危険運転致死傷罪で逮捕された外国人の刑事処分と在留資格への影響
2026/08/13
危険運転致死傷罪は、自動車運転死傷行為処罰法2条・3条が定める類型で、過失運転致死傷罪とは法定刑の重さが大きく異なります。中国籍の方がこの罪で捜査を受けた場合、刑事処分の重さそのものに加えて、判決確定後に日本での在留を続けられるかが現実的な問題になります。危険運転致死傷罪は入管法24条4号の2が列挙する刑法犯には含まれませんが、1年を超える拘禁刑の実刑となれば同条4号リにより退去強制の対象となり得ます。ここでは、成立要件と量刑の見通し、捜査段階での初動、在留資格への影響の順に整理します。
本記事の要点
- 危険運転致死傷罪は自動車運転死傷行為処罰法2条・3条の罪で、2条の致死類型は1年以上の有期拘禁刑と定められています。
- 危険運転に当たるか過失運転にとどまるかで量刑が大きく変わるため、事故直後の供述内容が結論を左右します。
- 入管法24条4号の2の列挙罪ではありませんが、1年を超える拘禁刑の実刑は同条4号リの退去強制事由に当たります。
- 全部執行猶予でも在留期間更新は当然には認められず、入管法21条3項の裁量審査を見据えた資料の準備が必要です。
危険運転致死傷罪はどのような場合に成立しますか
危険運転致死傷罪は、限定列挙された危険な運転行為による死傷にのみ成立します。自動車運転死傷行為処罰法2条は、アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態での走行、進行を制御することが困難な高速度での走行、通行妨害目的での著しい接近、赤信号を殊更に無視する走行などを掲げ、致傷は15年以下の拘禁刑、致死は1年以上の有期拘禁刑としています。同法3条は、アルコール等の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で走行し、その影響により正常な運転が困難な状態に陥った場合を対象とし、致傷12年以下、致死15年以下の拘禁刑です。これに対し過失運転致死傷罪は同法5条で7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金にとどまります。どの条文で立件されるかによって見通しが大きく変わるため、事故態様の評価そのものが弁護の中心になります。
捜査はどのように進み、初動で何に注意すべきですか
初動で最も重要なのは、記憶が不確かな点について推測で答えないことです。この類型では、実況見分、ドライブレコーダーやEDRの解析、飲酒検知、目撃者の供述が積み上げられ、これらと本人の説明が突き合わされます。現場や病院で述べた断片的な言葉も報告書に残り、後に速度の認識や信号の見落としに関する認定の根拠として使われます。とりわけ赤信号を殊更に無視したかどうかは内心の認識の問題であり、通訳を介した会話でニュアンスが落ちると、実際より重い評価に傾くおそれがあります。中国語の通訳人が交通用語や運転操作の表現に習熟しているかは、供述の正確さを左右します。取調べに応じる前に弁護人を選任し、黙秘するか説明するかを罪名ごとに整理してから臨むことをお勧めします。
有罪となった場合、在留資格にどのような影響がありますか
結論として、実刑となるかどうかが分かれ目です。入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格をもって在留する方が住居侵入、傷害、窃盗、詐欺、偽造といった刑法上の列挙罪で拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由としますが、特別法である自動車運転死傷行為処罰法の罪はここに含まれません。したがって執行猶予が付いた場合に同号で直ちに退去強制となることはありません。他方、1年を超える拘禁刑の実刑は同条4号リに該当し、退去強制の対象となります。全部執行猶予の場合は同号から除外されます。永住者や日本人の配偶者等といった別表第二の在留資格には、そもそも4号の2の適用がありません。もっとも、在留期間更新は入管法21条3項の裁量審査であり、重大事故の前科は素行面で不利に働きます。
不起訴や在留維持のためにどのような活動が考えられますか
刑事面では不起訴処分の獲得を最優先に据えます。危険運転の要件を満たさない事情、たとえば速度と道路状況の関係、信号の視認可能性、体調や薬剤の影響の程度を客観資料で示し、より軽い過失運転致死傷罪としての評価にとどめる、あるいは事案によっては不起訴を求めることになります。被害者との示談や保険会社による賠償の進捗も、処分と量刑の双方に影響します。在留面では、執行猶予判決を得ても更新が当然に認められるわけではないため、就労や家族の状況、再発防止のための運転の制限といった生活実態を示す資料を早い段階から集めておくことが有用です。刑事弁護と入管手続を切り離さず、判決後の申請までを見通して方針を立てる必要があります。
よくあるご質問
危険運転致死傷罪で執行猶予がつけば在留資格は維持できますか
全部執行猶予であれば入管法24条4号リの退去強制事由には当たらず、同条4号の2の列挙罪にも含まれません。ただし在留期間更新は入管法21条3項の裁量審査ですので、当然に許可されるわけではありません。判決内容と生活実態を示す資料を整えて申請する必要があります。
危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪は何が違いますか
過失運転致死傷罪は前方不注視などの過失による事故を7年以下の拘禁刑等で処罰するのに対し、危険運転致死傷罪は飲酒、著しい高速度、妨害目的の接近、赤信号の殊更な無視など限定された危険行為を対象とし、致死類型では1年以上の有期拘禁刑と格段に重くなります。
被害者と示談できれば不起訴になりますか
示談は有利な事情ですが、死亡事案や重傷事案では示談のみで不起訴となる例は多くありません。危険運転の要件を満たさないことや、事故態様に酌むべき事情があることを裏付ける客観資料と併せて主張することで、処分や量刑に影響し得ます。危険運転と評価されるかどうかは、事故態様に関する客観資料の分析によって左右されます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
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