賭博罪・常習賭博罪と外国人の在留|執行猶予でも退去強制となる理由
2026/08/13
賭博に関する犯罪は、刑法第23章に置かれており、単純賭博罪は50万円以下の罰金または科料、常習賭博罪は3年以下の拘禁刑、賭博場開張等図利罪は3月以上5年以下の拘禁刑と定められています。中国籍の方にとって重要なのは、この第23章が入管法24条4号の2の列挙対象に含まれているという点です。別表第一の在留資格をお持ちの方が賭博関係の罪で拘禁刑に処せられた場合、たとえ執行猶予が付いていても退去強制事由に該当します。罰金にとどまるか拘禁刑となるかが、そのまま在留の帰趨を決めることになります。
本記事の要点
- 単純賭博罪は50万円以下の罰金または科料で、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは処罰されません(刑法185条)。
- 常習賭博罪は3年以下の拘禁刑(刑法186条1項)、賭博場開張等図利罪は3月以上5年以下の拘禁刑です(同条2項)。
- 刑法第23章は入管法24条4号の2の列挙対象であり、別表第一の在留資格者は執行猶予付き拘禁刑でも退去強制事由に該当します。
- 永住者・定住者・日本人の配偶者等の別表第二の在留資格には、24条4号の2の適用がありません。
単純賭博と常習賭博はどう違いますか
常習性の有無によって、罰金刑か拘禁刑かという決定的な差が生じます。刑法185条の単純賭博罪は50万円以下の罰金または科料と定められており、ただし一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは処罰されません。これに対し刑法186条1項の常習賭博罪は3年以下の拘禁刑とされ、罰金刑の選択肢がありません。常習性は、賭博の反復継続の状況、賭金の額、賭博場への出入りの頻度、前科・前歴などから判断されます。さらに同条2項の賭博場開張等図利罪は、賭博場を開張して利益を図る行為を3月以上5年以下の拘禁刑とし、胴元や運営側を重く処罰する構造になっています。同じ賭博でも、参加しただけなのか、常習として関与していたのか、運営側に回っていたのかで、法定刑がまったく異なります。
なぜ執行猶予でも退去強制になるのですか
入管法24条4号の2が、刑の執行猶予の有無を要件としていないからです。同号は、別表第一の在留資格をもって在留する外国人が、刑法の一定の章に規定する罪により拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由と定めています。ここに列挙された章には、住居侵入、通貨・文書・有価証券・印章の偽造、殺人、傷害、逮捕監禁、略取誘拐、窃盗強盗、詐欺恐喝、横領、毀棄隠匿と並んで、賭博および富くじに関する罪を定める第23章が含まれています。そして同号は、1年を超える実刑を要件とする同条4号リと異なり、刑期の下限も執行猶予の除外も設けていません。したがって、常習賭博罪で拘禁刑1年、執行猶予3年という判決を受けた場合、刑務所に入ることはなくても、退去強制手続に付されることになります。
在留資格の種類によって結論は変わりますか
別表第一か別表第二かによって、結論が大きく分かれます。入管法24条4号の2は、その適用対象を別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者に限定しています。別表第一には、技術・人文知識・国際業務、経営・管理、技能、留学、技能実習、特定技能、家族滞在などが含まれます。これに対し、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者といった身分または地位に基づく在留資格は別表第二に定められており、同号の適用がありません。したがって、永住者の方が常習賭博罪で執行猶予付きの拘禁刑を受けても、同号によって退去強制されることはなく、1年を超える実刑となった場合に24条4号リが問題となるにとどまります。ご自身の在留資格がいずれの別表に属するかを、まず正確に確認することが出発点となります。
捜査段階で何を目指すべきですか
常習性の否定と、罰金による処理を目指すことが実務上の中心となります。前述のとおり、単純賭博であれば罰金または科料にとどまり、拘禁刑ではありませんので入管法24条4号の2には該当しません。逆にいえば、常習賭博として立件されるか単純賭博にとどまるかが、日本に残れるかどうかを左右します。したがって捜査段階では、賭博への参加が一時的・偶発的なものであったこと、賭金の規模、生活実態、収入との関係などを具体的に示し、常習性の認定を争うことが重要になります。取調べでは、以前から何度も行っていたのかという趣旨の質問が繰り返されますが、通訳を介した会話で回数や頻度を曖昧に認めると、そのまま常習性の根拠とされかねません。記憶が不確かな点は不明確なまま述べず、弁護人と資料を確認したうえで対応してください。
よくあるご質問
友人同士の少額の麻雀でも犯罪になりますか
刑法185条ただし書は、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは処罰しないと定めています。飲食物程度の賭けであればこれに当たり得ますが、金銭を賭けた場合は少額でも賭博罪が成立し得るとされており、常習性が認められれば拘禁刑の対象となります。
常習賭博で執行猶予がついたら、すぐ帰国しなければなりませんか
別表第一の在留資格であれば入管法24条4号の2の退去強制事由に該当しますが、直ちに帰国となるわけではなく、入国警備官の違反調査、入国審査官の審査、特別審理官の口頭審理という手続を経ます。その中で入管法50条の在留特別許可を求めることが可能です。
収容されずに手続を進めることはできますか
令和5年改正入管法により監理措置制度が導入され、入管法44条の2以下により、監理人による監督を条件として収容によらずに手続を進める運用が認められています。住居の安定、監理人となり得る方の存在、逃亡のおそれの不存在を具体的に示すことが必要です。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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