MDMAなど合成麻薬の所持・輸入で問われる責任と在留資格の帰結
2026/08/13
MDMAをはじめとする合成麻薬は麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬に指定されており、単純所持は7年以下の拘禁刑、営利目的の所持や譲渡は1年以上10年以下の拘禁刑に300万円以下の罰金を併科され得ます。輸入した場合はさらに重く、1年以上の有期拘禁刑、営利目的であれば無期または3年以上の拘禁刑となります。錠剤の形状から他の物と誤認したという弁解が問題になりやすい類型ですが、入管法24条4号チにより有罪判決は執行猶予でも退去強制に直結します。
本記事の要点
- MDMA等の合成麻薬は麻薬に指定され、単純所持でも7年以下の拘禁刑です。
- 国際郵便を利用した輸入事案では、税関検査を端緒とする控訴が多く、輸入罪が問題となります。
- 錠剤やパウダーの外形から、成分の認識の有無が争点となる事案が少なくありません。
- 入管法24条4号チにより、執行猶予でも退去強制事由となり、5条1項5号の上陸拒否も無期限です。
合成麻薬はどのように規制されていますか
MDMAやLSDなどの合成麻薬は、麻薬及び向精神薬取締法により麻薬として指定され、輸入、輸出、製造、譲渡、譲受、所持、施用のいずれもが原則として禁止されています。単純所持および施用は7年以下の拘禁刑、営利目的の所持や譲渡は1年以上10年以下の拘禁刑で300万円以下の罰金を併科されることがあります。輸入は同法64条により1年以上の有期拘禁刑、営利目的の輸入は無期または3年以上の拘禁刑と1000万円以下の罰金の併科という重い法定刑が定められています。指定薬物や危険ドラッグとして薬機法で規制される物質とは根拠法令が異なり、退去強制事由との関係でも扱いが異なるため、鑑定結果に示された成分名の確認が出発点となります。
国際郵便で届いた場合はどうなりますか
国際郵便や国際宅配便を利用した事案では、税関の検査で発見された後、警察が受取りの状況を確認する手法が用いられます。荷物が届いた時点で受け取ってしまうと、輸入罪や所持罪の成立に関する重要な事実が形成されます。注文の履歴、決済の記録、送り主とのやり取りが押収されるため、注文していないという弁解は客観資料と突き合わせて検討されます。他方、第三者が自分の住所を無断で使用した事案も現実に存在します。心当たりのない荷物が届いた場合は、開封せずに警察へ相談することが安全です。取調べでは、サプリメントだと思ったという説明が繰り返し追及されますので、認識に関する供述は慎重に行ってください。
合成麻薬の有罪判決は在留にどう響きますか
結論として、有罪判決を受ければ在留の維持は困難です。入管法24条4号チは麻薬及び向精神薬取締法違反による有罪判決を退去強制事由としており、執行猶予付き判決も除外されていません。輸入事案では実刑が通常であり、1年を超えれば同条4号リにも該当します。刑法犯を対象とする同条4号の2と異なり、別表第二の在留資格でも適用が排除されない点に注意が必要です。退去強制の後は、入管法5条1項5号により期間の定めなく上陸を拒否されます。留学や就労のために来日した方にとって、学業や職業の継続だけでなく、将来の再入国の道も閉ざされる結果となりますので、初期対応の重要性は極めて高いといえます。
認識を争う場合、どのような立証が必要ですか
成分の認識を争うには、経緯の自然さを客観資料で裏付けることが不可欠です。購入サイトの表示、販売者とのやり取り、支払った金額、届いた物の外形と包装、これらが本人の説明と整合するかを検討します。市販のサプリメントと同程度の価格で購入していた事実は、認識を否定する方向に働き得ます。逆に、匿名性の高い決済手段や隠語を用いた連絡は不利に働きます。手続面では、税関検査の経緯と押収手続の適法性を確認します。なお、退去強制事由の判断に故意や過失を要するかは入管実務上争いがあり、当事務所も責任主義の射程を問う訴訟を係属させていますが、結果を予断することはできません。
よくあるご質問
海外の通販で購入した場合も輸入罪になりますか
国外から国内に持ち込ませる行為として輸入罪が成立し得ます。麻薬の輸入は1年以上の有期拘禁刑と重く、営利目的であればさらに加重されますので、注文の経緯と認識の有無を示す資料を早期に確保する必要があります。受け取らずに警察へ相談することが、認識を争ううえでも有利に働きます。
サプリメントだと思って買った場合はどうなりますか
麻薬であるという認識がなければ故意が否定される余地があります。ただし、購入サイトの表示、価格、決済方法、連絡のやり取りから認識が推認されることが多いため、これらの記録を保全し、説明と整合させることが重要です。決済方法の匿名性が高い場合、認識の推認に用いられることがあります。
MDMAの所持で在留資格は取り消されますか
有罪判決を受ければ、入管法24条4号チにより執行猶予でも退去強制事由に該当します。在留資格の取消しとは別の枠組みですが、結果として日本での在留は失われますので、不起訴処分の獲得を目標とすべきです。家族が日本にいる場合でも、判断は極めて厳しいものとなります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
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- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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