麻薬特例法違反(薬物犯罪収益)に問われた場合の刑事責任と在留
2026/08/13
麻薬特例法は、規制薬物の輸入や譲渡を業として行う行為を無期または5年以上の拘禁刑をもって処罰するほか、薬物犯罪収益の隠匿を5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、その収受を3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金として処罰しています。中国籍の方の相談では、口座を貸した、送金を代行した、報酬を受け取ったという形で関与を疑われる例が見られます。同法違反も入管法24条4号チの薬物事犯に含まれ、有罪判決は執行猶予でも退去強制事由となります。
本記事の要点
- 業として行う規制薬物の不法輸入等は無期または5年以上の拘禁刑という極めて重い法定刑です。
- 薬物犯罪収益の隠匿は5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、収受は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
- 収益は没収または追徴の対象となり、判決後の生活再建にも影響します。
- 入管法24条4号チにより、麻薬特例法違反も執行猶予付き判決で退去強制事由に該当します。
麻薬特例法はどのような行為を処罰していますか
麻薬特例法は、個別の薬物取締法令を補完し、薬物犯罪の組織性と収益に着目した処罰を定めています。中心となるのは、規制薬物の輸入、輸出、製造、譲渡等を業として行う行為であり、無期または5年以上の拘禁刑と1000万円以下の罰金の併科という重い法定刑が定められています。あわせて、薬物犯罪により得た収益の取得や処分について事実を仮装し、または隠匿する行為が処罰され、情を知って収益を収受する行為も処罰の対象です。さらに、収益は没収され、没収が困難な場合には価額が追徴されます。薬物そのものを手にしていなくても、資金の流れに関与すれば処罰され得るという点が、この法律の特徴です。
口座を貸しただけでも処罰されますか
資金の性質を知りながら口座を提供し、入出金に関与した場合には、収益の隠匿や収受に問われる可能性があります。処罰には、当該資金が薬物犯罪によって得られたものであるという認識が必要ですので、認識の有無が主要な争点となります。もっとも、報酬の額が労務に比して不相応に高い場合、相手方の指示が不自然な場合、短期間に多数の送金が行われた場合には、認識が推認されやすくなります。取調べでは、送金の依頼者との関係、報酬の名目、やり取りの内容が詳細に問われます。SNSのメッセージや送金アプリの履歴は重要な資料ですので、削除せずに保全し、弁護人と共有してください。
在留資格にはどのような影響が生じますか
結論として、有罪判決を受ければ在留の維持は困難です。入管法24条4号チは麻薬特例法違反による有罪判決を退去強制事由に含めており、執行猶予付き判決も除外されていません。収益の隠匿や収受の事案では執行猶予となることもありますが、それでも退去強制手続に進むことになります。別表第二の在留資格でも同号の適用は排除されません。加えて、業として行う不法輸入等で実刑となれば、同条4号リにも該当し、刑の執行終了後に送還されます。没収や追徴により資産を失うと、家族の生活基盤も損なわれます。刑事と入管の双方に加え、財産関係の整理まで見据えた対応が必要になります。
認識を争う場合の立証と初動はどうあるべきですか
初動では、資金の性質に関する認識を裏付ける、あるいは否定する資料の保全が最優先です。依頼の経緯、紹介者との関係、報酬の決め方、送金の名目を時系列で整理し、通常の業務や貸借と説明できる事情があれば具体的に示します。逆に、隠語や匿名アプリの使用、複数名義の口座管理といった事情は不利に働きますので、事実を正確に把握したうえで主張を組み立てる必要があります。没収や追徴の範囲についても、実際に受領した金額と関与の程度を精査し、過大な認定を避けることが重要です。刑事処分が在留に直結する類型であることを踏まえ、早期に方針を確定させることが望まれます。
よくあるご質問
薬物に触れていなくても処罰されますか
処罰され得ます。麻薬特例法は薬物犯罪の収益に着目しており、収益であると知りながら隠匿し、または収受する行為を処罰しています。資金の流れに関与した事実があれば、薬物そのものを所持していなくても刑事責任を問われます。資金の性質に関する認識の有無が、成否を分ける中心的な論点となります。
報酬をもらった分だけ返せば済みますか
返還は有利な事情となり得ますが、それだけで処罰を免れるものではありません。薬物犯罪収益は没収の対象であり、没収が困難な場合には価額が追徴されますので、受領額と関与の程度を正確に整理して主張する必要があります。追徴の範囲は、関与の態様によって大きく変わります。
執行猶予でも退去強制になりますか
麻薬特例法違反は入管法24条4号チの薬物事犯に含まれ、執行猶予付き判決も除外されていません。したがって、執行猶予であっても退去強制手続に進むのが通常であり、在留の維持には不起訴処分の獲得が不可欠となります。没収や追徴の負担も併せて生じるため、財産関係の整理も必要になります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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