不法入国で摘発された場合の手続|刑事罰・退去強制・上陸拒否期間
2026/08/13
不法入国とは、有効な旅券を所持しないなど入管法3条に反して日本に入る行為をいい、入管法24条1号の退去強制事由に該当するとともに、同法70条1項1号により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象となります。不法残留と混同されがちですが、そもそも適法に入国していないという点で法的な位置付けが異なり、在留資格を有しないため在留資格を前提とする規定の適用場面も違います。中国籍の方の場合、渡航の経緯や関与した仲介者との関係が、量刑と在留特別許可の双方で重要な意味を持ちます。
本記事の要点
- 不法入国は入管法24条1号の退去強制事由であり、同法70条1項1号の刑事罰の対象でもあります。
- 在留資格を有しないため、別表第一の在留資格者を対象とする入管法24条4号の2の適用場面はありません。
- 退去強制令書により出国した場合、入管法5条1項9号により原則5年、2回目以降は10年の上陸拒否期間が生じます。
- 他人を不法入国させる行為や、不法入国者を蔵匿・隠避する行為は、別個の重い犯罪として処罰されます。
不法入国とはどのような行為ですか
入管法3条に違反して日本に入る行為をいいます。同条は、有効な旅券を所持しない外国人、および入国審査官から上陸の許可等を受けないで上陸する目的を有する外国人は本邦に入ってはならないと定めています。典型的には、船舶を用いた密航や、他人名義の旅券を用いた入国、偽造された旅券による入国がこれに当たります。不法入国者は入管法24条1号により退去強制事由に該当し、刑事面では同法70条1項1号により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科と定められています。他人を不法に入国させる行為については、集団密航に関する罪や、営利目的で不法入国を助ける罪が別に設けられており、法定刑はさらに重くなります。また、不法入国者を蔵匿し、または隠避させた者も処罰の対象となります。
不法残留とは何が違いますか
適法に入国したかどうかという入口の部分が決定的に異なります。不法残留は、適法に上陸許可を受けて在留資格を得た方が、在留期間を過ぎても残留している状態であり、入管法24条4号ロに該当します。これに対し不法入国は、そもそも入国の時点で適法性を欠いており、在留資格を取得したことがありません。この違いは実務上いくつかの帰結を生みます。第一に、在留資格を前提とする規定、たとえば別表第一の在留資格者を対象とする入管法24条4号の2や、在留資格取消しを定める22条の4は、適用の前提を欠きます。第二に、出国命令制度は不法残留者を主たる対象としており、不法入国者は同制度の要件を満たしません。第三に、在留特別許可の審査においても、入国の経緯という考慮事情が不利に評価されやすい傾向があります。
刑事処分ではどのような点が重視されますか
渡航に至る経緯と、組織的な関与の有無が量刑を大きく左右します。単身で生活のために渡航した事案と、仲介組織の一員として他人の渡航を手配していた事案とでは、評価がまったく異なります。捜査機関は、渡航費用の出所、仲介者への支払い、渡航ルート、同行者の有無、日本国内での受入れ先などを詳細に調べます。ここで自らも搾取的な条件下に置かれていた事情、たとえば高額の渡航費用を債務として負わされ、返済のために就労を強いられていたといった事情があれば、量刑上の重要な情状となり得ます。他方、仲介組織との関係について曖昧な供述をすると、組織的関与を疑われて処分が重くなることがあります。事実関係を弁護人と整理してから供述の内容と時期を決めることが重要です。
日本に残る余地はありますか
容易ではありませんが、入管法50条の在留特別許可を求める余地は残されています。同条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留の期間、人道上の配慮の必要性などを考慮事情として掲げています。不法入国の場合、入国の経緯が不利に働くことは避けられませんが、その後の在留状況、日本人配偶者との婚姻関係の実態、日本で生まれ育った子の就学状況、本国に帰国した場合に生ずる具体的な不利益といった事情を、資料に基づいて丁寧に主張することになります。難民該当性や補完的保護の対象となる事情がある場合には、別途その手続を検討する必要があります。いずれの手続を選ぶかは、その後の処遇に大きく影響しますので、早い段階で方針を定めることが重要です。
よくあるご質問
他人名義の旅券で入国した場合、旅券の名義人にも責任が及びますか
名義人が旅券を貸与し、または不法入国に協力していた場合には、幇助犯として責任を問われる可能性があります。紛失したものが悪用された場合には、紛失の届出時期や事情によって評価が分かれますので、届出関係の資料を保存しておくことが重要です。旅券の管理状況についても、説明を求められることがあります。
不法入国から長期間が経過していれば時効になりますか
刑事の公訴時効は成立し得ますが、退去強制事由は時効によって消滅しません。したがって、刑事処罰を受けない場合であっても、入管法24条1号による退去強制手続の対象となり得ます。この点は不法残留の場合と同様に扱われますので注意が必要です。時効の成否は事案の内容によりますので、個別の確認が必要です。
日本人と結婚していれば在留を認めてもらえますか
婚姻の事実のみで在留特別許可が認められるわけではありません。入管法50条5項の考慮事情に照らし、同居の実態、生計の状況、婚姻に至る経緯、交流の記録といった資料により、婚姻関係が安定かつ成熟したものであることを具体的に示す必要があります。交流の記録や第三者の陳述も、有力な資料となり得ます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------