無免許運転で摘発された外国人が知るべき刑事処分と在留への影響
2026/08/13
無免許運転は道路交通法64条1項が禁じ、同法117条の2の2により3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。中国籍の方の場合、中国の免許証のみで運転していた、国際運転免許証の有効期間を誤解していた、日本の免許が取消しになっていたことを知らなかった、といった経緯が問題となる例が目立ちます。無免許運転それ自体は入管法24条4号の2の列挙罪ではありませんが、人身事故や飲酒運転と併合されると処分が重くなり、在留期間更新の審査でも不利に働きます。要件と実務対応を整理します。
本記事の要点
- 無免許運転の法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金で、初犯でも罰金にとどまらない例があります。
- 中国の免許証は日本国内では有効でなく、ジュネーブ条約に基づく国際運転免許証や領事館発行の翻訳文の要件確認が必要です。
- 無免許で人身事故を起こすと自動車運転死傷行為処罰法6条により加重され、実刑の可能性が高まります。
- 刑法犯ではないため入管法24条4号の2には当たりませんが、更新審査の素行要件では不利な事情として扱われます。
どのような場合に無免許運転になりますか
無免許運転は、免許を受けずに運転した場合のほか、取消し後や有効期間経過後に運転した場合、免許の種類に応じない車両を運転した場合にも成立します。中国籍の方に多いのは、中国で取得した運転免許証を日本国内でそのまま使えると誤解していた事例です。日本では、ジュネーブ道路交通条約に基づく国際運転免許証か、一定の国が発行した免許証と領事館等が作成した日本語の翻訳文を携帯する場合に限って運転が認められますが、中国はこの条約の締約国ではないため、中国の免許証と翻訳文のみでは運転できません。停止処分中の運転や、住所変更を怠って更新通知が届かず失効した後の運転も無免許となります。免許の有効性は思い込みではなく、必ず書類で確認する必要があります。
捜査ではどのような点が問われますか
捜査の焦点は、無免許であることの認識、すなわち故意の有無です。免許を受けたことがない場合は争いになりにくい一方、失効や取消しを知らなかったという弁解は、通知の送達状況や過去の違反歴と突き合わせて検討されます。ここで安易に知っていましたと述べてしまうと、後から経緯を説明しても覆すことは容易ではありません。また、車両の提供者や同乗者、雇用主が無免許運転を容認していた場合、道路交通法上それぞれ処罰の対象となり得るため、勤務先を巻き込む供述には慎重さが求められます。取調べでは、免許の取得経緯や日本での運転歴を時系列で正確に説明できるよう、弁護人と事前に整理しておくことが有益です。
無免許運転は在留資格にどう影響しますか
結論として、無免許運転単独では退去強制事由に直結しません。入管法24条4号の2は刑法上の列挙罪を対象としており、道路交通法違反はこれに含まれないためです。したがって罰金や執行猶予にとどまる限り、同条による退去強制の問題は生じず、退去強制が現実化するのは1年を超える拘禁刑の実刑となって同条4号リに該当する場合です。ただし、在留期間更新は入管法21条3項の裁量に委ねられ、公表されているガイドラインは素行が善良であることを求めています。無免許運転を繰り返した場合や、人身事故を伴う場合には、更新が認められないおそれがあります。永住許可申請では素行要件がより厳格に審査されるため、影響は長期に及びます。
不起訴を目指すためにできることは何ですか
初犯で事故を伴わない事案では、不起訴処分の獲得が現実的な目標となります。免許制度の誤解が生じたやむを得ない経緯、たとえば渡日直後で情報が乏しかったこと、勤務先の指示があったことなどを裏付ける資料を示し、故意の程度が低いことを説明します。あわせて、車両の処分や運転をしない旨の誓約、日本の免許取得に向けた手続の開始といった再発防止策を具体化します。人身事故が併存する場合は、自動車運転死傷行為処罰法6条による加重を踏まえ、被害弁償を優先します。処分が確定した後は、在留期間更新の申請時に経緯と改善状況を説明する書面を準備し、判断材料を入管に提供することが望まれます。
よくあるご質問
中国の運転免許証で日本を運転すると無免許になりますか
中国はジュネーブ道路交通条約の締約国ではないため、中国の免許証のみでは日本国内で運転できません。日本の免許への切替え手続を経る必要があり、切替え前に運転すれば無免許運転として3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となります。切替えには本国免許の有効性の確認や知識確認等の手続を要します。
無免許運転の罰金だけで強制送還されますか
罰金刑のみで退去強制となることはありません。道路交通法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではなく、同条4号リも1年を超える拘禁刑の実刑を要件とするためです。ただし更新審査では素行が考慮されます。もっとも、反復して摘発された場合には、更新の可否に現実的な影響が生じます。
免許が失効していたと知らなかった場合はどうなりますか
無免許の認識がなければ故意が否定される余地がありますが、更新通知の送達状況や住所届出の状況から認識が推認されることもあります。取調べで安易に認識を認めず、経緯を裏付ける資料を早期に確保することが重要です。住所変更の届出を怠っていた事情は、認識の推認を強める方向に働くこともあります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
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- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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