況では、過失がなかったとの主張は通りにくくなります。また、退去強制事由の判断において故意や過失をどこまで要求すべきかについては入管実務上争いがあり、当事務所も責任主義の射程を問う訴訟に取り組んでいます。刑事と行政の双方で、認識と注意の内容を丁寧に主張することが求められます。
よくあるご質問
派遣会社から紹介された人材でも責任を負いますか
実際に就労させていた事業者として責任を問われる可能性があります。派遣元が確認しているはずだという理解のみでは、過失がなかったとはいい難い場面が多いといえます。受入れ時に在留カードの確認を行い、その記録を保存しておくことが必要です。派遣元との契約書に、確認の分担を明記しておくことも有効です。
在留カードが偽造されていた場合はどうなりますか
偽造カードによって欺かれた場合でも、確認の方法が不十分であれば過失を問われる可能性があります。在留カード等読取アプリケーションによる確認や、記載事項の整合性の確認を行っていたことを示せれば、過失がなかったとの主張を支える事情となります。確認の日時と担当者を記録に残しておくことが望まれます。
従業員本人はどのような処分を受けますか
不法残留であれば入管法24条4号ロ、専ら資格外活動を行っていれば同条4号イにより退去強制事由に該当し得ます。刑事面でも同法70条または73条の対象となり得ますので、雇用主と従業員とで利害が対立する場合には、それぞれ別の弁護人による対応が必要です。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 不法就労助長罪に問われて退去強制の危機にある依頼者について、「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた入管実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を係属中の事例。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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